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267:今為すべき事(ダンジョン探索編)

【第三層群屋上展望台】


「近隣ダンジョンの扱いに関しては、まず丹沢ヒルズから植物を採集し、利用可能な薬草などが無いか探します。また、土を採集し有用な菌類を探します。」

「菌類? キノコ栽培でもするのか。」

「キノコは、木材、または生きた松林などが必要ですから、先になります。今回は野菜や果樹用に菌根菌という肥料吸収を助ける菌類を探し出し、肥料の使用量を節約します。このダンジョンでは水ならタダ同然に入手出来ますが、肥料や電力には、それなりにダンジョンエネルギーが必要になります。」

「百万町歩ともなると、肥料もとんでもない量が必要になるだろうな。」

「水稲1反に肥料が20kg、麦1反に30kgとして、作付けが稲70万町歩・麦50万町歩だと肥料は30万tになります。これに野菜や果樹園の分が加わるとさらに増えますから、節約が重要になってきます。水は農業用水が年100~200億t、生活用水が20億tくらい使うことになるでしょうが、こちらはダンジョンエネルギーという点ではさほど重い負担にはなりません。なにしろ、見沼の貯水量は、その10倍ほどになります。」

 見沼が約8,000k㎡、東の無名湖が約2,000k㎡ある。

「つまり、丹沢ヒルズに将来がかかっていると。」

「まず天狗(ドイチェ)との接触が必要ですが、天狗の好物は、やはりビールでしょう。」

 天狗の好物はビールとソーセージとジャガイモ。

「またビールか。」

 ダンジョンマスターや眷属用に、ビールやブラックコーヒーなどはダンジョンの機能で入手可能。ビールはこの地方では入手出来ない酒なので、贈答用に需要があり、あまりダンジョンマスターの口には入らない。

「水と肥料がこのダンジョンの生産の基本なら、ビールは外交の基本です。修羅には効果がありませんが。」


「ならば、ビールをお預けにする代わりに、そろそろ、中山競馬場も……。」

「競馬場のダンジョンマスターの有無、居るとすれば人間や畜生なのか、ただの馬なのか。居ない、または馬なら交渉の方法。まずはふさとの打ち合わせが必要ですね。」

「今年の中山グランプリは、ぜひ開催したいが、難しいだろうか。」

「今からでは難しいでしょうね。馬脚による400m競争。あたりがせいぜいでしょうか。それだけなら、あまり畑を減らさずに済むでしょう。」

「競馬で400mは短いな。せめて1,000、できれば2,400で。」

 クォーターマイルレースは約400m。

「畑を減らさないといけませんから無理です。ただ、ダンジョン周りの砂漠へ直線に伸ばせば、推定される中山競馬場の影響圏が半径1km弱なので、おそらく影響圏内に1kmくらいのコースを作ることは可能ですが……。」

「2,400は入らないか。」

「狭いダンジョンですからね。あと、そもそも、この地方に『競走馬』自体が存在しませんし、普通の馬であってもしななどから連れてくるのは困難です。馬脚なら転送陣で移動出来ますから、最初は馬脚で行きます。」

「馬脚では騎手が乗る意味が無さそうな……。」

「この地域では馬脚に騎乗するのは普通ですし、異世界でも岡藩主の中川久清という例がありますから、騎手は乗せましょう。騎手を落としたら失格ということで。ただ、知的生命体が直接走る以上、八百長がやり放題ですから、馬券は無理です。文部省が陸上競技賭博を断念したのも八百長根絶が不可能だからです。」

 陸軍省の競馬に対抗し、海軍省が主導し手こぎボートの短艇(カッター)を使用するのが競艇。その後、逓信省の競鳩、客層が最低の競犬などが加わった。なお、鉄道省は機関車を競争させる「競鉄」を構想するも費用が掛かりすぎるため諦め、文部省は陸上選手が直接走る「競人」を計画したが原理的に八百長の根絶が不可能なため断念した。


「他に、近隣の注目すべきダンジョンは、南方の『浅草干潟』。これは冒険者に海苔や貝の採集を依頼します。南西の『多摩丘陵』、位置的には狭山丘陵では無いかという気もしますが。こちらは、まず植物が本物か確認し、本物なら丹沢ヒルズ同様に植物の採集を依頼します。木を伐ると呪われる。という話がありますが、これはダンジョンの影響かも知れませんから、伐採は保留します。」

「確かにダンジョンの固有法則は何があるか分からないからな。冒険者を無駄に失う危険は避けたい。」


「毛の国の『真社会塔』は、どうやらシロアリダンジョンで巨大シロアリが居ると思われます。危険性が高いので、準備が出来次第、速やかな駆除が必要です。」

「シロアリって人を襲うか?」

「昆虫は化学物質に頼っているため、植物と修羅の区別が付きませんからね。さらに肉食昆虫だと普通に人間や畜生だって襲いますから、巨大昆虫はきわめて危険です。幸い、ダンジョン影響圏を出ると即座に潰れるので、近隣の村を襲ったりはしませんが。」


「ほか、武蔵(むさし)からにかけて、おそらく鉱物資源を産すると思われる中小規模ダンジョンが点在しています。秩父郡の『和銅谷』は銅、同じく『武甲山』は石灰、『火浣布の山』は石綿……これは触れないでおきましょう、吾妻郡の『毛無峠』は硫黄、『穴地獄』は鉄、河内郡の『大谷地下迷宮』は石材。」

「今後の工業化には不可欠だな。」

「エネルギーコスト的に、鉱山から採掘するのと、例えば鉄なら鉄骨造りの体育館付き公民館を召喚して解体するのと、どちらが得か検討する必要はあります。本格的に開発する価値があるなら、鉱山町を作ってダンジョンに感情エネルギーを供給しつつ採掘することにします。」

「なるほど。人間牧場の応用か。」

「異世界の鉱山なら、掘り尽くせば終わりですが、ダンジョン鉱山は影響圏内に鉱山町を作ることで成長させることが可能です。しかし、ダンジョンだけに、安全に配慮しても生贄目当てに事故を起こされる危険がありますが。」

「ダンジョンマスターが居れば、意図的な事故を起こさないよう交渉は可能かもしれないな。」

「居て、知性があって、交渉が可能。の3段階が必要ですから、難しいかもしれません。それに、鉱山だとダンジョンマスターは餓鬼の可能性が高いので、基本的に修羅とは相性が悪くなります。」

「この図書館都市ダンジョンは、別に本質が修羅という訳では無いから、眷属か人間の住民なら、修羅と餓鬼の仲の悪さには影響されないとは思うが。」

「確かに、本来は図書館ですからね。ただ、知名度がありすぎますから。」


那須塩原(なすえんげん)に関しては、海賊でも捕まえたときに再度交渉を持ちかけます。最期に、ひたかにある『磁気異常』ダンジョン。いろいろと正体不明ですが、まだ調査手段も無いため、後回しにします。」

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