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033:第五の紫蘇、アレグザンダー大王を召喚して世界征服を

【第三層群屋上庭園】


「征服王アレクサンドロス3世。」

 唐突にマリーが変なことを言う。どうせ何かの本の影響だろう。

「かのアレグザンダー大王(英語読み)が持ち込んだハーブで、ギリシア語の王に由来する名を持つ、征服王。召喚する紫蘇はこれにしましょう。」

「マリーさん、さすがにアレクサンダー大王は荷が重くないか?」

「本人では無く、ゆかりの紫蘇なので、理論上は問題ありません。マスターは今度こそちゃんとした名前を考えて下さいね。」

「あ、ああ。」

「前に、入手出来ない球根を手に入れるため、植物園ダンジョンを探して征服する。という話をしましたね。」

「確かにあったな。代官が芋などを持ってきて保留になったが。」

「征服王を召喚し、配下に人間の軍隊を付ければ、外征軍を組織してダンジョンを制圧できます。」

「マリーさん、そのダンジョンが存在するかすら分からないんだが。」

「もちろん、外征は先の話ですが、まずは周辺の海賊を一掃して悉くダンジョンの肥料にします。」

「軍隊ってダンジョンモンスターだろうと召し抱えた人間だろうと膨大な維持費が必要だぞ。」

「そこは、収支を見ながら順次軍拡するしか無いでしょう。」



【コアルーム】


 召喚された紫蘇(修羅)は、見た目は女性っぽく、背は高めでマリー程度だがアンよりは低く、細マッチョな筋肉質。鮮やかな濃い緑の金属光沢(構造色)の腰近くまである長髪。目は黒いが、人間の茶の濃くなった黒ではなく緑を濃くした黒。インド原産なだけあって肌は褐色。ヒトラーが泣こうが喚こうが、本来「アーリア人」は白くない。もちろん召喚されたのは修羅であり、髪と目の色素は人間とは異なる。

 ただし、服装は上下ジャージでインド風でもギリシャ風でも無い。なお、修羅は人間と異なり髪が長くても手入れに手間はかからない。そもそも生物学的には髪では無いので。

「バジルです。よろしくお願いします。」

「マスター、これは期待できますね。鍛えていそうです。」

「『バジル』がギリシア語のバシレウスに由来し、インド原産なので、インド語(ここではサンスクリット語のこと)で王を意味する『ラージャ』だな。」

 ダンジョンコアが、

「マスターがモンスターをネームドに設定しました。モンスター『バジル』の個体名を『ラージャ』に設定します。」

 という。


「で、ラージャ将軍は陸軍士官学校なのか海軍兵学校なのか。」

「私は、設定では法学部卒で専門は政治学、特に都市行政。趣味で地理と歴史も囓っています。体育会ですが自衛官の経験は無いです。」

「そもそも軍人じゃ無いじゃないか!」

「変ですねぇ。将軍を召喚しようとしたのですが、召喚出来る紫蘇に何か制約あるのかしら。」

 とマリー。かなり真相に近いところまで気付いている。

「私、……要らない子でしたか?」

「いやいや、そんなことはない。ただ、事前の予想と違うから任せる仕事をどうするか再考したい。え~と、軍人では無い。で武術の心得とかは? 確か体育会だったな。」

「はい、あくまでも設定ですが、高校は薙刀部、大学は馬術部。もちろん、実際には高校も大学も通ったことは無いですが。」

「お、マリーさん、これは。」

「問題無く武将ですね。」

 ダンジョンマスターとマリーは赤兎馬に乗った関羽あたりを想像しているが、馬上で薙刀を使う訓練などしているはずは無いのでいろいろと間違っている。それに関羽は髭が長いのであって別に長髪では無い。(頭の上で髪を纏めて冠を載せるもの)

「……え~と、そして法学部卒ってことは、理論的には、検察官と弁護士と裁判官を兼任できるか。」

「暗黒裁判ですか。それに、私は司法試験は受験していない『設定』です。」

「専門は政治学で行政官と。」

「マスター、アレグザンダー大王は征服者だけど、そもそも王って基本的に政治を行うもので、リチャード1世みたいなのは例外なんですよね。バジルの語源は一般名詞の『王』ですから、こういう結果になったのも当然かもしれません。」

 と切り替えて善後策を考えるマリー。

「いずれにせよ、既に入植者は1000人を越えているから、その管理は必須だ。市長や議員は選挙で選ぶとしても行政官を始め官僚機構は必要になる。そっちの方も少し順番が早くなったと考えれば。」

「これから、よろしくお願いします。」


「で、マリーさん、ラージャさん、このダンジョンの防衛、というか海賊退治はどうすれば良いだろうか……」

「さすがに私1人ではどうにもできない。無人の何らかの防衛兵器を用意するか、傭兵だろう。」

 とラージャ。

「ミントさんに何か作れないか頼んでみる。あと、マリーさんが代官に頼んだ騎士団が来たら活用。そしてラージャさんの武器……。」

「以前、わたしが高崎山の猿から没収した小汚い鎧と刀や槍がありますが、あれ、洗剤に漬け込んで仕立て直したら使えないかな。さすがに比企一族の物は黒焦げで使えませんから。」

戦国時代、騎馬武者の装備は馬上槍(持鑓)が主流でしたが、21世紀日本で槍術はマイナー。まだ薙刀の方が競技人口が多い。ということで、ラージャは薙刀遣いになり、「五尺八寸の大男」から女に性転換しました。

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