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286:やっぱ新幹線だったんじゃないすかねー

【奥州街道】


 異世界の奥州道中は宇都宮~白河、つまりこの世界では那須塩原(なすえんげん)内に相当するが、ダンジョン構造物による道路はダンジョン影響圏内に限られるため、図書館都市ダンジョンから一直線に左遷城に近い影響圏の端まで伸びている。

 片側1車線の高架道路上を、移動図書館を再改造したトラックやバスが荷物と護衛を積んで移動中。もちろん、第三層群・管制室からの遠隔操作。

「しっかし、何も無い砂漠だな。」

 窓から1人の若い商人が外を見ながら言う。街道では、主要な宿を10里おきに配置、休憩や足の遅い人の宿泊に対応出来るよう、2~3里おきに補助的な宿場や、休憩のみの間宿(あいのしゅく)が置かれている。しかし、この急造高架道路は、車のみに特化して途中の充電設備以外を省略した簡易版。

「300里近くもあるからな。歩いたら30日、荷物があると倍だ。」

 もう少し年上の商人が言う。

「転送陣とか、越前屋殿の言っていた『秦漢選(しんかんせん)』とやらなら半日なんだろ。」

「転送陣は費用がかかりすぎる。1回ごとに10両は無茶だ。」

「300里だと歩いたら旅費が10貫文くらい必要になるぞ。加えて馬を雇うと……200文の300里だから60貫文か。1両が5貫文か6貫文あたり(相場により異なる)として、70貫文は10両超えるから、むしろ安いんじゃないのか。」

「単価の高い商品があった場合。だな。それで、秦漢選(しんかんせん)だが、図書頭(ずしょのかみ)様が仰るには、そもそも時代後れで過去の遺物、この世界でも5年もすれば時代後れになるとのことだ。」

「過去の、って、まだ始まってすらいないだろ。」

 商人や冒険者達が雑談をしていると、車列最後尾に近い車が「ガクン」となって速度を落とし、停車する。追随する後続の車も自動的に減速・停車。一方、先行する車はそのまま次の充電地点へ向かう。


「止まったな。故障か。」

 商人はそう言って車から降りて車を蹴飛ばす。



【第三層群・管制室】


「故障か。」

 ミントは状況を確認する。

「片側1車線なのは失敗だったな。」

 自動運転車は路肩を走るようなマナーの悪い設定にはなっていない。遠隔手動操作に切り替えて1台づつ先へ行かせ、電動機出力の大きいトラックに故障車を牽引させる必要があるが、牽引は現地に居る冒険者に依頼しないといけない。



【奥州街道】


 ボン。という音がして、車からかすかに煙があがる。ダンジョン構造物内では火は使えないが、道路はダンジョン構造物の屋上、つまり外なのでエンジンを搭載した炭化水素燃料車も使用可能となっている。しかし、それが災いし電池が引火・炎上してしまう。乗っていたもう1人の商人が慌てて車から降りる。

「なんだ、火事か!」

 後続の車からも商人や冒険者達が降りてくる。

「車を後退させるので、車の前後から離れて下さい。」

 管制室からミントが呼びかけるが、商人も冒険者も混乱してあたふたするばかり。管制室は手動で再後尾から車を後退させてゆくが、全車両の退避は間に合わず炎は後続の車数台に次々引火。

 幸い死傷者こそ出なかったものの、商品や冒険者の装備も炎上してしまう。

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