028:四度目は襲撃すら出来ない……三郎襲来
【コアルーム】
「2人……微妙な数だな。」
ミントが新たな来訪者を発見。
「1人は武者、もう1人は荷物持ちの付き人っぽいですね。方位と時間から見て、過去2回の賊と関係がありそうです。」
「2人とはいえ、用心に越したことは無い。マリーさん、入植者を片付けてくれ。」
【丘の中腹】
2人は、ダンジョン影響圏の端、梟首(さらし首)の前までやってくる。
「兄上……。」
「間違い無く太郎様の首です。」
「比企小森新戸三郎、無位無冠とはいえ、兄上の仇を取りに来た。」
何も無い道で武者が大声で名乗りを上げるが、引きこもりニートの無職では様にならない。そして、誰も聞いていないので当然のように返事は無い。
「進みますか。道は外れて。」
「いや、こいつらは小汚い小山下野介並に血も涙も無い悪い奴だ。無策で進んでも罠にかかるだけ。例えばダンジョンに出入りする冒険者と同行するとか考えないと。この道が道として機能し冒険者が出入りしている。ということは、ダンジョンそのものの罠では無く、ここに住んでいる開拓者が操作しているのは間違い無い。」
「彼ら、冒険者ごと躊躇無く罠にかけますよ。」
「下野介なら、そうするか。置き手紙、というのも考えたが、次郎兄ですら読み書きは出来ないからな。ここの開拓者が字を読めるはずは無い。」
「それでも、代官に届けはするのでは?」
【コアルーム】
「このままでは冒険者一行と接触します。」
「警戒の放送を流すと、賊に冒険者の存在が知られて冒険者が襲われかねませんし……。賊の強さが分からない以上、困りました。」
「入植者への状況報告を装えば良いでしょう。」
「ですね。え~と、『侵入中の山賊2名は、現在大手前さらし首の所に居ます。入植者の皆様におきましては、引き続き建物内での待機をお願いします。』」
【丘の中腹】
「この名門比企氏を山賊とは。」
【図書館ダンジョン近郊】
「おい、兵衞次郎、賊が来ているそうだぞ。」
「2名とはいえ、手練れでないとは限らない。こちらは5人居るとは言え、戦えるのは俺と左衛門太郎だけか。でも、2名ということは物見か。」
【丘の中腹】
そうこうするうちに、空の大八車を引っ張った冒険者一行がやってくる。
「見かけない顔だな。」
「比企小森新戸三郎、無位無冠だ。」
「俺達は燃料薪を作りに来たんだが、お前達は?……いや、言いたくないなら構わないが。飯のネタは秘密だからな。」
「あ、何でも無い。」
そう言うと、三郎は兄の首を回収して去って行った。
【図書館ダンジョン玄関】
「お、書記長さん、お出迎えありがとさん。」
冒険者の中でも交渉事に詳しい右馬太夫がマリーに声を掛ける。
「先ほど、獄門台の所で2人連れと会っていましたね。彼ら、何か言っていましたか。」
「へい、比企小森新戸三郎、無位無冠と名乗っていました。」
「引きこもりニート?」
「へぇ、確かに比企小森新戸三郎と言っていましたな。偽名かもしれませんが。」




