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「ラディム・クンドラート公爵、並びにサシャ(・・・)・クンドラート公爵夫人ご到着です」


 紹介の言葉にざわりと空気が揺れる。それはラディムの名で起こったことではなく、サシャの名前で起こったことだった。貴族が知るサシャとはサシャ・ジャプカもしくはサシャ・ザオラルという侯爵令息(・・)しか知らないからだ。突然、公爵の妻として出てきたサシャとは誰ぞやと注目が集まる。そして、ラディムの腕を取り、現れたサシャの姿に皆息を呑む。ラディムの色で飾られたサシャは凛とした美しい人だった。親世代の中には彼女に当時高嶺の花と言われていたイルジナの影を見つけたものもいた。


「大丈夫か」

「舐めないでいただきたいですね。僕は貴方の補佐官であり、妻ですよ」


 小声で答え、ふと笑みを浮かべるサシャにラディムは無理だけはしてくれるなよと苦笑いを零す。そうしているうちに王族も会場に入ってきた。当然、知らなかった王子たちは叔父の妻の姿に驚いた様子だった。

 けれど、そんな息子たちの様子を気にした様子もなく、カシュパルは感謝と祝いの言葉を口にした。それから、息を一飲み。口を開く。


「突然で驚いたものも多いだろうがこの場を持って発表させてもらおう。我が弟、ラディムが婚姻を結んだ。相手は皆も存知であるサシャ・ザオラル侯爵令嬢(・・)である」


 カシュパルの言葉にえっ!? と困惑の空気が広まる。


「ん? 何か間違ったことを言ったか?」

「陛下、御前失礼いたします」

「よい、義妹となるのだ、気にするな」

「感謝いたします。それではこの場で(わたくし)めに説明をさせていただいてもよろしいでしょうか」

「あぁ、そうか、そうだな。うむ、構わぬ」


 ラディムも連れ、前に出たサシャは養母に叩き込まれた言葉遣いでカシュパルに提案をする。それに困惑する理由に思い至ったカシュパルは即座に許可を下ろした。それに感謝を述べると国王を背にラディムと共に会場に向き直る。


「この姿ではお初にお目にかかります。改めましてサシャ・クンドラートと申します。旧姓はザオラル。現在に至るまで軍部にて軍団長の補佐官をしております。幼い頃より、母イルジナの意向で男として育てられました」


 母イルジナの願いのため、彼女の友人であった陛下にも協力をいただいておりましたとサシャは説明をする。そんなサシャの後ろではカシュパルが妻であるダヌシュカに叩かれていた。


「聞いてませんけど」

「すまん、イルジナにお前にはいうなと言われてたのでな」

「あぁ、もう、ほんと、なんてこと。知ってたら、イルジナの代わりに可愛がったのに」

「いや、むしろ、それをイルジナは心配してのことだったんだろう」

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