329:必要な兵器
【第三層群・管制室】
「ミント、兵器が揃い、ウサギと騎士団の訓練が終わり次第、日本駄右衛門を退治します。」
「側近書記殿、まだまだ道は遠いが。」
「まず、機関銃とライフル。次に、海賊の火縄銃に耐えられる戦車と、山岳地帯で海賊を追い詰める無人機。人的リスクを考えれば、最初に無人機で海賊に打撃を与え、生き残りを歩兵で掃討する方が良いのですが、まだ機関銃を搭載可能な無人機はありません。当面は偵察と自爆ですね。」
「影響圏外は監視範囲が狭いから、日本駄右衛門が逃げたら追跡困難だ。」
「どっちみち戦車は電動ですから、航続距離は極端に短くなります。重機で左遷城の北まで道路を整備し、道路を防衛しつつ海賊を掃討します。」
「ダンジョン域外ではダンジョン構造物による道路は作成できないが。」
「砕石舗装になります。アスファルトもコンクリートも現状では入手不可能ですから。セメントの材料になる石灰岩くらいはありそうに思われますが、まだ見つかっていません。鉄やアルミニウムなら岩石には大量に含まれますが、抽出は困難ですね。」
「砂利道では、あまり速度は出せない。いっそ、鉄道の方が良いのでは。」
「鉄道は破壊工作に弱いのでダンジョン影響圏外には向きません。飛行機実用化までダンジョン内では自動車を基本に、大量輸送は船舶、高速輸送は転送陣を使いますが、転送陣はそもそも影響圏外では使用不可能ですし、水運も運河や湖が必要ですから、自動車以外の選択肢は今はありません。」
「ベトン級戦艦は運河以前の問題として、船自体がダンジョン構造物だから影響圏を出られないはず。」
「いずれ鋼船が必要でしょうね。電動では本格的なものは難しいでしょうが。」
「石油を産するダンジョンがあれば早いが。」
「日本には樺太以外油田はありませんからね。もっとも、台湾の苗栗出鉱坑みたいな小さい油田でもダンジョンとして存在するなら理論上は『育成』可能ですが。」
「大抵のダンジョンは知性が無いから飼い慣らすことは出来ない。仮に知性があって餌付けしたところで、思い通りに行動するとも限らない。」
「犬ならば『飼い犬に手を噛まれる』なんてことはまれですが、ダンジョンでは……。ダンジョンシステム的に制圧して道具にする。とか可能なのでしょうか。」
「側近書記殿、おそらくシステムの問題だけで無く本質的に不可能だ。ダンジョンは『テーマ』があって召喚物が限られているが、もし複数ダンジョンを運営でき産物の幅を広げられるなら、商都梅田や那須塩原が先にやっていないはずがない。」
「複数のコアを所有することは出来ないと。」
「他のダンジョンのコアを無理矢理自分のダンジョンに持ち込もうとした挙げ句に酷い目にあった人が居たが。」
「ゾンビ属性を入手しようとした訳ではありませんよ。」
「そらそうだ。」
「まずは、ダンジョン周辺をある程度広い範囲で調査し、地形を確認しないといけませんね。道路を作るにしても、日本駄右衛門討伐後に街道に転用出来る場所が望ましいですから。」




