245:丹沢ヒルズ攻略計画
【第三層群屋上展望台】
「丹沢ヒルズからの木材の搬出ですが、まず、拠点の『中津』までの当面の輸送手段は『新幹線』です。鉄道は飛行機より遅く道路より高く付きますが、飛行機が無く自動車も電気式で航続距離が限られる現状ではやむを得ない選択です。」
「転送陣を併用するのも良いかもな。」
「転送陣は時速400~500km程度ですが、旅客機は時速900kmなので、じきに転送陣も無駄になると思われます。府中や国府台なら旅客機製造までの繋ぎとして意味は有るかもしれませんが。」
将来的には、旅客は飛行機、貨物は「ビッグリグ」と呼ばれるアメリカ製の大型トレーラーを使用する。空港は各地に土地だけは確保されているが、旅客機は全く手が出ない状態。
「次に、丹沢ヒルズ内への林道建設にブルドーザー、木材の搬出に不整地用のトラックが必要です。いずれも図書館の備品にはありません。これらは今後、ダンジョン影響圏の外側での既存の村までの道路建設にも必要ですから、引き続き開発を進めます。」
「建設中の図書館を重機ごと召喚したりは出来ないのか。」
「建設中の図書館は図書館ではありませんから。人間は幼生でも人間ですから、聖遺物ダンジョンなら異世界から大人のヨハネの頭蓋骨と子供のヨハネの頭蓋骨を召喚できるでしょうが、図書館はそうはいきません。」
「確かダンジョンが複製召喚出来る備品は量産品だけだったな。ヨハネは量産品なのか。」
「洗礼者ヨハネだけで少なくとも頭は4つあります。使徒ヨハネ・十字架のヨハネなど、さらに読み方が違うだけでジョンとかハンスとかイヴァンとか全部ヨハネですから、まず間違い無く量産品扱いです。」
その辺は全部ヨハネ由来。ついでに、阪奈電鉄のキャラクター「ハンナ」は山オランダ人という設定だが、これもヨハネ。
「木材の搬出に、どうしても重機は必要かな。」
「丹沢ヒルズの外側部分は荒れ地で木材は得られませんから、内部に入って木を伐採しないといけません。ですが、生木は重いので人力・畜力で運び出すのは大変です。かといって、ある程度乾燥するまでダンジョン内で放置なんてしたらダンジョンに吸収されてしまいます。」
「そうなると、今すぐ伐採は難しいだろうな。」
「それに、まだ冬ですからね。準備不足では遭難の危険がある、いえ、ほぼ確実に遭難します。」
「なら春か。」
「春になると、ダンジョンでは田植えや麦刈りで忙しくなりますし、丹沢ヒルズでは虫が目を覚まします。夏は暑いですから、伐採作業には脱水症状の危険があります。秋は気候は良いですが、稲刈りで余裕がありません。」
「いつが良いんだ。」
「木の伐採に良いのは、十分な準備をした上で冬。ですね。木の種類によっては他にも良い季節はありますが。あと、本来は木を切り倒してからしばらく乾燥させますが、速やかに中津まで運び出し、こちらのダンジョン内で乾燥させます。」
「マリーさん、つまり動くのは次の冬ということか。」
「本格的には。ですね。そのためにも、この冬の間、蛭が動き出す前に、冒険者による最低限の調査が必要です。本当はわたしが直接乗り込んで確認した方が良いのですが。」
「冒険者がダンジョンに入るのは当たり前だが、ダンジョンモンスターでは相手のダンジョンを刺激しすぎるだろう。ましてやマリーさんは事実上コアと一体化した世界樹の分身。」
なお、名前の無い普通のダンジョンモンスターはダンジョンを出ることが出来ないため、当然他のダンジョンに入ることも出来ない。
「むしろ名前付きモンスターなら死亡しても復活可能ですから、死んでしまうとおしまいの冒険者よりは良いかもしれません。」
「復活には大量のダンジョンエネルギーが必要だ。それに、捕まる危険性もある。」
「ならば、逆に、相手の名前付きモンスターを全部捕まえてしまうという手もありますね。」




