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「……ラディム様、おかしいところはないでしょうか」
「あるはずがないだろう。いつに増して綺麗だ」
式典当日。かっちりとした軍服ではなく、細かな金色の星を散りばめた紺碧のドレスを身に纏うサシャは夫であるラディムに確認するもその言葉は軍服を来ている時も町娘風の服装の時とも変わらぬ言葉。それも全て本気で言っているのだから、タチが悪い。婚約を飛び越え、一夜にして夫婦になった二人だったが、その関係は今の今も極秘扱い。けれど、人のいないところではこうしてラディムはサシャに愛をこれでもかとばかりに語る。初めこそ戸惑っていたサシャではあったが、次第にそれを受け入れられるようになっていた。現に今の言葉にもまた同じことを言ってると笑ってしまうほどだ。
「やっと、サシャが俺の妻だと言える」
美しく着飾ったサシャ。短かったプラチナシルバーの髪も今は長くなり、編み込みを残したシニヨンヘアにしている。飾りには勿論、紺碧と金色をふんだんに使用した。宝飾品にはザオラル家に残っていたサシャの亡き母イルジナの使用してたものをリメイクし、つけている。ゴテゴテと派手になりすぎないようにシンプルに抑えながらもサシャの容姿を引き立てるようにとラディム、ルツィエ、侍女たちが激論を交わしたほどだ。
ドレスとて、激論が交わされた。サシャは女性にしては背が高い。であるなら、マーメイドラインのドレスがいいのではないかと最初の候補に上がるもシルエットがわかりやすいから却下とラディム。それから、Aラインに何々ラインにと様々な種類と説明を聞き、スレンダーラインに決めた。袖の有無、レース、布の質、それら全てにラディムも混ざっており、あれじゃないこれじゃないと口を出していた。けれど、着る本人であるサシャは常に置いてけぼりであったが。
そうして、完成したドレスはラディムの色をふんだんに盛り込んだもので部屋で一人サシャが顔を覆っていたのは侍女たちしか知らぬことである。
「さぁ、行こうか、俺の奥様」
「はい」
差し出された手をとり、舞台の扉をくぐる。