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319:毛越トンネル

【毛の国・箱田】


 ()の国の総社(そうじゃ)に隣接する箱田と、(こし)の国の魚沼郡にある川口郊外を結ぶ転送陣が広く一般開放され、200里を越える道を25~30日かけて歩かざるを得なかった区間は、約750kmをわずか1時間あまりで行き来出来るようになった。

「ダンジョンによる遭難が多いのは知っていましたが、国境、半分国外なので特に問題視はしていませんでした。」

 鶏頭をつまみながら、古狸の群馬(ぐんま)郡司(ぐんじ)、高橋対馬守(つしまのかみ)が言う。

「山道には危険は付きものですが、さすがに、100年で800人も遭難するようでは商人には容認しがたいでしょうね。他にも街道に潜んでいるダンジョンはありそうですが、死者が滅多に出ないなら気付かれにくいですし、仮に存在を知られても放置されがちのようです。」

 攻めてこないものの攻略は面倒なダンジョンは放置されがち。

(こし)との国境は、あの2箇所の峠以外は高さ1万尺を越える険しい山で、迂回路を作るのも難しい。ダンジョン影響圏で山を貫通するなんて、想像もしなかった。」

「魔の山は山岳ダンジョンですが、わざわざ東西の峠にまで影響圏を延ばし、完全に交通を塞いでいますからね。相手がそこまで悪質なら、相応の報いを受けるべきでしょう。もっとも、マスターの居ないダンジョンなので何も考えてはいないと思いますが。」

「ダンジョンは人の感情が必要で、長期的には生命も無いと維持出来ない。でしたか。」

「はい。そうなります。魔の山は推定直径40里程度とそれなりに大きいですが、それでも必要な死者はおそらく年平均1人かせいぜい2人でしょう。知られている限りで100年に800人というのは、かなり強欲と思われます。」

 魔の山も、直径600里近く年5,000人前後の生贄を必要とする巨大ダンジョンに言われたくは無いだろうが。

「それで、意図的にこの区間の運賃を下げると。」

「両替商の越後屋さんから前払いで貰っていますから、その分値下げし、宿泊費を考えたら峠越えよりも安上がりになるようにします。」

「もし、誰も通らなくなったら、ダンジョンはどうするでしょうか。怪物が溢れ出したりしないでしょうか。」

「通常のダンジョンモンスターはダンジョンから出てくることはありません。獲物を求めてダンジョン影響圏自体を広げてくる可能性がありますが、既に人が住んでいる場所はダンジョンに飲み込まれることはありません。村人が日常的に利用している場所、普通の村なら周囲1里程度は『影響圏』があります。」

「その外側は?」

「要は所有物があれば良いので、1町間隔くらいで『町石』を並べて管理しておけば良いでしょう。マスターが居ない以上、冒険者を雇って町石を引き抜いたりは出来ないでしょう。」

「冒険者? ああ、冒険者はダンジョンの怪物では無いので自由に出入り出来る訳ですか。」

「仮にダンジョンの住民であってもダンジョンモンスターではありませんから。丹沢ヒルズに天狗(ドイチェ)が住んでいるように、魔の山に餓鬼でも住み着いていたら多少は厄介ですが、そういう報告も無いようです。街道を封鎖すれば、いずれ崩壊するでしょう。」

「いずれ、と言っても何年後でしょうか。」

「ダンジョンエネルギーを計画的に貯めているなら、100年で800人なので700年後、浪費体質なら1年保たないかもしれません。」


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