029:六大都市の市立図書館の前に鎮西の大図書館
【コアルーム】
「マリーさん、次の手は?」
「入植者第二陣も来ますし、六大都市の市立図書館の召喚。ですね。」
六大都市は特別市であり県から独立しているが、政令指定都市は県に含まれる、つまり横浜市は神奈川県では無いが川崎市や相撲……相模原市は神奈川県。それなのに神奈川県庁は横浜にある。という世界の話。
「特別市の中で、京都は大型の中央図書館を持ちませんから後回し。県や政令指定都市などの図書館でも大型の物は召喚対象とし、これらを下から広い順にバランス良く積み重ねることで図書館ダンジョンの骨格とします。隙間に中小の公共図書館を詰め込めば完成です。」
「もちろん一度には無理だろ。」
「ですね。そして、当面の召喚候補の図書館では平面が約100m四方と一番大きく地上に置くとバランスが良く、政令指定都市で特別市や県よりコストが安くなるのか、九州という遠方なので知名度が劣るのか、なんと今の保有エネルギーで召喚可能なものがあります。」
第四層群は、地上5階、延床面積24,000㎡。これにより地上から四一二三の順に積み重なる26階建て塔型ダンジョンとなる。
【図書館ダンジョン前】
「マリーさん、玄関は南東側になるんだな。」
冒険者も出入りする場所にダンジョンマスターが行くのは危険なので、マスターはコアルーム。
「西の入間とは反対ですね。でも、足立を縦断していた古い中山、つまり孫文のことですが、その街道はこの方向ですから、いずれ玄関に相応しい方位になるでしょう。将来召喚予定の帝国図書館(国会図書館のこと)も、あえて言うなら南東側が玄関ですし。」
「孫文は知識としては知っているが。」
「昔、南東方向、ずっと先に中山競馬場って言う、草地があって馬が居るダンジョンがあったそうです。ダンジョン自体は今もあるかもしれませんが。」
孫文では無かったはず。とダンジョンマスターは思うが、この世界ではそうなんだろう。
【第四層群1階】
「それにしても、相変わらず食堂で料理は召喚出来ないんだな。」
マリーは第四層群、マスターは相変わらずコアルームでモニタ越し。
「出来ませんねぇ。南側のホールは、将来は市議会用に改造しましょう。概ね1階を公共施設や商店、2階3階の外側は区切って住宅、収蔵庫は倉庫に転用しましょう。」
「間口10mで割っていくとして、そこまで多数の住宅は置けないな……。」
「この世界ですから、当面はそれこそ3.6mで十分でしょう。150戸ほど押し込めると思いますよ。」
「兎小屋以下だな。第二層群は仮設住宅って扱いだったからそれでも良いが、革命とか起きないか?」
「この世界だとそういうものですから問題ありません。既存の住宅を加え1000人程度、丘全体を畑にしたら生産力もその程度ですし、ちょうど良いと思います。」
「第三層群は使わないのか?」
「う~ん、大学図書館ですから、将来、学者さん達が来たとき用でしょうか。予定としては。」
「畑は平面に広がるしか無いんだよな。」
「ですね。『ダンジョン大百科』によると地下空間に光を供給して森林を作る。という話が載っていますが、このダンジョンは生活環境維持のためのエネルギー消費が多いため、そういうことをする余裕はありません。」
「畑に通うのは大変にならないか。」
「来年春には丘の麓から大々的に水田を作りますから、冬の間に小さい図書館をいくつか召喚して丘の廻りに置きましょう。普通の建物でも良いですが、ダンジョン構造物の方が衛生的で丈夫です。」
「それでも遠くなると管理が行き届かないな。」
「そこなんですよね。今のところ、屋上からの監視可能距離は理論上50km程度、一連の増築が終わったら70~80km程度にはなるでしょう。もちろん監視カメラの性能が追いついていないので、現実には20km程度ですが。で、防衛用に騎士団でも召喚したとして、賊が来たら急行させるなら、防衛可能範囲はその半分。とはいえ1日飛ばしたら疲れてしまいます。それこそ、自動車とか鉄道とかという話になるのですが、このダンジョンでは召喚出来ませんし、ミントに作らせる、というのも無理があります。」
「そもそも、騎士団が居ないな。騎士の紫蘇なんて居るか?」
「次は軍人の召喚ですね。とはいえ1人では何も出来ませんし、配下に付ける騎士団でも代官に探して貰いましょうか。」




