331:観察結果
【第三層群10階会議室】
「まず、真北の方角、方位0ですが、東約120kmに村を確認しました。越と奥州の間でどちらからも600kmほど離れています。いずれかに属するか独立した勢力かは不明です。」
マリーは壁に、サイタマイルタワーから撮影したあまり解像度のよくない村の写真を投影。
「遠いな。道も無いし、熟練の冒険者で片道5日か6日か。」
「マスター、街道があれば歩いても片道3~4日ですけどね。途中まで道路を作って、そこから冒険者を向かわせるのも手です。」
「食料と水をトラックで運べば、かなり楽になるだろう。」
「次に、那須塩原があるため大きく飛んで、方位045。北東・左遷城方面です。いくつかの村が確認されましたが、日本駄右衛門の根城は特定出来ていません。」
マリーが説明し、壁に塔から撮影した景色を投影する。
「街道は左遷城から南東方向は途中の村で止まっていますが、北と北西は視界の外まで伸びています。おそらく北西は白河、北は奥州中枢部方面と思われます。」
「準備が出来たら、北に街道を作りながら、いよいよ日本駄右衛門退治か。」
「兵器は訓練にかなり時間が必要ですし、順番としては後回しになるでしょう。」
「東北東方面、方位060と075は山ですね。東南東、方位105と120は全くの平原です。その間、東より少し北、方位82あたりに東へ向かう街道があります。」
「影響圏から街道までの最短距離は?」
「20km程度と近いため、街道までは接続可能です。その先、宿場などが整備されているかは不明ですが。」
「筑波が邪魔なんだったか。」
「筑波よりも『磁気異常ダンジョン』ですね。直径60km程度の正体不明のダンジョンです。ダンジョンといえば、南東、影響圏の端付近に『九十九里砂漠』という直径400kmを越える大型ダンジョンがあります。ダンジョン内に街道がありますが、たまに隊商が砂漠に迷い込んで遭難するとのことです。」
「転送陣の売り込みは可能か。」
「位置的に無理ですね。南南東、方位150、これは粟観音寺付近を通る転送陣ですが、その先には狸の国があります。しかし、首都の位置は不明、つまり影響圏の端から140kmよりは遠くです。」
「方位166.5、これは方位165が使えないため代替ですが、この先は無人のようです。次に、南、方位180には砂糖プランテーションを準備中ですが、その近くには『伊豆七島』という有人ダンジョン群があります。」
「9つある伊豆七島。か。」
明治期に有人島は10あったので、7に意味は無い。
「異世界では北の伊豆大島から南の青ヶ島まで概ね南北に並んでいますが、こちらでは西の大島から東西に並び、式根島は無いので8つのダンジョンですね。一部のダンジョンはかなり水が豊富とのことです。」
「南南西、方位195。湯の南は出湯。伊豆の南が伊予になっている理由は不明です。首都の上徳は40km程度の距離ですので、準備が出来次第冒険者を派遣します。」
「街道を作るまでもないな。」
「方位210。途中で湯中心部の近くを通り鳥兜との交通にも使われている転送陣ですが、視界内に出湯の一部があるものの、相撲川下流の深い谷を越えるため、隣の転送陣を使う方が良いでしょう。」
「南西、方位241、甲を抜けた先は山ばかりです。次に西、方位275.4、身終へ通じる街道があり、既に商人は利用していますが、その南側に『縄文王国諏訪湖』という大型のダンジョンがあります。」
「縄文時代か。」
「縄文時代という言い方は後世の物ですから、おそらく古代から存在するダンジョンでは無く、後に作られたものと思われます。」
「西北西、方位290と300は科の国、北西の方位310は山で、新たな発見はありません。北北西、方位322と330は越。特に方位330は、魔の山を迂回する交通路として、越後屋さんの補助で転送陣を格安解放しています。」
「相手ダンジョンが崩壊するまで何年かかるかが問題だ。」
「最期、北北西の方位345は山です。見るべきものはありません。」