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332:作るべき道(物理)

【第三層群10階会議室】


「最低限の土木機械が試作完了した段階で、試験と練習も兼ねて、まず現在既に使われている(こし)(しな)などへの道を、最寄りの町まで砕石舗装の道路に更新します。」

「アスファルトやコンクリートでの舗装は無理か。」

「アスファルトは存在しませんし、コンクリートも石灰岩が必要ですが見つかっていません。もし石灰岩がダンジョンにしか無いとなると、鍾乳洞ダンジョンを発見し、コアを破壊しないよう丁寧に山を切り崩し、さらに町を作ることで意図的にエネルギーを与えて成長させ再度採掘する。という過程が必要です。」

「そう上手く行くとは限らないな。」

「まったくです。近代文明には多種多様な鉱物資源が必要ですが、ダンジョンで揃えるとなると大変です。まずは天然の鉱石が無いか、影響圏内の地質図を作り、鉱物資源が無いか確認作業が必要です。もちろんダンジョン以外の鉱物資源は採掘したら終わりで再生はしませんが、ダンジョンよりは扱いは容易でしょう。」


「真北の方角は、ある程度街道を整備した段階で冒険者を向かわせます。」

「ある程度?」

「視界の少し外側に大きい町があるかもしれませんから、見極める必要があります。町があれば、そちらに街道を引く方が良いでしょう。」


「左遷城は日本駄右衛門が居るため後回しにして、東方向の街道。(ひたか)から東に向かっていますが、影響圏の端から道路をこの街道に接続します。同様に冒険者を送り込み、街道を通行するであろう(ひたか)の商人との接触を図ります。」

「衰退し混乱した(ひたか)との街道だから、あまり期待は出来ないか。」


(たぬき)の国は首都の位置が不明ですから、まず首都の位置を探さないといけません。出湯(いゆ)は協定を結んだ後に道路を着工します。」

「産物は何が期待できるだろうか。熱帯だよな。」

「熱帯の砂漠ですからね。塩はどこにでもあるのであまり価値は無いとして、オアシスでもあれば、ナツメヤシ・綿花・ブドウあたりと思われます。」


「最期、『縄文王国諏訪湖』ダンジョンとの接触を試みます。もちろん名前が後世のものですから、縄文時代から続いているという訳では無いでしょう。」

「この世界の歴史についても、古い時代に関しては十分には分かっていない。」

「各国の文庫には蔵書の複写を申し込んでおり、資料は集まりつつありますが、なにぶん、真偽の程も怪しいものが多いですから。遺跡でも見つかれば良いのですが。」

「遺跡とか、化石とか。」

「マスター。化石はあまり期待できないかと思われます。異世界から取り寄せた種がこの世界の植物と交配可能、つまり同じ種である以上、この世界で独自に進化したものではありません。長年にわたり異世界と遺伝子の交流があるか、地質学的にはごく最近、せいぜい数万年以内に何らかの異世界から持ち込まれたと思われます。それが科学なのか未知の力なのかは分かりませんが。」

「図書館の本を取り寄せるように?」

「似たようなものでしょうが、違う世界ですね。このダンジョンが本を取り寄せられる異世界は、どれも修羅・畜生はただの植物や動物のみ、餓鬼の存在も科学的には証明されていません。」

「ふむ。」

「問題は、もし、この世界の全ての生物が他の世界由来で、原住生物が居ない場合、石炭・石油・鉄鉱石・石灰石の多くは生物起源ですから、入手が困難となります。」

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