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251/552

251:天狗との決裂、そして

【丹沢・中津村】


 中津村に天狗がやってきたのは10日程経ってからだった。臨時代官が応対しつつ、唯一の法学部卒であるラージャ(バジル)ハルナ(馬獣人)と共に転送陣で急行。

「グーテン・ターク。丹沢の天狗、余半(ヨハン)だ。」

 天狗は、6尺(180cm)を越える長身、高い鼻、大きな薄い水色の金壺目、縮れた茶色い髪。女ならこの地域では板東一の醜女(あれは7尺もあるそうだが?)と評されそうだが、男。服装は丈の長い黒いコートのようなスーツで河童(プルトゥゲシュ)坊主(パードレ)と同じもの。

 天狗語は異世界の山オランダ諸語に似る。ラージャは天狗語は挨拶程度しか使えないため、余半はすぐに人間の言葉に切り替える。

「丹沢の天狗が1羽行方不明になったが、知らないか。」

「こちらのダンジョンの影響圏に飛び込んでしまい墜落しています。ほぼ即死と聞いています。」

「飛べなくても軟着陸は可能なはずだが、撃ち落とされたのでは無いか。」

「撃ったという報告は受けていませんが。当時の状況を映像で再現しましょうか。」

「映像? 魔法か何かで捏造し放題ではないか。さては、丹沢に入り込んで天狗狩りをしたな。」

「なぜそういう話になるのです。丹沢ヒルズに冒険者を送り込んだのは、植物の採集で……。」

「冒険者だと。天狗を狩るためか。」

「だから植物と。」

「大天狗の蛭田(ヒルダ)様に報告して、総攻撃を進言せねばならぬ。」

 そう言うと余半は森へ帰っていこうとする。


 余半が中津村から出ようとしたとき、もう1羽の天狗が丹沢ヒルズから飛んできて、余半に手を振り……墜落する。

「あ、李奈(リナ)!」

 慌てて飛び上がろうとして、当然飛べる訳も無く無様に転ぶ余半。ハルナが疾走し落ちてくる天狗を受け止めるも、衝撃を吸収しきれず転ぶ。

 砂埃でかなり悲惨な見た目になったものの、怪我無く起き上がった2羽目の天狗。

「妹の李奈だ。無事で良かった。それにしても本当に落ちるのか?」

 2羽目の天狗は身長は165cmのラージャよりも高く5尺6寸(170cm)くらい。顔は余半の女性版で鼻は高く目は大きな薄水色。髪は波打った淡い茶色。要するにこの地域の人間の感覚では醜女。天狗は服を見れば未婚か既婚か坊主(聖職者)か分かるが、ラージャもそこまでは知らない。

「ダンジョンから外れても滑空はでき、即座に墜落はしないはずだが……。」

「ここが別のダンジョンの影響圏だからではないですか。」

 とラージャ。天狗の羽はハンググライダーより小さく、ダンジョンの助け無しでは滑空すら出来ないはずである。

「蛭田様に指示を仰がなければならないが。それと、落ちた天狗を返して欲しい。天狗は人間どもと違って、可能なら土葬が好ましいとされている。」

 余半は、冷凍庫に入れられていた死んだ天狗を橇に乗せて引きながら、李奈と丹沢ヒルズへ帰って行った。



【第三層群屋上展望台】


「天狗はこちらの影響圏に入ると即座に墜落する。か。」

「どうやら、天狗はだいぶ思い込みが激しそうですね。天狗は個人主義で頑固だそうですが。ただ、大天狗の判断次第ですが、即座に衝突、ということは無さそうです。」

 ただし、「天狗になった」あげくに大失敗をしでかすのが天狗。油断は禁物。

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