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「その後、叔父と相談し、子がいないこともあって養子に入りました」
跡継ぎが必要であるからとズビシェクには説明し、納得させた。長男をザオラル家の跡継ぎにするという契約書に署名させ、養子縁組の紙も二枚署名させた。アレシュはとてもいい顔でズビシェクに礼を言った。ただ、もうじき一族の願いが叶うと語るズビシェクにはなにも届かない。それでよかった。
「ジャプカ卿もその代々の当主方も夢見るばかりで気づいてないのです」
「……そうか。それで弟君」
「ヴァシィルは落ち着いたところで勉学に励みたいという理由で養父たちの家で生活してます。僕もヴァシィルも一時もあの家にはいたくなかったので」
サシャは卒業を待たずして軍へ入隊。元々、兵科に入っていたので今までの成績を含め、卒業を待たずに入隊することができたのだ。その代わりとして、兵科卒業時に与えられる下士官からではなく、一兵卒に近いところからのスタートとなってしまったが。それでもわずか四年で佐官まで上り詰めた。入隊時にはすでに姓を今のザオラルへと改めており、住処も兵舎になっている。休みの日にはザオラル家へと戻り、家族の時間を過ごすのだという。なお、ヴァシィルに関しては学園卒業まではジャプカの姓を名乗るつもりである。それは面倒事を回避するための予防策。家族で話し合った際に決めたことだった。
「戻るという手もあったのではないか?」
「ありましたね。ありましたが、ヴァシィルのことを考え、伏せたのですよ。それに今更、どう振る舞えばよいのかわかりませんから」
あまりにも男として生きてきた時間が長すぎたのだ。そう瞳に寂しさを宿らせ、微笑むサシャにラディムは辛そうに眉を寄せる。
「あぁ、軍団長、気にしないでください。これでも、補佐官業を楽しんでやっていますので」