94.ププリュと精霊の使い
「このププリュは1本だと実がならないププリュなんだよ」
チェダの問いに答える。
我が家のププリュは小粒ププリュだから1本で実がなるが、このププリュは大粒ププリュだから受粉樹がなければ結実しない事を伝える。
「お父さんに聞いたら昔はこのププリュが沢山実っていたみたいなの。数粒なら1本でも結実する事はあると思うけど、沢山実るなら絶対に受粉樹の小粒ププリュの木があったと思うんだ」
「受粉樹か……魔木だから考えた事なかったな」
「でもププリュって魔木だけど、精霊の使いがいないから受粉樹が必要なんじゃないかな?」
魔木は自分の魔力で育つと言われていて、魔木には精霊の使いが付いている事が殆どだ。魔力・コクシネルの様に色々な植物を助けてくれる精霊の使いもいるが、基本的には、魔木はラシャドルの樹のアッフェの様に、ひとつの魔木にひとつの精霊の使いが付いていて、育つのを助けてくれたり、お世話をする人に助言の様なものをくれるのだ。
…ププリュは何故か精霊の使いがいない魔木なんだよね。
ププリュの近くに魔力の泉が湧く事が多く、その近くに鍵しっぽ猫がいるから鍵しっぽ猫が、ププリュの精霊の使いじゃないか?と言われる事もあるけれど、鍵しっぽ猫で魔力のある個体が見つかった事がない事と鍵しっぽ猫がププリュの木の近くにいてもフラフラと何処かに出歩く事もあって、よく分かっていない……。
ただ鍵しっぽ猫の近くで魔力の泉が湧いている事が多いから幸運の象徴と言われるけどね。
「…こほん。リマニーナ、小粒ププリュが昔はあったかもしれないが、魔法学校に今はないぞ」
「はい、分かっています!我が家の小粒ププリュを明日、ここに植えてみようと思います」
「はぁ?リマ、ププリュは魔木だから簡単に増やせないんだぞ。だから切ったりも普通はしないんだぞ」
やれやれとチェダに首を振られ…エド様をはじめ植物所属員の顔が真っ青になった。うん、そういえば魔木って簡単に増やせないんだった…よくお父さん、私の土魔法があるか分からないのにププリュを好きにしていいって言ってくれたな…。
リックだけがカイルみたいな悪い笑顔になった。この中で私の大きくなーれ魔法を見た事があるのは、リックだけだもんね。でもリック、そこはカイルに似なくていいと思うよ…?
「まあリマなら大丈夫だろ」
「リック!うん、明日持って来るね」
「おう。明日植えるの楽しみだな」
「にゃん」
「リュウも楽しみにしてて」
リュウが私の小さな胸の膨らみによいしょと前脚を乗せて、抱っこをせがむ。はいはいと抱っこをして撫でてあげるとゴロゴロと喉を鳴らした。
「リュウずるい…」
「俺も猫になりたい」
「リマ様の胸揉んでたな…」
「はぁ…猫もリマに惚れるんだな」
こそこそと植物所属員がリュウを羨ましがっていたのは知らないまま活動を終えた——
◇ ◇ ◇ ◇
「大きくなーれ!大きくなーれ!」
私の手がぱあぁぁ…とミントグリーンの様に緑色に輝くと、我が家のププリュの枝を包み込む…ププリュの枝は根を張り出し、葉っぱを茂らせる……
小さなププリュの木が育ちました!
「リマの魔法はやっぱりすごいな」
「リックありがとう!でも他の魔法は練習中だよ」
「後発魔力で、風と水魔法が上級になったんだろ?」
「うん」
春の精霊と冬の精霊の加護が付いていた私は、魔法適性が風と水魔法が上級適性になっていたらしい。本当は氷の魔法も使えるけど、加護の話しは秘密になっていて、みんなには後発魔力という事にしている。
「にゃん」
リュウがゴロゴロと近付いて来たので、屈み込むと、よいしょと前脚を私の小さな膨らみに乗せる。ぐらぐらするのか左右にふみふみするので、少しくすぐったい……リュウは可愛いなと思い、脇に手を入れて支えるとふみふみを繰り返す。
「リュウはずるいな…」
「あれはワザとだな」
「完全に雄の顔だもんな」
植物所属員の囁きは聞こえず、リュウを抱っこしようと思うと…
「にゃにゃにゃん!」
——なにしてるのよ!
すごい勢いで白猫がリュウにぶつかって来た…!
「にゃにゃにゃん!」
「にゃん…?」
「にゃにゃ!」
「にゃ、にゃにゃ……」
「にゃん!」
リュウにぶつかった白猫……小さいけど…
「スゥ…?」
「にゃん!」
——今、取り込み中よ!
「そうだよね…」
「にゃにゃ!」
——後にして頂戴!
「…はい」
私を含め、植物所属員が見守る中、白猫のリュウへの公開お説教は続いた…。
「なんか俺、リュウが可哀想になって来た」
「浮気はしちゃダメ、絶対」
「でもリュウ嬉しそうじゃない?」
リュウは怒られながらスゥに似た白猫に甘え始める。ゴロゴロ喉を鳴らし、白猫におでこを擦り付けたり、ざりざり白猫の身繕いを始める……白猫も甘えられる内に、甘えたくなったのかゴロゴロ喉を鳴らし、リュウに甘えだし、いつしか植物所属員で公開イチャイチャを見守る事になった…。
白猫がスゥだと思うとちょっと見てはいけないものを見ちゃっている気分になる……。
「スゥ…?」
「にゃにゃん!」
——取り込み中よ!
「にゃん?」
「にゃあにゃあ?」
「…みゃあん」
リュウが白猫を嗜める様に鳴くと白猫が甘えながら仕方ないわねと言うようにこちらを向いた。
「にゃん」
——ついて来て
白猫とリュウが仲良く歩き出したので、みんなでゾロゾロ付いて行く。この先は茂みがある筈なんだけど……
「「「……え?」」」
茂みは無くなり、小さな泉が湧いていた——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
更新が遅くなりました…書き直しを何度もしたのですが、伝わっているか大分心配しています…_φ(・_・
ププリュの話しは最初にこの物語を思い付いた時に考えた話しだったのですが、魔法学校に行くまでに予想以上に時間がかかり……細かい設定があやしいのですがこの物語を作るきっかけになった話しなので書かせて貰いました(*^_^*)
ちょこちょこと前の話しを手直しさせて貰うかもしれませんが、よろしくお願いします◎
今日もお疲れ様でした。
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。