277:ホームセンターダンジョン
【第三層群屋上庭園】
「使節団が左遷城から帰って来て、それから商人さん達が商品を準備して、さらに道路で商品を運びますから、まだ時間はありますね。」
「ダンジョン影響圏外、左遷城まで、砕石敷きで良いので道路が用意出来れば良いが。」
「ですが、冒険者ならともかく、道路を作るなら安全確保は必須ですからね。わたしの力が及ばない場所での作業は危険が伴います。また、ダンジョン構造物で補助した重機はダンジョン外では使用できません。」
「建設機械は図書館の備品に無いから、召喚出来ないからなぁ。」
「それこそ『図書館が入居している建物』の備品も召喚出来るなら、ショッピングモールで何でも手に入るのですが、残念ながら出来ません。」
「おそらく、『ホームセンターダンジョン』が最強だろうな。ホームセンターを積み上げる、というのは問題が出そうな気もするが。」
「那須塩原は別に塔など無いですがかなり広いですし、さすがに半径1,000kmは無理でも、ある程度は影響圏を広げる方法はあると思われます。」
「アメリカのホームセンターなら鉄砲だって売っている。」
「どこかにそういうダンジョンがあって、この世界の火縄銃よりも強力な武器がある可能性もある。ということは頭の片隅に置いておくべきですね。この図書館都市ダンジョンの技術水準は21世紀後半で、江戸時代程度のこの世界に対して圧倒的な差がありますが、逆に相手が22世紀だったりすると対抗は困難です。」
「残念ながら、図書館にある知識だけでは現物は手に入らないが。」
「そこは、地道に人材育成して工場自体をつくって行くしかありません。修羅は人間より頭は良いので、多少は時間短縮出来ますが、それでも年単位の仕事になります。」
「話を元に戻しますが、左遷城への隊商出発までの間に、西の方も雑な地図しか無いので、気球撮影で街道や町の位置を確認しましょう。」
「雑とは言え地図があるだけ良いか。ある程度は探すべき方角を限定できる。北の方、那須塩原西側の転送陣は、全くの山の中で完全に無駄になったが。」
「それは仕方ありません。奥州は全く情報が足りませんでしたから。あと、南東側、粟や総の向こうは、少なくとも千里は砂漠しか無いそうです。確証はできませんが。」
「飛行機も無いからな。確かに案外影響圏のすぐ向こうに人が住んでいるかもしれない。少なくともラクダが居るのは確かだが、砂漠を数百kmも移動したら乗っている者がダウンしてしまう。」
「あるいは、孤立した未知のダンジョンがあるかもしれません。」
「ダンジョンは生贄が必要だから、完全に孤立しては存在できないと思うが。」
「人間牧場ならあり得ますね。もっとも、人間でも修羅でも畜生でも、人数が少ないと遺伝的劣化が起きやすくなりますから、1つの種族につき最低数百、出来れば千単位の人数は必要です。もちろん修羅や畜生の場合、同じ種類ごとに。となります。」
同じ畜生でも、犬畜生と豚畜生で子供は出来ない。馬脚(下半身が馬)と馬頭(頭が馬)の雑種も出来ない、または繁殖力が無い。
「だから『人間』牧場。というのか。」
「人間が一番繁殖力高いですし、飼育も容易ですからね。」




