322:当座の移民対策(ミントとの打ち合わせ1)
【第三層群・管制室】
「ミント、このダンジョンの存在は、どの辺りまで知られているでしょうか。」
「側近書記殿、既に春の時点で、千里彼方の国々からも移民が来ている。それ以前にも播磨介殿は来ているが、このダンジョンの存在を知って来た訳ではない。」
「そうなると、一挙に移民が増える。ということは無いでしょうね。転送陣はせいぜい300里。後は歩くしか無いため、たとえこのダンジョンの存在を知ったとしても、1,000里より遠くから来るのは困難でしょう。」
「いや、より遠くから、は困難でも、今年の移民が知人を呼び寄せたりするため、今年よりさらに移民が増える可能性もある。また、北の奥州方面は那須塩原が生贄を要求しているため移民は食い止められているが、日本駄右衛門を討伐した場合、奥州は寒冷で気候も厳しいため、民族大移動が起きる危険もある。」
「奥州は言葉は違いますが、民族的には違わないと思いますが。」
関八州でも東と毛の東部は言葉が違う。
「確かに、奥州でも、はるか西の国々でも、違うと言っても河童みたいに言葉も文化も宗教すらも異なる種族。ということは無いだろうが、この世界では異世界の影響が極端に作用する傾向がある。例えば、異世界で房総半島の端にある安房が、阿波の要素も持つ粟となった影響で、その南に讃岐の要素を持つ狸の国があり、狸獣人なのに鶏頭では無くうどんが好物だったりする。」
「兎獣人でも、ニンジンやキャベツを好むイギリス系の兎も、バーガーとステーキを好むウサギも居ますからね。まぁイギリス系の兎獣人もタマネギを食べる時点で動物のウサギとはかなり異なりますが。」
「基本的に獣人は元の動物と同じ物を食べることは出来るが、食べられない物は少ないことがあり、好物は必ずしも同じでは無い。だったか。」
「わたし達修羅が液肥を飲み、無ければ野菜ジュースで代用可能というのは、つまり『そこらへんの草を食べる』ということでしょうか。」
「修羅は別にこのダンジョン固有の種族では無いし、そこまで関連は無いだろう。」
六道のうち4つが博物学の人間界・植物界・動物界・鉱物界に対応している。残りは天と地獄。極楽は六道に含まれない。
「まず、年貢と買い付けで確保出来る備蓄米が50万人分。今、ダンジョンの人口は40万程度なので、麦の作付けを20万町歩として70万人分程度。来年秋の収穫までに人間と穀物食畜生は120万人程度は確保可能。修羅と草食獣人を足して移民100万人は可能。という計算になります。机上の計算ですが。」
「来年春の稲の作付け予定は。」
「春時点の人口により流動的ですが、人口60万程度なら管理可能なのは40万町歩。100万に達していれば60万町歩は作付け可能でしょう。つまり、速ければ再来年には当初予定の百万町歩に達しかねません。」
「そうなると、人口問題はかなり深刻か。」




