表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/467

320:動乱の予感

【第三層群1階】


図書頭(ずしょのかみ)どの、今年も米をありがたく頂戴する。」

 入間(いるま)代官、吉田西市佑(にしのいちのじょう)は今年も1年分の米を受け取る。

「喜んでいただけて幸いです。」

「それにしても、今年の収穫は300万石か。300万……。ところで図書頭(ずしょのかみ)どの、ダンジョンというのは人が住まぬ場所にしか広げられないが、これほどの規模のダンジョンなら、仙波(せんば)村の南側のように、村の領域ではあっても村から遠く全く使っていない土地ならダンジョンに組み込めないだろうか。もし入間郡の西の端まで転送陣があれば、何かあったとき即座に駆けつけられる。」

「さぁ。試したことはありませんが。以前には暴走して勝手に広がっただけですし。」

「出来れば、幡羅(はら)郡、埼玉(さいたま)郡、大里(おおさと)郡、横見(よこみ)郡、比企(ひき)郡と、北の端から順番に確認して欲しい。」

「構いませんが……。」

 マリーは武蔵の村と村の間を1箇所づつ確認してゆく。

「代官どの、可能な場所は4箇所。あることはありますが、でも、半里も無いような隙間ですよ。」

「転送陣さえ用意出来れば十分だ。」

「転送陣は、どうしてもかなり高く付きますが。かまいませんか。」

「時間短縮の意義は大きい。昔はここへ来るのに2日必要だったが、今は1刻も必要無い。以前は府中(ふちゅう)まで4日必要だったが、今は半日だ。」

 それを聞き、マリーは村の間に影響圏を押し込んでいく。


「途中でダンジョンらしきものに当たって広げられないものもありますね。」

「それは仕方ない。」

「それにしても、武蔵(むさし)にとっても、そんなに転送陣は重要ですか。」

図書頭(ずしょのかみ)どの、何十万石の兵糧と速い輸送手段が揃った以上、(いくさ)が、まるで変わる。武蔵(むさし)が滅びぬ為には転送陣は不可欠だ。実際、既に(ふさ)(あわ)を抑えるために転送陣を使っている。」

()相撲(すもう)武蔵(むさし)に攻め込んだりはしないと思いますが。」

「そのあたりは。な。だが、もし西の(かひ)(しな)が攻めてきた場合、転送陣があればこちらの村が襲われる前に反撃できる。」

「逆に攻めることもできるのでは?」

「残念ながら、(かひ)は餓鬼の国で『餓鬼は石垣・餓鬼は城』といって即座に砦を作ることが出来、難攻不落だ。(しな)は中心となる筑摩郡の大村も、大蛇(おろち)の本拠地ナーガの町も、転送陣では届かぬ距離にある。」

「長野ですか。」

「ナーガ。長虫とは大蛇(おろち)のことだ。長さは3丈(9m)、重さは30貫《110kg》もあるという。」

「3丈に30貫ですか。誇張では無く実際に居そうな大きさですね。」

大蛇(おろち)は人をも丸呑みにするという。そして、手が届くからと言って小県(ちいさがた)なんぞに首を突っ込んで戦上手の寸白(すばく)一族に翻弄されるのも悪夢だ。(しな)には手を出さぬ方が良い。」

ダンジョン構造物である以上、転送陣も守るには有用ですが、攻めるには決め手を欠きますからね。そもそも届かなければ何も出来ません。」

武蔵(むさし)としては、せいぜい、秩父(ちちぶ)の西・(かひ)の北あたりは特定の国には属しておらぬから、安定を確保するためにこの一帯を抑えるくらいだな。有用なダンジョンでもあれば役に立つ。」

「ダンジョンがあっても、飼い慣らすのはなかなか大変だと思います。(ふさ)飯沼(いいぬま)は、今年もまた遭難者が出たそうです。」

「あれだけ魚を産する以上、立ち入り禁止にも出来ないだろう。それこそ、ダンジョンマスターが居て交渉出来れば良いんだが、難しいな。」

 (かひ)から都留郡を切り離すことは可能かな。と地図を見ながら考える代官。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