96.王子の許嫁
ラルク視点です
リマが僕の許嫁に決まってから週末は王宮で花嫁修行に来ている。
今日はダンスのレッスンと母上とのお茶会とマタルの魔法の授業がある。
ラシャドル王国でダンスを踊る事はないのだが、他国に招かれた時にダンスを踊る事がある。他国は貴族社会という制度が残る事も多く、兄上はダンスは楽しいよ?と笑っていたが、僕は他国の王族やご令嬢との社交場で恥をかかないために仕方なく覚えていた……
兄上、撤回します。
ダンスは楽しいです…!
「クイック、クイック、スロー そのまま続けて」
「リマ様、もっと背筋伸ばして」
「ラルク様にもっと体を預けて」
ダンスの先生に言われ、リマが僕に近づく……リマの花の香りが僕を包む……
「ラルク、足踏んでばっかりでごめんね…」
「気にしないでいいよ?」
「ありがとう…がんばるね」
ダンスは初めてのリマは苦戦中。リマは運動が苦手だから予想通りなんだけど、言ったらリスリマになっちゃうから我慢だね…?僕のお嫁さんになる為に頑張ってるんだから足なんか幾ら踏んでもいいのに…本当にリマはかわいい。
額に口付けを落とすと真っ赤になっちゃった。
母上のお茶会は、母上がリマにマナーを教える為という名目だけど、母上がリマと話したいだけなんだけど…何故、父上も居るんですか…?
「あら?リマと女同士で話そうと思ったのに!」
「リマは僕の許嫁ですから当たり前です」
「…いや、私も執務が一区切りしたからな」
「…お義父様、お義母様……ありがとうございます」
真っ赤になったリマの言葉に父上が照れている……そんな甘い顔、実の息子にも見せた事ないですよね?
まあリマはかわいいから仕方ない…かな。
「まあ、じゃあププリュの精霊の使いが分かったの?」
「はい!鍵しっぽ猫でした」
「… リマ…魔力がない理由も分かったのかい?」
「はい!ププリュの木は、春の精霊の精霊の使いだからだってスゥとリュウが教えてくれました」
「花の精霊の精霊の使いじゃないのか…」
「リマ、背筋伸ばしてね?」
「はい!ププリュは春を告げるように咲くから春の精霊にとっても愛されているので、花の精霊の使いじゃないってリュウが言ってました」
「なるほどね」
「花の精霊は精霊の使いに魔力を送っているから魔力が多いみたいなんですけど、春の精霊が居なくなってププリュの精霊の使いは春の精霊と繋がる為に魔力を使っているから外からは魔力を感じないみたいです」
「なるほどな…」
「リマ、カップの音を立てないようにね?」
「はい!」
なるほど…母上、ダンスで疲れているリマにマナーを教えているのか……他国のやり取りは疲れていてもありますからね?父上はリマと話していると目尻が下がりっぱなしですね…かわいいから仕方ないかな。
さてと、そろそろ話しを終わらせて、マタルの魔法授業に連れて行くかな?
リマの手を絡ませる様に繋ぐと真っ赤になってはにかむ……思わず頬に口付けを落とすと、恥ずかしかったみたいでリスリマになっちゃった。かわいいな。
「 翡 翠 雨 」
リマの手が海のようなアクアマリンブルーの光に包まれる。ラシャドルの樹に光が近づくにつれて光が消えていき、青葉に降り注ぐ恵みのような雨がラシャドルの樹に降り注いだ……
「リマ様、とても上手になりましたね」
「マタルさん、ありがとうございます」
マタルがリマの魔法を褒めるとふわっと笑う。
リマの魔法は、僕が魔力の小さな塊を体に入れると魔力の流れが分かる様になったらしく、魔法が使える様になった。リマは魔法を覚えるのが早くあっと言う前に魔法を使いこなす様になった。
リマに誰が魔力の玉を入れるか揉めたが、氷の精霊の加護を少し持つ僕が1番魔力は弾かないと主張して魔力の玉を入れる権利をもぎ取った。
王族は皆、春の精霊の加護を持つので父親のヘリオスが最後まで譲らなかったが、リマがラルクがいいなと言ってくれたので決まった。今思い出してもリマかわいい。
今日の予定はマタルのこの魔法授業で終わりだ…!
予定が終わったので、許嫁になったリマを堂々と僕の別邸に連れて行き、たっぷり甘やかす事に決めている。魔法学校のリマは僕が触ろうとするとエイミに隠れたり、チェダに止められたり、全然触れ合いがないからリマを補給する…!
ソファに並んで座り、魔力の玉を流す。
王族は春の精霊の加護を持つ魔力の為、王族と結婚する者は少しずつ魔力の玉を流して貰い、体を馴染ませるのだ。王族はこの魔力の玉を作る事を小さな頃から練習する。所謂、花の修行…というやつだ。
本当はリマに必要はないのだけど、同質の魔力は………
「……んっ…はぁ……」
「リマどうしたの?」
「…ラ、ルク…これも必要なんだよね…?」
「そうだよ?リマは火の魔法適性が下級だからね?続けたら中級適性に上がるはずだよ」
「……うん…」
こくんと頷くリマは目が潤んでいる……
マタルに呆れられた目を向けられるが、黙って流し、退室を促す。別に嘘は付いていない。リマに下級魔法が中級に上がると話したらやりたいなと言ったから始めただけだ。同質の魔力は甘やかに感じるとちょっと伝え忘れただけだ…?
「リマかわいい」
くすりと笑い、甘く口付けを落とす。別邸にリマが来る様になって、もう何度口付けを落としたか分からない。かわいいリマに口付けを落とさないという選択肢はないんだよね……
マタルが下がったのを確認して、何度も角度を変えて口付けを落とすと、息が苦しくなったリマがぷはっと口を開ける。本当はもっと色々したいけど、まだリマには早いかなと思ってここでやめてあげる。
「リマかわいい」
抱きしめて頭を撫でると、細い腕が僕の背中にそろそろと回される。何度抱きしめても慣れない反応のリマは本当に可愛くて困る。思わず額に口付けを落とす。
「リマ、ププリュシロップが広まってるみたいだね」
「うん!植物所属員で作った小粒ププリュシロップは下級回復薬になって、大粒ププリュは中級回復薬になったの」
「良かったね」
「うん!スゥもリュウも喜んでた!小粒ププリュは受粉樹の役割もあるからどっちも同じ様に大事にされると思うんだ」
リマがププリュシロップの作り方を広めなければもっとリマ印回復薬も売れるだろうけど、リマはそういう事に興味がない。ププリュが大切にされる事が嬉しくて仕方ないと興奮している。
「リマかわいい」
甘い甘い口付けをリマと交わした——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
昨日のププリュと精霊の使いを書き直しました。
最近、糖度が低めだったので…糖度入っています◎
今日もお疲れ様でした。
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。