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「この場をもちまして、長年皆様の目を欺いていたことを謝罪させていただきます。正直なところ、この件に関しては墓場まで持って行くつもりでありました。しかしーー」
ラディムと目を合わせ、どちらかともなく微笑む。
「夫と出会い、乞われ、公表することに決めたのです」
幸せそうに微笑み合う二人に言葉を発せられなかった。けれど、すぐに様々な声が上がっていく。
「令嬢教育をされていないのに公爵夫人が務まるのです?」
「別にそれはこれから学んでいけば良いのではありませんか」
「失礼ですが、夫人とは夫のために家を守らねばならないのです。ですから、これから学ぶというのは遅いのです」
そんなことも知らないのですねと強気な令嬢の後ろで同じ考えなのだろう少女たちがクスクスと笑っている。それにサシャはにこりと笑う。
「そうですか。ですが、貴女の母君も他のご夫人方も、これまで何も失敗しなかったということはないでしょう。失敗して、何がいけなかったのか、それを学ばれて今があるのではありませんか? であれば、これから学ぶということは遅くないはずです」
「付け加えさせてもらうならば、サシャはすでに我が屋敷に迎え入れていて使用人たちに女主人としても信頼されている。君たちのように令嬢教育を受けていても身についていないものには到底無理だろうな」
君たちが話を飛ばしたのはすでに公爵夫人なんだからとラディムは目を細めて告げる。彼女たちがハッと気づくときには青褪めた両親たちに引き摺られて後に連れて行かれていた。
「親を謀るとはどういう了見だ!!」