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313:プランテーション

【ダンジョン影響圏最南端】


 図書館都市ダンジョンの南方1,148km。武蔵の南、都筑郡の長者原と久良郡の栗木の間を抜けるダンジョン影響圏は、扇型に広がるとは言え南端でも幅30km程と狭い。

「心なしか空気が重い気がするな。」

 マリーに同行している大場(青シソ)博士が言う。

「気のせいでしょう。標高が3km低くなると気圧が1.5倍になり、戻ったときに『減圧症』の危険が出てきます。ですが、ここはダンジョンよりマイナス2kmと、そこまで低くはありません。」

 ダンジョン本体では標高による気圧の影響が無いが、その力も影響圏にまでは及ばない。

「それで、この場所に熱帯作物の農場を作るというのか。」

「はい。それなりにダンジョンより標高が低いので、距離が1,000kmあると言っても、ここまで水を引いてくることが可能です。」

「まず、(あわ)から持ってきたサトウキビを量産するとして、他には。」

「砂糖の他、生コーヒー豆や生カカオ豆からコーヒーやチョコレートも栽培出来ます。パラゴムノキの種子が付属したムック本があれば天然ゴムも栽培可能ですが、発芽率が悪いためおそらくそういう本は無いでしょう。園芸種のバナナやパイナップルは種なしですから種は入手出来ません。」

 種無しは、そこのローズマリーと同じだな。と思う大場博士だが、口には出さない。

「砂糖は確実に売れるが、コーヒーやチョコレートは馴染みが無いからすぐには広まらないだろう。」

「その他、入手出来れば熱帯果樹や熱帯木材の栽培も行います。ダンジョン産だと大抵『生きて』いませんから増やせませんが、この世界は広いですから、どこかにある可能性は高いと思います。」

「やはり惑星サイズの球体か。」

「変な魔法でも無い限り、異世界と似たサイズの惑星ですね。ごくわずかに大きいようですが誤差範囲です。世界の年齢は現時点では不明です。隕石を調べれば推定できますが、まだ測定機器がありません。」

「図書館ダンジョンではどうしても備品の制約があるな。」

「一番有用なのは、総合大学を教職員・学生含めて、まるごと複製召喚。あたりでしょうか。農業が軌道に乗るまでの食糧供給の問題はありますが。」

「人間が主系列モンスターならダンジョンの機能で人間のエサを取り寄せできるだろ。」

「人数が多いとダンジョンエネルギーが枯渇します。このダンジョンでもモンスター21人・眷属54匹・マスター合わせて76名しか居ません。」

「ま、過ぎたこと、ありもしないことをあれこれ言っても意味は無い。」

「そもそも、このダンジョン自体、司書が入手出来ないので図書館としては機能していませんから。ファリゴール(タイム)は学芸員の資格は持っていますし、ミントの分身も居ますから、ある程度はなんとかなっていますが。」

「『輪廻転生』は主系列モンスターが修羅なので理論的に使用できず、『死体憑依召喚』は死体が必要な上に儀式の方法が不明。だったか。」

 修羅は誕生時に脳が無いため、記憶・知識を持ち越した転生は不可能。もっとも、人間であっても胎児の脳ではいろいろと欠落が起きがちで、通常は記憶・知識は持ち越さない。

「今更軌道修正とか言っても手遅れですからね。わたしを追放して、大学図書館長の名誉教授でも召喚したところで、もはや『本来の姿』に戻すことはできません。それに、死体憑依召喚って要するにゾンビの作成方法の一種ですからね。通常は死者自身を活動させますが、ほかから魂を持ってくるのが死体憑依召喚です。」

「去年のアレか。」

「アレです。もちろん、この世界では噛まれたら感染するなんてことはありませんが。」


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