266:今為すべき事(交通インフラ編)
【第三層群屋上展望台】
「次に、ダンジョン影響圏内の交通手段ですが、将来は高速道路を中心としますが、現時点は徒歩移動の街道が中心です。」
「技術的な制約があるから仕方ない。それに、まだ車を運転出来る者は少ない。」
「街道は西の入間方面は琵琶橋まで徒歩1日半、東の織田城方面は太田橋まで8日余り、南東の総方面は国府台手前の市川橋まで8日、いずれも10里おきに宿場町を配し街道として機能しています。」
「街道は5本あったはず。」
「他の主要街道は、北西・北東とも50里まで完成。その先も要人移動用に毛の総社及び宇都宮城・那須塩原の近くまで転送陣を設置しました。6本目になる南西の武蔵府中方面は現在、転送陣のみです。」
「将来的には高速道路が6本?」
「いえ、将来的には24方位に24本の高速道路を構想しています。100m道路が最大片側10車線で6本、他は片側3~5車線程度になるでしょう。転送陣が必要になったら地下に幾何学的に一直線に配置しますが、道路、もし必要なら通勤鉄道は、ある程度は既存の地形を考慮する方向で土地を確保しています。」
転送陣は地下なので見沼の底を抜ければ良いが、道路で20kmを越えるような橋やトンネルは使い勝手が悪い。
「24本って、確か東京より多くないか?」
「東京は通勤鉄道が40本くらいあります。もちろん将来も人口が1割以下ですから、電車は採算が取れず高速道路になるでしょうが、それくらいの本数は必要になると思います。それに、ダンジョンでは最初から土地を確保しておくだけならコストはかかりませんから。」
道路の輸送力は1車線で毎時1,000人、電車は3~6万人なので、交通量が1割なら片側5車線の高速道路があれば安心。
「転送陣に関して、影響圏外縁部への転送陣ですが、まず、東北東、筑波山の裏側、将来第二都市を構想している方面に1本延ばしています。」
「先行投資にしても気が早いな。」
「急ぎすぎたかもしれません。ただ、既存の村やダンジョンがあると、その向こうにも影響圏が広げられない。という制約がある以上、まとまった土地は他には期待できません。」
「村の間を抜けて、ごく細長い扇形になるんだよな。」
「さすがに小塚原刑場みたいな暴走事故を人為的に起こすわけにはいきませんからね。もっとも、普通はダンジョンコアがあんなにエネルギーを溜め込んでいることは無いと思いますが。図書館都市ダンジョンの蓄積上限と比べても桁違い、おそらく2桁は多かったでしょう。」
「その他、影響圏外側方向の転送陣は現在7本。粟国府・観音寺へ影響圏端近くまで、真南にある武蔵南部の都筑・久良方面、相撲国府・本郷、丹沢ヒルズ手前の中津、秩父の北を抜け甲の国北部へ影響圏端まで、科の国に近い毛の国碓氷方面、毛の国府・総社からさらに先、山を抜けて越の国へ影響圏端まで。となっています。」
「街道は無いんだな。」
「距離が遠いため、さすがに街道を作るのは難しいと思われます。影響圏の端だと1,000kmほどになり、山など地形を考慮すると30日くらいは必要になります。それだけの宿場町を維持するのは困難です。」
「800kmなのか900kmなのか1,000kmなのか。」
「昨年の暴走の影響で、まだ完全には掌握しきれていませんが、間違い無く1,000kmを少し越えています。」
「確か、システムの制約以上に影響圏を広げたのはマリーさん自身だったはずだが。」
「はい。広げられるだけ。広げましたが、予想以上に広がったこともあり、少し手に余っている状態です。」
「マリーさんにも限界はあるんだな。」
「まだ本調子ではありませんからね。」
実際には、約4,000層群・高さ80km・視界範囲1,000km余り・床面積25k㎡(うち図書館6k㎡)といったところ。




