97.カーキとたぬき
ちょっと腰を痛めまして……
更新遅くなりました。
植物所属員が作ったププリュシロップの美味しさと効果が広がり、ラシャドル王国のププリュの木が見直され始めた。来年はラシャドル王国で沢山のププリュの実が収穫されるといいな。
「この実もいいの?」
しましまふわふわの尻尾のたぬきさんがこくんと頷く。かわいい…!お礼を言って、収穫をする。
季節は進み、今日は植物所属員で、カーキの収穫活動を行なっている。
カーキは魔木なので、精霊に使いにどの実が収穫出来るか聞きながら行う。カーキの精霊の使いは、たぬきさん。しましまふわふわの尻尾が可愛い。
カーキも不思議な魔木で、魔木や精霊の使いの魔力は豊富なのにカーキの実に魔力は全然ない。だけど、甘くて美味しいのと精霊の使いが育つのを手伝ってくれて栽培しやすいので、ラシャドル王国でとても多く栽培されている。
ププリュとは反対のタイプの木だと思う。
「私のカーキも来年には実をつける予定ですの!」
「フローリアのカーキがあるの?」
「そうよ、私が魔法測定を終えた後に植えたのよ」
「やっぱり宿場にはカーキだもんな」
「チェダ、私のカーキは、婚約の為のカーキですのよ?宿場の為じゃありませんわ」
「婚約のカーキってなに?」
フローリア・アルベルゴは夏休み後に新しく植物所属員に入会して来た1年生の女の子。
フローリアはラシャドル王国でも1、2位を争う大きな宿屋経営をする家の1人娘さん。
「アルベルゴ家とオーベルジュ家が長年争っていたのはご存知かしら?」
「ああ、知ってる」
「…そうなの?」
「もうリマはちっとも知らないんですね?エディンリーフ家の者として少しは勉強なさい」
「…うん、ごめん。フローリア教えて?」
フローリアはぷんぷんしてるけど、いつも色々教えてくれて、ちょっとツンデレっぽくて可愛い。
「リマ、主に、アルベルゴ家はラシャドル王国の東、オーベルジュ家は西に宿屋経営をしていますの。ですが…近年は潰し合いになり、お互いの経営が悪化してしまい協定を結ぶ事になりましたのよ。私とオーベルジュ家の1人息子のレイモンド様が婚約する事に決まってますの」
「えっ!じゃあフローリアは好きじゃない人と結婚しなくちゃいけないの?」
「……嫌いじゃありませんわ」
ぽっと頬を染めるフローリアを見たらレイモンド様が素敵な人で好きなんだなって分かり安心した。
「好きならよかったね」
「…好きだなんて言ってませんわっ」
ぷんって頬を膨らますフローリアはとっても可愛い。
「それで婚約のカーキってなんだ?」
チェダって恋愛話に全然興味ないよね…?アミーとの恋も進展がないままだし…アミーは一緒に居られるだけで楽しいって健気すぎるよ。
「宿場にカーキを植えるのはリマも知っているわよね?」
「うん!昔、勇者様が宿場のカーキを持って行って、魔王との戦いに負けそうな時に口にしたら魔力が湧いて勝てた逸話から宿場は縁起がいいからカーキを植えるんだよね?」
「そうですわ!それは宿場のカーキなのですが、アルベルゴ家では子供が生まれると必ずカーキを植えて育てさせるのですの。そのカーキが精霊の使いに愛され、美味しく育つと宿屋の子供として認められるのです。そしてそのカーキを婚約する相手に捧げるのですわ」
「へぇ、だから婚約のカーキか。なあ、もしハズレの実だったらどうなるんだ?」
「ハズレの実なんてあり得ませんわ」
「まあ確かに数百年に1度あるかないかって言われてるもんな」
「そうですわ。ですが、ハズレの実だったら婚約のカーキどころかアルベルゴ家の恥ですから家を出なくてはならないかもしれませんわね?でも私のカーキは精霊の使いに愛されてますからあり得ませんわね」
カーキの実はみんな甘い。精霊の使いのお陰なのかみんな甘柿なのだ。ハズレの実というのは、精霊の使いに愛されない甘くない柿が数百年前にあったという昔話から来ているらしい。
「すごいね!じゃあフローリアは小さな頃からカーキを精霊の使いと育てているの?」
「そうですわ。私のカーキの精霊の使いは、『たぬたぬ』と呼んでいて、とっても可愛いのよ」
「たぬたぬってそのまんまだな」
「たぬたぬかぁ、かわいい名前だね!私もフローリアのカーキ見てみたい」
「実をつけるまで1人で育てなくてはいけないの。来年、実をつけたら招待するわ」
「そうなんだ!うん、来年、たぬたぬとカーキの木を見せてね」
「約束するわ。リマは本当に木が好きね」
「うん!ありがとう。木は大好きだよ」
桃栗3年柿8年だもんね。来年実るのが楽しみ!
「ねえねえフローリア、レイモンド様ってどんな人なの?」
「……魔法学校3年生の剣術所属よ」
ぽぽっと頬が赤く染まるフローリア。チェダはやれやれと首を振りながらカーキの収穫作業に戻る。剣術所属ならラルクがいるよね…?実はラルクの剣術所属で活動している所を見に行った事がない。見に行ってもいい?と聞くと、リマが見えたら集中できないからダメって言われて行けていないんだ……。
「…剣術所属のレイモンド様、カーキの収穫が早く終わったら見に行こうよ」
「そんなはしたないこと出来ませんわ。レイモンド様の邪魔はしたくありませんの」
「こっそり見に行こうよ?そっと覗いて直ぐ帰るから」
「リマがラルク様を見たいだけでしょう?」
「……それもあるけどっ!フローリアの好きなレイモンド様も見てみたいの!だめ?」
「…好きだとは言ってませんわ……もう!カーキの収穫が早く終わったらですわよ?」
「うん!フローリアありがとう」
ぽぽっと頬を染めたフローリアとこっそり剣術所属を見に行く約束をしました——
本日も読んで頂き、ありがとうございました。
柿の精霊の使いを想像したらさるかに合戦のさるかな?と思ったのですが、ラシャドルの樹の精霊の使いもさるでした(о´∀`о)あはは。
たぬきが好きなのでたぬきになりました。
あのしましま尻尾かわいいですよね。アライグマも同じ理由で好きです。
既にお気づきかと思いますが、100話で終わる気がしません……まあ100話くらいなつもりで書きます◎
今日もお疲れ様でした。
安らぎの夜が訪れますように。お休みなさい。















