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317:収量300万石

【第34層群・中庭】


 図書館都市ダンジョンの稲作は、太陽暦換算で4月に田植えを行い8月に収穫する早場米から、麦収穫後の7月初めに田植えを行い10月後半に収穫する米麦二毛作まで、時期をずらすことで労働力の逼迫を避けている。

 秋分が終わると収穫祭。異世界の新嘗祭(にいなめさい)は太陽暦換算11月だが、待ちきれないという意見もあり秋分後に前倒ししている。

「今年の作付けは20万町歩。生育は順調ですから、反収は1石5斗、収量は300万石に達すると思われます。」

 塔の地上にある第34層群。マリーが告げると、中庭を埋め尽くした住民達から歓声が上がる。異世界のように農薬を適切に使用すれば反収は4石にも達するが、まずは10年ほどで20世紀前半並みの反収2石が目標。

 年貢は定免法(じょうめんほう)で反収1石換算の四公六民なので80万石、畑などの分を加えほぼ100万石となる。つまり統計上の石高は250万石。果樹園や桑畑はまだ課税できない。この年貢が武士の俸禄や商人への支払い、国人衆への未払い分の補填に廻る。



【第三層群屋上庭園】


「まずは一安心です。来年春に人口が100万人に達しても耐えられます。本来、埼玉県民の主食は麦であり米は食べませんが、米の方が収量も多いですし、人口急増期には仕方ありません。」

 マリーは投影された地図を示しながら言う。開拓された農地は30万町歩を越えたが当初予定の1/3程度。当時は半径100kmで想定していたが、現在、村は概ね40里、160km圏まで点在している。さらに、より大型で流れの緩やかな用水路を用意することで遠方でも標高の低い土地なら耕地化が可能。

「どうやら、100万町歩より増やせそうだな。」

「はい。ですが、現時点では100万町歩で食料は十分賄えると思われます。そこからは人口増に合わせて農地を増やしつつ、人口抑制の方法を模索します。」

「人口爆発対策は難問だな。」

「問題は人間に絞って考えて良いでしょう。もちろん肉食獣人が大幅に増えたりしたら食糧生産の負担になりますが、獣人はそうは増えませんから。もしバーガーやステーキやアイスクリームを好むウサギ(USA G.I.)が動物のウサギ並に増えるのなら大惨事になります。牛肉は飼料転換効率が悪いですからね。」

 しかも牛馬はウサギどころか人間より繁殖力が低いため、容易には増やせない。

「異世界の成功例を参考にはできないか。」

「飢餓や疫病や内乱による人口抑制は人間牧場では採用できません。成功例としてフランスがありますが、住民をフランス人に入れ替えることはできませんからね。フランスは19世紀末以来人口4,000万で安定しています。」

 第二次世界大戦が無かった異世界なので、フランスでは戦後の人口増は起きていない。

「文化自体が全然違うからな。この世界でも、石の神殿アスカは人口を安定させて長く続いているが、全く参考にならない。」

「過剰な生贄で人口抑制なんて、ここの住民には到底受け入れられませんね。異世界江戸時代も人口は抑制されていましたが、都市化に伴う出生減は参考に出来ても、飢饉や疫病は採用できません。」

「出来ることからやるしか無いな。都市化くらいか。」

「中南米が人口密度が低い割りに人口爆発していないのは、都市人口率が高いためという説もあります。江戸時代でも江戸など巨大都市の人口は1割でしたからね。これを8割くらいに引き上げれば多少は効果はあるでしょう。関八州諸国に関しても、このダンジョンから食料を輸出する『やり方』で都市化を促せば、破滅を引き延ばすことも可能でしょうか。」

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