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020:さらなる増築、安くて高い大学図書館

【コアルーム】


「マリーさん、必要なのは、農学部と医学部を持つ大学図書館で、今のダンジョンで召喚可能な規模で、できるだけ高さを稼げるもの。だったな。」

「コストが安くて背が高い大学図書館ですね。でも、校舎は高層でも大学図書館って大抵は低層建築なんですよね。そもそも図書館は低層の方が利用しやすいですから。ダンジョンとしては高い方が効率が良いのですが。」

 高低差がある方が世界のコアからの供給エネルギーが増える。

「召喚コストって何で決まるんだ?」

「図書館ではありませんが、『ダンジョン大百科』の『異世界学園の召喚』と言う項目によると……。」

「つまり、どこかに学園ダンジョンがあるのかな。」

「でしょうね。まず、多くの世界に存在している学園ほどコストは下がります。逆に一部の世界にしか存在しないと高コストです。世界によって細かい差異はあったりしますが、どの世界から召喚、厳密には複製するかは現状では指定できません。」

「どこにでもあることが重要。ということか。」

「規模が大きく知名度が高い学園は割高になり、小さく無名だとコストは下がります。」

「本だとベストセラーほど安上がりだった気が……。」

「本の場合、ベストセラーは1つの世界に何十万・何百万部、物によっては億越えるほど存在しますけど、特定の学園は1つの世界に1つですからね。」

「なるほど。」

「文化圏の合致、例えばこのダンジョンは日本語圏ですから、日本で日本語で授業を行う学園は容易に召喚出来ますが、インターナショナルスクールは割高で、イギリスのパブリックスクールなどはとてつもなく高くなります。」

「我輩でも名前を知っているような外国の学校は割高になるのか。」

「最後に、既にダンジョンに異世界召喚で関係者、生徒とか教師とか卒業生が多数居ると、召喚コストが下がります。『ダンジョン大百科』によると、高校生をクラスごと召喚し、その後で学校を召喚する。という方法があるとのことです。もちろん複製召喚ですから、元の世界には学校も生徒もオリジナルがそのまま残っています。ただし、事故に伴う召喚など、場合によっては元の世界の生徒は死体だったりするそうですが。

 また、学園を召喚してから、その後に生徒を召喚した場合も、召喚コストがキックバックされ、ダンジョンエネルギーが少し回復するとのことです。」

「つまり、どういうことだ?」

「おそらく、あらかじめ夏目漱石や森鴎外や芥川龍之介や(戦前から活躍しているが死後70年経っていない文豪は伏せる)を召喚していると、東京帝大の図書館を安く召喚出来ると思われます。」

「でも、このダンジョンだと、牛頭馬頭でも修羅でもだめだな。……待てよ、競馬で身を持ち崩したら馬頭に転生したりしないのか?」

「どうやら、大抵は競走馬に転生する模様です。それに、既に馬頭は召喚出来ませんから。」

「異世界召喚ではなく、卒業生という『設定』のキャラクターではダメだろうな。」

「さすがに、例えば赤シャツや小川三四郎や長井代助を召喚して。という訳には行かないでしょうね。それも、このダンジョンでは無理ですが。」


「つまり、大学図書館だと……。」

「一部の世界にだけ存在する大学は割高です。知名度が高いと割高です。英語授業の大学は割高です。逆に言えば、多くの世界に存在し、知名度が低く、授業が日本語……これは大部分に当てはまりますが、そういう図書館は安上がりです。関係者の件は考慮不要ですね。」

「我輩は工学修士だが、実際に大学を卒業している訳では無いからな。」

「わたしだって、国家公務員Ⅰ種試験を合格して秘書の審査認定を受けているということになっている以上、大卒という『設定』ですけど、小学校すら通ったことはありません。」


「で、話を戻すが、大学図書館はどれも低層、でも高さを稼がないとエネルギー収支が合わなくなり破綻する。か。」

「その通りですね。」

「大学がポチだかタマだかに移転していない世界とかは? 東京都心なら土地が無いので高層化するだろ。」

「多摩ですね。多摩県には多くの大学が東京から移転しています。でも、農学部と医学部の両方、となると案外ありません。それに、一部の世界にしか無い図書館は召喚コストが割高で、特に東京都市圏、東京市や横浜市のみならず神奈川県とか多摩県とか埼玉県とか千葉県も含め東京と言うだけで知名度が高いので、コストが合いません。」

