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100:最高会議幹部会

【コアルーム】


 使者達が帰り一段落したある日、全ての紫蘇(修羅)がコアルームに集合する。

「それでは、最高会議幹部会を始めます。」

「マリー、労農ロシアの『評議会連邦最高会議幹部会』ではあるまいし、その名前なんとかならない?」

 ラージャが言う。

「ちゃんとした選挙で選ばれていないので議会ではありませんし、閣議と名乗るほどの実態もありませんし、しかたありません。それに、わたしのマルサス・ダーウイン主義も、労農ロシアのマルクス・レーニン主義も、語感はなんとかく似ていますし。」

 マルサス・ダーウイン主義とは、社会ダーウィニズムと優生学と人口抑制を結合させた、人間の品種改良によって『人類の進歩と調和』を目指す思想。世界大戦でドイツが解体され、ナチがバイエルン王国の選挙で勝てず第二次世界大戦もなかった世界では、優生学はタブー化せず人口抑制論と結合した。日本も、満蒙開拓移民も太平洋戦争も無く人口は過剰であり、マルサス・ダーウイン主義にも一定の支持がある。

「別にこのダンジョンの理念では無いけどな。」

「マスター、理念は『物心共に健康で豊かな生活を実現する』ですから、マルサス・ダーウイン主義も方向性に大差は無いでしょう。」

「マリーの思想的立場は脇に置いておいて、マスターさん、六者会合は無事終わりましたね。これで周辺諸国が組織的に攻めてくる可能性は減りました。」

 と、ラージャ。

相撲すもうの坊さんは、どうやらこのダンジョンの危険性に勘づいていたようだが。」

「全員、いえ織田信治(のぶはる)殿以外は気付いているであろう。ただ、天下統一でも目指すならこのダンジョンは障害になるが、そうではない以上、別に敵対する理由も無いからな。」

 サピエン先生が続ける。織田ではなく小田なのであるが。


「今後の方針だけど、夏には移民が万単位で来るだろうから、田畑を最大の速度で増やし、稲は苗作りが間に合わないけど秋までに収穫出来る野菜をとにかく植える。ということで良いかな。そのために、ミントさんの分身を増やすか、紫蘇(修羅)を増やすか。」

 ダンジョンマスターが方針を提案。

「両方必要です。サピエン先生は多忙ですし、ミントさんがコアルームに常駐し全体を制御することを考えたら、5方向で同時に開発を進めるために最低限名前付き(ネームド)モンスターはもう2人必要です。測量チームを5つにするならミントさんの分身は15体は欲しいですから、内勤も含め20体くらい必要でしょう。」

 アンは2名の増員を主張。

「確かに、それくらいは必要でしょうね。ただ、会議の適正人数は5~6人程度ですから、人数が増えると今以上に会議が迷走しそうですが。」

 マリーも同意。

「で、専門分野はどうする。必ずしも狙ったとおりに召喚出来るとは限らないが。」

「機械に詳しい者が至急必要です。出来れば機械、化学、土木、金属材料と4人欲しいくらいですが。」

「人口が増えるから、医者をもう一人増やす。その後、歯科医と薬剤師と看護師か必要だ。」

「警察官と裁判官。でしょうか。軍事と警察は分けるべきですし、裁判も独立する必要があります。」

「マリーさん、ラージャ将軍を召喚した時、軍人を召喚しようとしたけど士官学校ではなく法学部だったし、メードさんも大卒だし、やっぱり召喚に制約がありそうな気がする。」

「単純に、大卒しか召喚出来ない。という制約はありそうですね。もちろん設定上の話ですが。」

 マリーが続ける。

「となると、警察官は不測の事態を起こしかねないかな。なら機械と医者、ただ医者複数というのも役割が被るし、そもそも医者だと開拓に従事するには多忙すぎるか。」

「機械技術者と薬剤師、でしょうか。その場合、工学部と薬学部となります。」

 アンが提案する。

「それっぽいシソ科植物を選んでこじつける。薬学部は薬草なので候補はいくらでもあるけど、機械か。いっそ、コリウスとかサルビアとかアジュガとか観賞用の種類を選んでみるとか。」

「ムラサキシキブ……はやめたほうが良いでしょうね。平安時代の紫式部を召喚しようとするも学歴の問題があって何が起こるか分かりません。アジュガも和名はセイヨウジュウニヒトエですからそれに近い末路になりかねません。」

「なら、コリウスとサルビアで行くか。会議終わったら召喚を試みよう。機械ならミントさん、薬剤師ならサピエン先生の下に付いてもらえば、会議の人数が際限なく増える心配も無い。万が一、予期せぬ大失敗が起きたら追加でもう1人……くらいは行けそう?」

「482層群ありますから。482人なんて訳には行きませんが、あと3~4人は大丈夫でしょう。」

 庭のローズマリーは巨大化して毎年大量に花が咲くのですが、なぜか種で増えたのは見たことがありません。もちろん植物が人口調整をするはずは無く、自家不和合性だけど付近にあるローズマリーが全てクローン植物だからか、不稔性の品種なのでしょう。

 これを曲解し、マリーは「マルサス・ダーウイン主義」という思想を持つという設定にしています。

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