336:宇宙にて
【第三層群屋上庭園】
「マリーさん、30m角より狭い図書館を無理矢理召喚するとなると、いろいろ問題が生じそうだが。」
「このダンジョンの基本単位は30mで、塔の上の方は、ダンジョン構造物の柱が60m間隔で4本立っており、ある種のフレーム構造となっています。その北側が層群間エレベーター、南側に図書館をはめ込んでいます。第三層群はフレームの上に乗っており、世界樹の位置が中心軸、ダンジョンの下の方は図書館・エレベーターともフレームからはみ出しています。」
「……30mではなく100フィートか30ヤードではないかという気がするが……。それで、小さい図書館や公民館をどう配置するのか。」
「先日説明したとおり、エレベーターホールを介して接続します。」
「それで、相変わらず第三層群が一番上にあると。」
「世界樹が植わっていますからね。」
「なぜか埼玉とは無関係な。」
「できるだけ低コストで背が高い、という条件で探しましたから。単館の床面積は異世界日本2位で仕様として召喚可能な大学図書館では最大、蔵書数も5位かつ当時召喚可能だった大学図書館では最多でした。ダンジョンの仕様として私学の図書館は民間施設扱いで複製召喚できませんし、当時のダンジョンエネルギーでは帝大は到底手が出ませんでした。」
「いろいろ仕様が変だからな。」
「大抵の世界にあると安上がり、など、条件は単純ですよ。ちなみに、どうやら、チュートリアルでは三番目には埼玉県立図書館を召喚するようになっていたようですが、データが破損したらしく、現在ダンジョンコアに詳細データが無いため召喚出来ません。」
20世紀に建てられた熊谷や久喜の旧館では無く、21世紀に建てられた新図書館。
【第三層群屋上庭園】
「塔本体の高さ113.8kmで影響圏の拡張が止まりました。丘の高さを加えると113.9kmですね。影響圏の半径は1,231km……何なのでしょう。」
「マリーさん、1,200kmまで、では無かったのですか。」
「地形的に、影響圏を少し広げたら、外側への街道が作りやすくなる場所がいろいろありますからね。これで、東の東にある地域にも接続できますし。出来れば、もう少し広げたかったのですが。」
「影響圏の半径は1,231kmか。マイルだと……。」
「770マイルくらいですね。777マイル。という訳でも無さそうですし。システムの上限は300マイル・100リーグですから、つまり1リーグが4.8kmなので256リーグ……正確には255リーグ……1バイト? 影響圏の範囲が4.8km単位で広がる、ということもありませんし、謎です。」
「ダンジョンシステムの内部的な上限が255リーグなんだろう。」
「255リーグ、765マイル、4,039,200フィート。65,536リーグなんてことは言いませんが、案外狭いですね。」
「6万リーグなんて30万kmだろ。異世界だと、ほとんど月の距離では無いか。」
「おそらくダンジョンの高さも通常は300マイル、482.8kmが上限、限界突破で1,231kmが上限なのでしょう。あるいは地下128リーグ(深さ618.0km)から地上127リーグ(高さ613.1km)なのかもしれません。ただ、システムである以上、何らかの方法で書き換えは可能とは思われますが。」
「変に書き換えてダンジョン自体が崩壊でもしたら大惨事だ。それはやめた方が良い。」
「ともかく、これで、図書館都市ダンジョンは高さ100kmを越え、宇宙へ到達しました。ダンジョンの機能で快適な環境が保持されていますが。」
空は真っ黒で昼でも星が見えるが、ダンジョンの機能により紫外線や宇宙線などは遮られている。
「軌道エレベーターみたいなものか。」
「あれは何百倍も高さがあります。ダンジョン構造物の強度にも限界はあるでしょうし、積み上げる方法で軌道エレベーターは無理かもしれません。」
「なら、将来宇宙開発をする時はどうするか。」
「ペトゥレル(宇宙機)は手が出ませんが、塔の頂上から、何らかの方法で秒速8kmくらいで打ち出せば人工衛星が可能です。」
「磁軌砲あたり?」
「さすがに高加速で衛星が壊れます。」
「それでは、転送陣を延長しつつ、サイタマイルタワーを影響圏の端まで移動させます。なにか有望な交易相手やダンジョンが見つかれば良いのですが。」




