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021:第三層群

(新設の第三層群の紹介)

 第三層群は、地上11階地下4階、延床面積37,000㎡の大学図書館。

 図書館ダンジョンでは地下書庫が亜空間に消えたりはしないため、地下室もそのまま既存層群(group)の上に積み上げる。第三層群は既存の図書館より平面積がかなり大きいため、ダンジョン構造物の柱により空中に支えられている。さらに、地表から11階部分が第三層群の1階であり、図書館前の広場が空中に広がっている。なんともアンバランスで不細工なので、いずれは下部に中小規模の居住区を召喚して埋めたいところ。図書館しか召喚出来ないので、適当な図書館を召喚して住居に転用する訳だが。

 もちろん、地表から上階まで、中・大規模ダンジョンで一般的な層群(group)間エレベーターを設置したため移動は容易。これは図書館ダンジョン特有の設備では無く一般に「転送陣」などと呼ばれている物だが、物理的にはただのエレベーターに過ぎない。



【第三層群地下3階】


 第三層群地下3階は地上からだと8階になるが、本来は地下書庫で、空っぽの本棚が一面に並んでいる。

「マリーさん、本は無いんだな。」

「蔵書は別途召喚となりますが、この図書館の蔵書が、分館の蔵書や研究室で私物化されている物も含めて召喚出来ます。」

「だいぶ増えそうだな。」

「第一・第二層群は平凡な地方の公共図書館なので、専門書の蔵書は手薄でした。」

 もちろん、複製召喚なので、どこかの世界のどこかの大学図書館が消えたり、蔵書が紛失したりはしない。

「ただ、この本棚を全部埋めるとなると……。」

「50万冊は収蔵できますね。地下書庫はもう1フロアあるので100万冊ってところでしょうか。上層の開架書庫は居住区に転用しますから考慮しないとして。」

「毎日10冊読んでも300年近くか。」

「図書館ダンジョンなのでダンジョンエネルギーを使うことで速く読むことも可能ですけど、わたしは本ばかり読んでいる訳にもいきませんからね。いずれは帝国図書館(国立国会図書館のこと)を召喚して数千万点の蔵書を全て召喚することも考えてはいますが。」

 蔵書数1000万冊級の大学図書館なら職員数も多いので、仕事せず終日本を読んでいるニート司書が混じっていても問題無く廻るだろうが、3人しか居ない図書館ダンジョンにはそんな余裕は無い。

「それが最終目標と?」

「当面は。です。あと、帝国図書館もアメリカ議会図書館も大英図書館も中国国家図書館も、個々の建物は概ね150m四方に収まりますから、地上部の広さは多少余裕を見て200m四方程確保します。」

「え、全部召喚するつもりなのか?」

「あくまでも、そうなっても良いように考慮する。というだけです。洞窟や塔の場合、ダンジョン自体の維持にはさほど多くのエネルギーは必要ありませんが、この図書館ダンジョンは、世界のコアからのエネルギーで電気を代替していますから、どうしても維持費が割高になります。」

「普通のダンジョンはエネルギーに余裕があるのか?」

「『ダンジョン大百科』によると、例えば地下の大空間に森を作り明るくするとか、温泉など火山地帯を設置すると、たちまちエネルギーは逼迫します。もちろん、そういうのは電気では無いですが、わたしはどういう原理かは知りません。

 でも、通常は大量のモンスターを動かすのにエネルギーを使います。名前付きの場合は食糧の召喚なので間接的になりますが。」

「このダンジョンはモンスターは3人しか居ないな。」

「コアルームを固有法則で『関係者以外立入禁止』に出来ますから防衛用のモンスターは要りませんし、産物は本や新聞なのでドロップアイテム用のモンスターも要りません。」

「というか、召喚出来ないから。」

「牛頭馬頭、例えばミノワッカなら戦力になりますし、牛肉と牛乳をドロップさせることも可能でしょう。ただ、牛飲馬食って言いますし、餌に相当エネルギーを喰われそうです。水だって当然エネルギー使いますからね。」

「水もコアからだったか?」

「水と空気は大地の奥深くから供給されますが、もちろん運ぶためのエネルギー源は世界のコアです。」

「空気?」

「空気が供給されないと、洞窟型ダンジョンは酸欠になってしまいます。それに、この世界自体不毛ですから、ダンジョンから空気が供給されないと、いずれみんな窒息してしまいます。」

