013:第二の紫蘇、スーパー薄荷召喚
【コアルーム】
「困ったことに、2番目の図書館のコンピューターが『BTRON』なので、このコアルームと接続できません。どうやら別の異世界から召喚してしまったようです。」
「さすがに、別々の世界のコンピューターの繋ぎ方。なんて本は無いだろうな。」
「それどころか、本が『どの』世界の物か特定出来ませんから、参考書は参考になりません。」
「そんな参考書、燃料にしかならないぞ。」
「しかも、こんなこと書いてある本まであります。」
『世界大戦後ドイツは解体され、東端部のプロイセン・ポーゼン・シュレージエンは「プロイセン連邦」となった。
ポーランド国境沿いで元からユダヤ人が多かった地域だが、シオニズムの失敗後さらにユダヤ人が集中。旧ドイツ諸国は「二度と戦争が出来ないように」国際連盟からそれぞれ面倒な植民地を宛がわれたが、プロイセン連邦の植民地も不毛の地であり、ユダヤ人の植民地送りも不可能だった。
彼らが20世紀中期~後期にかけて計算機科学の中心を担ったため、電算機の制御機構はイディッシュ語となっている。』
「わたしは英語やフランス語なら使えますが、イディッシュ語で動くコンピューターなんて出てきたら手に負えません。」
「コンピューターに詳しい紫蘇??でも召喚するとか?」
「確かにネットワークプログラマが必要ですね。あと、物理的に仕様が異なる端子を加工するとか、電子工作も必要でしょう。」
そのために召喚された紫蘇は、中性的な、やや背の低い人物。短い髪は明るい緑の金属光沢(構造色)で、目も鮮やかな明るい緑。
「種族はミント、名前はありません。」
「種族がミントなら名前もミントでヨシ!」
ダンジョンコアが
「マスターがモンスターをネームドに設定しました。モンスター『ミント』の個体名を『ミント』に設定します。種族名を個体名としたため、ミントの追加召還は出来なくなります。」
と告げる。
「この凄腕の凄腕のスーパー薄荷ミント様が来た以上、このダンジョンをミント畑にしてくれる!」
召喚されたのはハッカーではなくハッカ。
「はじめまして。このダンジョンの側近書記、マリーです。このダンジョンの2つの層群(group)が異なる異世界から召喚され、コンピューターに互換性が……そうだ、ミントはスーパー薄荷なら、いっそ蔵書目録を丸ごと作ってくれないかしら。」
「何だそんなこと。てっきり鳥類キャリアによるダンジョン間通信システムでも構築させられるのかと。どうやら通信網は無さそうだから。」
「鳥は召喚出来ませんので。生きた伝書鳩が付録の雑誌とか無さそうですし。」
マリーが真面目に回答するが、書籍・雑誌・新聞の流通網で動物を運ぶのは困難。例外的に存在するかもしれないが、本の召喚コストが発行部数で決まる以上、かなり割高になる。
「所詮、仕様が違う機器によるイントラネットの構築だろ。蔵書目録って言ってもOPACですら無いな。オフラインだから。」
「しかも利用者開放もありません。この世界、識字率が極端に低いですから。」
世界全体かこの付近だけかはさておき。ただ、商都梅田でも第五層群「渋谷」地下五階の「東横キッズ」などは、ほぼ非識字。え、第一層群「梅田」の識字率も怪しい?
「ただのACか。交流なのに交流しないとは如何?」
何のかんの言ってミントは2つの図書館のシステムを統合し、蔵書目録も完備した。ただ、ミントには重大な欠点が……。
(明日は休載です)




