6
「ザオラル、今度の休日は空いてるだろうか」
「休日ですか?」
発覚から数日後。サシャは各部を周り集めてきた書類をラディムに手渡す際にそのようなことを言われた。
ここ数日、ラディムがなにか言いたげにしていたのは気づいていたがあえて尋ねることはなかった。重要なことであればすぐに言うだろうし、言いづらそうということは例の件である可能性もあるだろうとサシャは当たりをつけていた。けれど、現実に言われたのは休日の予定。
予想外のことにきょとんとしてしまうのも仕方がないことだろう。
予定、と呟いたサシャに慌ててラディムは言う。
「よ、用事があるのならば、無理にとは言わない。ただ、空いてればいいなと思っただけで」
「……なにか、ご用でも?」
「あー、やー、なんだ、その、共に出かけられないかと思ってな」
モゴモゴとそう言い、耳の下を掻きながら目線をそらすラディム。ほんのりと耳が赤く色づいていたのだが、その意図を考えることに必死なサシャは気づかない。ただただ、返事をどうしようかと考えていた。
今回予定が空いてないといえば、また後日同じように尋ねられることになるだろう。あのもどかしい時間も合わせて。それに恐らく例の件も絡んでくる可能性だってある。引き延ばすだけ面倒かもしれない。
「別に問題ありませんよ」
「本当か。感謝する。あ、服装はできれば町娘風にしておいてくれ。市民区画に行くからな」
「はい? 町娘、ですか」
「だって、君、したことないだろう? それに少なからず君は憧れていただろう」
市井調査の時など共に仕事に向かった際に町でよくサシャは女性を見ていた。当初は女性を値踏みしているのかと思ったが次第にそれは憧れを抱いているように思えるようになった。何故だろうと疑問に思っていたことはこの間のことでストンと胸の内に落ちた。
だから、ラディムはそう指定をした。それだけのこと。けれど、受けた当の本人は気づいていなかったようで、目を大きく見開いていた。
「だから、してみるといい。中性的な顔立ちであるし、きっと似合うはずだ」
驚いているサシャにこちらも気づいていないため、そのようなことを言う。そうするなど言っていないのにすでに彼の中では決定してしまっているようだ。
「か、考えておきます」
それだけをいうので精一杯だった。