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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

作者: 野木

この世界が書き換えられていることに僕だけが気付いている。


だいたい、夜の20:00ぐらいから声が聞こえることが多い。スピーカーで小声を拡大したようなぼやけた女性の声が聞こえるのだ。


今日も僕はその声が聞こえるか確かめるために最寄の駅のホームにやってきた。。


「あ~。なんでやねん。な~んにも思いつかん。」

女性の声だ。脈絡のないことを訥々とダラダラと話すのが特徴的だ。

それと並行して、カタカタカタカタとタイピングの音が聞こえる。必要以上にキーボードを叩きつける音

が今日も駅のホームに響き渡る。とはいっても僕にしか聞こえていないのだけど。

カタカタカタカタ、タシィィィン。



僕にこの声が聞こえるようになったのは1週間前の何気ない1日が終わろうとしているときだった。。

あの日僕は駅のホームに降り立ち、線路前で遮断機が上がるのをぼーっとしながら待っていた。

カンカンカンカンカン。


カタカタ、タシィィィン。


何か変な音がしたな。どこからだろう。

そう思ってきょろきょろ辺りをうかがっていたが、特段目を引くものはなく、溜息をつき、また正面に視線を移した。



「う~ん。ある日突然駅のホームに檻が出現して、その中にはぬいぐるみがギュウギュウ詰めに押し込められている。っと」


何だこれ?駅員の放送かな。マイクのスイッチ点いているのに気づかず話しているのかな。


「えっほん。ぬいぐるみたちは生きているし、自分で動くことができる。う~ん。あとは~」


女性の咳払いの音や話声が拡声器で聞こえるけど、周りの人は誰も反応していないない。


ズドドドオッドドオドンッ!!!!



土煙の中、網目状のレーザーの檻が出現し、その中でギュウギュウ詰めのぬいぐるみが窮屈そうに押し込められながらモゾモゾしていた。轟音がしたのに周囲の誰一人反応していなくて違和感を感じる。

不審な目で見られながらも僕は来た道をUターンして駅のホームに突如出現した檻に近づいていく。

「ぁぁぁ、狭い。出たいよ。」

「誰じゃ~わしの尻尾踏みつけとるやつは!!」


押し込められているぬいぐるみは、身動きが取れず心なしか表情も苦しそうに見えた。

しばらく観察していると恐竜のぬいぐるみに話しかけられた。

「・・・われ、なにジロジロ見てんねん。散れっ散れっ。」

「あっ、・・・すみません」


僕はそそくさと駅のホームを後にして岐路についた。


家に着き、鞄を放り投げテレビのスイッチを入れる。

お風呂のお湯がたまるのを待ちながらバラエティ番組を見る。

最近怪我した小指が痒く、見てみるとかさぶたになっていた。

気になってかさぶたをはがしてしまうが、まだ早かったらしく、はがしたところの薄ピングの肉からうっすら血が滲み始める。

「ちぇ。なんだよ」


しばらく湯舟につかり、先ほどのことを考えていた。

「白昼夢?あ、でも夜か。じゃあ違うな。幻覚?・・・それにしては、はっきり見えたしな。いや、しかし見える時はそういうものなのかもしれない」


そして、恐竜のぬいぐるみに気圧され逃げ帰ってしまったことを思い出す。


「ちぇ。なんだよ、ぬいぐるみのくせに!さらに言えば僕の幻覚のくせに!生意気な」


そしてその日を境に謎の現象は続くのだが、1週間もたてば慣れる。

そう人は慣れるのだ。自分に危険がないかぎりの非日常なら割と簡単に受け入れてしまう。僕の適応能力が高いのか、ストレスだらけの現代社会がそうさせたのかは分からない。



好奇心が勝ってしまい次の日もさらに次の日も僕はその駅で何が起きるかを見届けたのだ。

今日は日曜日で特に駅のホームに来る必要なんてなかった。

だが、僕は改札を通り駅のホームに降り立って20:00になるのを待った。










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