88.虫除けスプレー
「ふっふん〜ふふん〜」
「リマお嬢様、随分ご機嫌ですね?」
「うん!今日は授業で風魔法を習うんだよ」
「なるほど」
「私、土魔法を2つしか使えないから楽しみなんだ」
「頑張って下さいね」
「カイルありがとう」
いつも通りカイルに正門まで送って貰い、別れる。
昨日、我が家に戻ったらお父さんとお母さんも既に戻っていて『たんぽぽ珈琲』について詳しく聞かれた。春風の儀式のたんぽぽが我が家の庭で咲いているのは奇跡なんだと2人に熱く言われたけど、大きくなーれ魔法を使ったからなぁとあんまり実感が湧かなかった。
だって、お父さんがエディンリーフ店の皆さんに自慢するから既に何度も咲かせているもんね?
魔法学校の今度のお休みの日に王宮に行く事になったので、お休みの日にもラルクに会えると思うと楽しみだな!うふふ。
風魔法の授業が楽しみで早く登校したのにもうラルクが来ていて驚いた。2人きりの教室だね…?
「ラルク、おはよう」
「リマ、おはよう。兄上に聞いたよ。試験に受かったんだね、おめでとう」
「うん!ありがとう」
こっちにおいでとラルクのいるベランダから呼ばれて、初めてクラスのベランダに出てみる。大きな窓ガラスの先にベランダがあって、ベランダの先は正門が見え、登校する学生が見える。
「歩いて来るリマが見えた」
「ラルク、朝早いね」
「…リマに会いたかったからね」
「……」
ラルクの甘い黄金色がゆっくり近付いて来る…
「…ラルクっ!…こっこここっ学校だよ?歩いて来る人に見えちゃうよ?」
「うーん?じゃあ半分だけ聞くよ」
「えっ?」
くいっと手を引かれ、カーテンにくるくるっと巻かれる。小さな密室が出来た…
「これなら見えないでしょ」
ちゅっとおでこに口づけをされる。
ここ学校……!
信じられないと思い、言葉にならない声を出そうと、はくはくと口を動かしていると、ラルクは両頬をむにっと押さえて、少し強引に私の顔を上に向けるとそのまま口付けをされた……
「…ラルクのばか…」
少し強引な4度目の口付けだった…
「…上級生棟に変な虫が出たって聞いたけど、大丈夫だった?」
「……変な虫…?」
「リマにひっついてない?」
「……もしかして心配してくれたの?」
「…そうだよ」
「…ありがとう」
…ラルクが少し変なのは心配してくれてたからなんだね…?よかった。
虫がずっとひっついているわけないのに!ラルクって心配性なんだなと思うと、うふふと笑いが溢れた。腕を伸ばして背中に回すとラルクの少し早い心臓の音が聞こえて安心する。ラルクもぎゅっと抱きしめてくれる…ラルクの香りがして安心するな。
「みんなに見られちゃうけどいいの?」
……!
ここ学校だった…!
小さな密室が少し薄暗くて、居心地が良くて忘れていたよ…ばかばか…!
慌てて教室に戻るとまだ誰も来ていなくて安堵した……
「ラルクのばか!」
「…ごめん?」
くすりと笑ったラルクは全然反省していなそうだけど、なんだか機嫌が良いみたいで良かった…かな?
さっきの変な虫で思い出した…!
虫除けスプレー渡さなきゃね。
「ラルク、虫除けスプレー持って来たよ」
「ありがとう。あれ?これエディンリーフ店のじゃないやつ?」
「うん!ミントじゃ効かないみたいだったから新しく作ってみたの」
「試していい?」
またベランダに出て、シュッとスプレーしてみる。
「…いい匂いだね?」
「うふふ。これは、レモングラスとシトロネラと少しミントを混ぜて、私の土魔法で作ったよ」
「リマの魔法で作ったなら効きそうだね」
「へぇ、リマの魔法だと効果が変わるんだ?」
「あ!チェダ、エイミ、おはよう」
「おはよう。リマの回復薬も魔法と関係あるの?」
「詳しくは分からないんだけど、私の魔法で作ると効果が高いみたいなんだよね。魔王スプレーも最初は私が作ってて、その後、ミンツェ村のミントにしたら効果が少し落ちたって言われて……その後、ミンツェ村でミントの効果を引き出す抽出法を見つけて、同じ程度の効果が出せるようになったの」
ミンツェ村は、水蒸気蒸留法でミントの精油を取り出したのを使って、ミント製品を沢山作っているんだよね。
ミンツェ村で大きくなーれ魔法を使って増やした「スペアミント」と「アップルミント」の品質が良かったみたいで…私の魔法は植物に優しいみたいなんだよね。
「へぇ、一時販売規制があったのはその影響なんだ?それで回復薬は?」
「回復薬は、私の魔法で作ると回復薬になるんだけど、魔法なしで作ると魔木の果物だと一応効果の低い回復薬になるけど、普通の果物は、只の果実シロップになっちゃうみたいなんだ……だから回復薬は私が作ってるよ」
「なるほど、面白いね!」
「じゃあ今日の風魔法もリマは余裕でしょ?」
「エイミ……私、土魔法以外は下級魔法適性だよ」
「「えっ?!」」
2人が顔を見合わせている…
…そんなに驚かなくても……?
「魔法習うの楽しみだね?」
みんなに笑顔で伝えると、そうだねと頷いてくれた——
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
カーテンでくるくるしていたら風魔法の授業まで書けなかったです。
明日は魔法の授業の話しの予定です。
今日も頑張りましょう◎















