224:オリジナルモンスターについて
【第三層群・管制室】
「オリジナルモンスターは入門書『ダンジョン・ワンノーワン』の範囲外ですが、『ダンジョン大百科』によると、ダンジョンのテーマ性を定めて、個性化するためのもの。記載されている例だと、海賊船ダンジョンでありきたりな人間の海賊では無くタコ怪人の海賊にする。この場合、召喚済みの名前付き海賊を対応するオリジナルモンスターに変換可能。」
ミントによる説明は続く。
「可能?」
「あえて変換しないことで、タコ海賊の海賊船なのに、副官だけ人間の海賊。というのを再現できる。」
「幹部がタコ海賊で手下が人間。というのはどうするのか。」
「必ずしもオリジナルモンスター置き換えは義務では無いので、タコ海賊はオリジナルモンスター、手下は従来の主系列モンスターでしょう。そこまで『ダンジョン大百科』を読み込んではいませんから、併用する場合の設定方法は知りませんが。当然、置き換えて従来のモンスターを召喚できなくする方が低コストです。」
「タコ海賊の場合、名前付きモンスターだけでなく、そもそもダンジョンマスターの海賊船長もタコにならないとおかしい気がするが。」
「そこは、システム的には副官の名前付きモンスターを対外的には船長に見せるとか、いろいろな方法があります。このダンジョンでマスターが畜生なのも、おそらくチュートリアルでは何か意味があったと思われます。」
(どうもマスターと図書館にも繋がりが見えないのですよねぇ。市のマスコットという訳でもないですし。確か掏摸だったか松鼠だったか?)
マリーは「秘書の資格がある」という設定上、政策担当秘書資格を持ち、その選考採用審査認定条件の1つである公務員試験合格という「設定」のため、当然広範な知識を持つが、大宮では無く松山由来という設定であり、もちろん異世界転生者では無いので知識にはかなり粗があったりする。
なお、設定上の「経歴」の合計年数が明らかにおかしくなるのは、特定の異世界転生者ではなく、それっぽい経歴を組み立て、さらに後付けで追加したため。
「それで、このダンジョンのオリジナルモンスターは紫蘇(修羅)なのですが、館長殿、何か心当たりはありますか。」
「う~ん、どうだったか。記憶に無いな。……確か、怪物のリストを見て、図書館で怪物は無いと思ったはず。」
ダッチロールの怪物ハネダブライアンや灰色の怪物オグリタダマサなどと誤認したのが原因だが、忘却の彼方。
(確かにモンスターの和訳は怪物ですが……。)
「それで、図書館を管理してくれる者が必要だ。と思ったはず。……思い出せないな。」
司書をシソと間違え、秘書が必要と念じた結果、種族がシソで資格が秘書という設定のマリーが召喚された訳であるが、記録からはそこまでは分からない。そして、マスター権限に修士を要する(もちろん、語源的には修士よりギルド等の「親方」の方が先だが)など、妙に資格主義の図書館都市ダンジョンのコアにとって、秘書の公的な「資格」とは何か。となると、議員の政策担当秘書資格となる。




