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018:海賊襲来……山賊じゃないのか、それ

【コアルーム】


「マスター、ダンジョンに近づいてくる未確認の武装集団がいるぞ。」

 コアルームのパソコン画面を指してミントが言う。

「これは……代官でも商人でも冒険者でも無いですね。病人だらけの、この非常時に。」

「人数は10人余り。うち半数ほどが頭に陣笠・胴のみの鎧・背には槍・腰には刀。残りは荷物を背負ったり大八車を引っ張っている。おそらくかしらと思われる男が1人。ただし兜は被っていない。いずれも装備は小汚い。」

 監視カメラの解像度を最大にしてミントが報告する。

「……山賊っぽいですね。すぐに畑に居る入植者の皆さんを避難させましょう。幸い、まだ盗られて困るほど作物は育っていません。」


「皆さん、図書館ダンジョン都市に山賊が接近しています。速やかに建物内に避難して下さい。」

 屋外拡声器を使いマリーが呼びかける。本来は役所から広報するものであるが、ミントが配線を細工してコアルームから放送可能としていた。



【図書館ダンジョン近郊】


「おかしら開拓村の連中に気付かれたようです。山賊が襲撃したと言っています。」

「船長と呼べ! で、この距離で気付かれただと。」

 開拓村は高さ60尺(100m)ほどある丘の上とはいえ、図書館ダンジョンは別に石垣の上の乗っている訳でも無いので、平凡な天守閣より視界は狭い。10町(1km)も離れた丘の麓の物陰で気付かれるはずは無い。騎馬武者が居るような大軍ならともかく。

「強襲しろ。所詮は開拓村。どうせろくな戦力は居ない。この高崎たかさき海賊団を山賊呼ばわりした罪、万死に値する。」

 男達はゼーハーと息を切らしながら丘を登り、雑兵達はダンジョン玄関の扉を槍を全力で突くが、槍は折れ体はガラス扉に叩き付けられた。



【図書館ダンジョン玄関】


「何だこの透明な板は。」

 かしらは問うが、知っている雑兵が居るはずも無い。もちろん頭もダンジョンくらい知っているが、この近辺にガラス扉を持つダンジョンなど無いため、この建物がダンジョンだと気付くはずもない。


 玄関の内側、玄関ホールに出てきたマリーは、膝下の地味な濃灰色のスカートに白いシャツという比較的動きやすい服装。

「誰です? 私の家の玄関で騒ぐ野蛮人は?」

「高崎海賊団の船長、高崎上野掾たかさきこうづけのじょうだ。食糧を全てよこせ。」

「高崎? サルですね。」

 玄関の内側からマリーが屋外拡声器で返事をする。

「サル? なぜだ?」

「高崎(山)に居るのはサルって決まっているでしょう。」

 この世界に高崎山があるかは不明だが、少なくとも上野掾は知らない。

「そもそも、海賊なら、船はどこにあるのです? 大地をえっちらおっちら歩いているのはサル山賊に決まっています。

 それに、せめて上野介なら『会いに来るアイドル』AKO47をけしかける価値はありますが、上野掾なんて、ね。」

 マリーの侮蔑に山賊は激怒する。なお、家に来るアイドルは首を獲りに来る訳だが、上野掾は忠臣蔵もアイドルも当然知らない。

「出てきやがれ、臆病者め。妙な砦に籠もっていないで出てこい。さては貴様、小汚い小山下野介おやましもつけのすけの一味か! 暗殺されるか坊主になるか選ばせてやる。」


 山賊が完全に激高した所で、玄関扉が開く。

「者ども、我に続け!」

 山賊、いや海賊達は玄関ホールになだれ込む。しかし、玄関ホール内側のガラス扉もダンジョン構造物であり、施錠してしまえば壊すのは容易ではない。コアルームからミントが遠隔で玄関扉を閉めると、賊達は閉じ込められた。

 玄関ホール内には食糧はもちろん、価値のある物は何も無い。全てあらかじめ搬出済み。

「見張りを残す知能すら無いとは、情けない限りですね。やっぱりサルのようです。二の矢三の矢が無駄になってしまいました。」

「マリーさん、閉じ込めたのは良いけど、どうします?」

「しばらく玄関は使えませんし、コアルームに関係者以外を通すことも固有法則により出来ませんし、窓から出入りして貰いましょう。」


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