 なお、このダンジョン、ガスは供給されないし火は使えないので、石油ボイラーやガス給湯器・ガス空調はただの鉄屑に過ぎない。



【第三層群1階】


「ここが正面玄関か。11階相当って訳だな。」

「入り口前には広場がありますが、フェンスが無くて危険なので、ダンジョンエネルギーに余裕が出たら、何かをダンジョン構造物として取り付けましょう。植え込みと池は元は花壇でしょうね。植物ありませんが。」

「レストランもあるな。」

「料理が召喚出来れば良いのですけどね……。今は出来ませんが、本質的に無理なのか、規模を拡大したら出来るのか。

 ただ、商都梅田には大量に店があるのに、別に商品が流通していないってことは、かなりの大規模ダンジョンでも付属施設にある物は召喚出来ないのでは無いかと。何か簡単だけど気付きにくい条件があるのかもしれませんが。」

「単にとんでもなく距離が遠いとか?」

「この図書館は日本文化圏ですし、商都梅田も同じですから、そんなに遠くは無いと思います。」



【第三層群屋上庭園】


「屋上庭園ですね……何も植わっていませんが。」

「生物は直接召喚できないんだろう。」

「確かに、図書館召喚するときに、中に居る利用者とか召喚しても困りますからね。複製ですから元の世界に戻したら2人に増えてしまいますし。」

「ただ、本は召喚出来ても人間に身についた技能は召喚出来ないってのが問題だな。」

「それは完全にマスターが悪い。です。」

「コアルームはこっちに移設なんだよな。」

「屋上と高さを合わせてあり、元の空調機スペースの上ですね。高さが高くて収まらないクーリングタワーはコアルームの屋根に移してあります。高い場所から見たら屋上の上に見えますが、この近くにそういう場所はありませんから問題ありません。」

「第一層群のコアルーム跡には穴が開くのか?」

「そもそも、元々図書館に『コアルーム』なんて存在しません。これまでのコアルームも、第一層群の横、通用口に取り付けていただけです。普通の公共図書館に立派な居住スペースなどありません。」

「最初からあったから気付かなかった。」

「もちろん、ダンジョンによっては最初からある施設がコアルームになる場合もあります。『ダンジョン大百科』によると、商都梅田では元の駅長室がコアルームになっています。ですからコアルームは多数ありますが、どうやら居住性は仮眠室がある程度のようですね。」



【第三層群屋上展望台】


 屋上から階段を上がり、塔屋の上に展望台がある。

「ここに土を持ってきて、ダンジョン組み替えで世界樹を植えました。」

「24階か25階相当ってことか。」

「このダンジョン自体が丘の上にありますから、およそ200mの高さになります。丘本体に邪魔されない十分な高さがありますから、この世界が平面または十分大きな球体なら、理論上は周囲40~50kmを監視可能です。もちろん、カメラの解像度の問題がありますが。」

「先日みたいに賊が来ても、警報を発する時間はあると。」

「相手が歩兵なら前日に分かりますが、警報だけですね。今後畑を広げていきますから、作物を守る手段も検討しなければなりません。それに、確かに今のところ馬すら確認されていませんが、戦車や飛行機を持っている勢力が無いとは断言できません。」

「ダンジョン構造物は丈夫だが、戦車には耐えられるんだろうか?」

「さぁ。恐竜の体当たりには耐えるそうですが、竜って所詮大きな鳥ですからね。」

「竜騎兵か。」

「いいえ、マスター、竜騎兵というのは『鉄砲で武装した騎兵』で、乗っているのは馬でも竜でも何でもかまいません。

 ただし、物理的に飛行出来ない生物を飛ばすにはダンジョンの固有法則が必要で、固有法則はダンジョンの影響圏内でしか機能しませんから、竜が飛んで襲って来る心配は無いでしょう。理論上は、大型翼竜を生きたハンググライダーとして使うことは可能でしょうが。」

「ここに、展望台にあるような望遠鏡とか設置できないのか?」

「もちろん可能ですよ。望遠鏡が入手出来れば。」

「そこが問題なんだよな。図書館の備品って、どこまで許されるんだ?」

「分かりません。例えば大英図書館は元々大英博物館の付属施設ですから、どこかで博物館が召喚可能になるかもしれません。そもそも、大学図書館自体が大学の施設ですから、附属病院とか実習工場とか農場とか召喚出来るかもしれません。ただ、現時点では何とも。」



【コアルーム】


「マスター、課題が見えてきましたね。」

「でも、本だけでは限界があるが、すぐにナントカなる訳でも無い。か。」

「まずは医者の召喚ですね。」

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