022:医務室開設、第四の紫蘇は医師にして薬草の賢者
【屋上菜園】
組み替えによりコアルームと菜園は屋上に移転したが、層群(group)間エレベーターにより移動は容易。
「マスター、医者の紫蘇、ですか? シソ科に薬草は多いですから、マスターが強く念じて召喚したら、医者としての召喚は可能と思われます。ただ、オドリコソウの踊り子とか、ムラサキシキブの同人作家とか、種類によっては『一般的イメージ』に引きずられて上手く行かない場合もありますね。」
「事前にある程度候補を決めて、名前も予定しておくとか。」
「マスターにしては凄い進歩ですね。ここにハーブ図鑑を用意しましたから、召喚候補を決めましょう。ただし、レモングラスとかコリアンダーとかは紫蘇ファミリーでは無いので召喚出来ません。」
薬草図鑑の方が良かったのかもしれないが、掲載数が多いと決めるのも面倒。
「これで行こう。薬草として知られ、別名薬用サルビア、英語だと『賢者』と同じ単語だ。」
【コアルーム】
召喚された紫蘇は、髪はわずかに緑を含む灰色の金属光沢(構造色)で地の色は灰色。目は緑がかった灰色。雰囲気はオッサン。
「セージと言います。頭脳労働ならお任せ下さい。」
感情のない挨拶。召喚時点では名前無しなので、こんなもの。
「よろしく頼む。」
以前のダンジョンマスターなら、おそらく「Sage」をローマ字読みして即座に「サゲ」と命名していた。
「ラテン語のサルビアが訛って英語のセージとなり、これは賢者と綴りが同じなので、ラテン語に引き戻してsapientem『サピエンツム』長すぎるから豚切りして……『サピエン』」
あんまり進歩していない。もちろん、セージはSalvia officinalisでありHomo sapiensでは無い。
ダンジョンコアが
「マスターがモンスターをネームドに設定しました。モンスター『セージ』の個体名を『サピエン』に設定します。」
と告げる。
「まず、医者として入植者達の面倒を見て欲しい。残念ながら図書館ダンジョンなので医療器具も医薬品も今は召喚出来ないが。その後は入植者達の叩き直し、いや、教育をお願いしたい。」
「医学に加え、法学・神学なども一般教養レベルは最初から習得しておる。書物があれば、さらに研鑽を深めることが出来るであろう。」
ただし、この地域での神学は西欧と異なり、僧侶を養成したり仏法について研究するもの。で、一般教養? パンキョー?
【コアルーム】
「確かに、このダンジョンには医者の道具は何も無いな。」
と召喚可能な品物をざっと確認したサピエン先生。
「事務備品として薬箱くらいは調達できますが、『図書館』は診療所ではありませんからね。第三層群にはレストランがありますが、食材の召喚は出来ませんでした。カフェとかがある図書館は多いのですが、そういうのは『図書館』の機能には含まないいのでしょう。」
カフェ付きの公共図書館を召喚してパンやコーヒーを大量に入手する。なんて手は使えない。例えば、商都梅田の各層群には無数の店があるので、もし、それらの店の商品を召喚出来るなら、簡単に地域の経済的覇権を握ってしまう。現実には商都梅田の本質は「駅」なので、産物は切符やIC乗車券。電車も召喚出来そうだが、どうなんだろうか。
「マリーさん、第三層群、医学部がある大学の図書館なのに医務室無いんだな。」
「普通はキャンパスには多数の建物がありますし、別に『保健管理センター』などがあるのでしょう。ま、マスターもわたしも『設定』では大卒ですが、実際には小学校も通ったことはありませんからね。」
最初からそういう設定で登場していて、異世界召喚では無い。輪廻はしているかもしれないが。




