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237:人間牧場の新年

 人間も畜生も修羅も、そして餓鬼ですら本質では怠惰である。この地域でも新年は、朝、神様を祀った後は、食べて寝てだらだら過ごす。しかし、武士達は元旦の午前中から、それぞれの城や代官所に登城して挨拶しないといけない。



【第三層群屋上展望台】


 高さ60kmを越える図書館都市ダンジョンの頂上では、元旦(立春)の日の出は50分以上も早くなる。住民にも、初日の出を見るために上の方の36・37層群までエレベーターで登って来る者も居る。さすがに徒歩で登山するには高すぎる。

「去年は最後に盛大にやらかしてしまいましたが、今年は最後まで気を抜かずに行きます。」

「まずは、春の田植えを滞りなく終わらせることが大切だな。」

「はい。このダンジョンでは食糧の確保が一番問題になりますからね。さすがに温室で稲を育てるなんて無茶をやっていては、ダンジョンエネルギーが大赤字です。人間牧場の効率については、今後きちんと再検討しないといけません。」



【第34層群・文化会館棟・大ホール】


 図書館都市ダンジョンでは、紫蘇(修羅)も眷属も、この世界に無い異世界技術の導入が主な仕事であり、既に人口20万に近いダンジョンを運営するには、重臣から足軽まで千人を越える住民を雇用する必要がある。

 この世界の既存の社会秩序を大々的に改革するとなると大混乱が起きるので、俗に言う「紫蘇図書頭様御家中」では、岸家や仙波家など知行持ちの重臣10家や水軍3家から蔵米取の世襲文官達まで士分(サムライ)とし、この地域の人にも分かりやすい制度としている。

 試験などによる非世襲(一代限り)は順次導入中。中国の科挙とは異なり、日本の公務員試験は合格自体は容易だが、なにしろこの地域ではまだまだ教育が普及していないため先は長い。

 他に、治安維持・事務職などの末端を担う足軽が雇われている。


 重臣達は朝からマリーに個別に挨拶するが(ただし画面越し)、その他大勢は昼前に大ホールに集合。地表にある第34層群の大ホールは1,903席あるが、おそらく来年には不足し、江戸幕府みたいに何回かに分けて挨拶することになるであろう。

 マリーが屋上展望台から新年の挨拶を、かなりたどたどしくではあるが、ごく手短に済ませ、印刷した挨拶本文と下賜品を配るとお開きとなる。



【第三層群屋上展望台】


「ぶじ、おわりました、ね。」

 展望台に液肥を持ってきたダンジョンマスターに、マリーは自身の声で言う。

「体の方は世界樹から動かし、声はこの体の脳を使うので、かなり難しいですが。」

 と、文章端末に表示させる。

「慣れるか回復するかすれば問題なくなると思う。」

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