「早麦田大が医学部と農学部を持つ世界とか。大学自体は大抵の世界にあるだろ。それこそ大熊重信が維新の混乱期に暗殺でもされていない限り。」

「そもそも低層ですし、早麦田とか京王とかコストは論外です。さすがに副澤諭吉が(父も兄も長生きして)中津出身ではなく大阪人だったとしてもダンジョンエネルギーは足りません。……マグロ大学の図書館が地上12階地下1階で……これも東京では無いのにコストが高すぎますね。なまじ有名なだけに。」

「高さだけで見たら?」

「条件問わないなら、横浜医科大学が地下2階地上21階ですが、どの世界でも農学部無いんですよね。ただ、元々ホテルなので『大学図書館』として召喚可能かは怪しい所もありますが。」


「例えば、一部の世界で医学部が無かったら、どういう問題がある?」

「医学書のコストが多少上がりますね。書籍の流通量など、いろいろと考慮すると、むしろ一部の世界で農学部が無い大学の方がトータルでは安上がりでしょう。」


「で、召喚可能な大学図書館ってどの程度なんだ、現状」

「サル退治で保有エネルギーは増えたとはいえ、今でも無理なのは、東京圏の大学の多くと有名地方私学、地方でも帝大、これは世界によって旧が付いたり付かなかったり、あと、それなりに有名な地方国立大ですね。要は、マスターが名前を知っているような大学は基本的にコストが足りません。」

「教室や研究室を伴う複合施設の一部だったら、その施設ごと召喚できるのか?」

「召喚出来るのは、主として図書館と認識されてる建物。ですね。高層ビルの一部フロアのみ図書館、って場合は召喚出来ません。都市型の大学はこのパターンも多いので困ります。第二層群は『会議室を伴う市立図書館』なので召喚出来ました。」



【コアルーム】


 全体会議。といっても4人しか居ない。

「医者と農学者が必要なので、第三層群は医学部と農学部を持つ大学の図書館を召喚する。」

「マスター、どうせなら、工学部もある大学にしないか。コンピューターのプログラミングどころか、配線を物理的に繋ぐ必要もあるから、電気工学・電子工学・情報は必要だ。それどころか、機械もいろいろあるから機械工学、ダンジョンそのものは建物なので建築学。今後のことも考えたら化学系も網羅して欲しい。」

「医学部と農学部の両方があるような大学なら、工学部は大抵あるでしょうね。」

 8割くらいは。

「メードとしては、生活……つまり、家政学部があると良いですね。」

 家政学は、開拓国家でありメードが足りない19世紀のアメリカで、主婦が家事をナントカ廻すために発展して学問として成立。なので、実際には全く逆。

「さすがに家政学部は小規模な女子大にしか無いでしょうし、もし機会があれば別途召喚することにしましょう。」

「マリーさん、で、どの大学図書館にします?」

「医学部・工学部・農学部が全部ある大学のリストは……帝大と私学はどれもダンジョンエネルギーまったく足りませんし、国立大も一部は無理ですから、召喚可能なのは地方の国立大学ですが、図書館は3階とか4階とか……。」

「建物自体の高さも必要なんだよな。」

「既存と合わせて20階以上にして世界のコアからの獲得エネルギーを大幅に増やせないと、おそらく維持費で疲弊してしまいます。」

「マリーさん、ならば『農学部は無いけど、一部の世界では農学部が有る大学』だと?」

「召喚可能な範囲だと……。そうですね。これなんか農学部は無い大学ですが、世界によっては農学部を設置している場合もあるし、このへんで妥協しますか。地下足したら14階は越え合計20階に達しますし。規模の割に妙に割安とはいえ、コスト的にはかなりギリギリですが。」

「ヨシ!」

 なお、当然ながら特定学部の有無は世界により異なりますので、お手元の高校生向け受験ガイドとは異なる場合があります。

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