87.筆記試験
ププリュ!ププリュ!ププリュがある…!
魔法学校のどこにププリュの木があるのかな?
所属紹介の終わり、クラスの帰りの挨拶が終わった私は3人にバイバイを告げると、早速所属長のクラスへ急いだ。
「顔にププリュって書いてあったね」
「…そうだね」
「ラルク、剣術とどっちにするの?」
「…そういうエイミはコーフボールとどっちにするの?」
「……迷ってるの」
「僕もだよ…」
「2人共、大変だな」
やれやれとチェダが首を振っていたらしい。
確か…4年生のBクラスだったから……
魔法学校の建物は赤煉瓦造りの二階建。1年生と2年生は同じA棟、3年生と4年生B棟なので、少し歩く。
B棟に到着して2階へ移動すると1年生がいるのが珍しいらしく上級生にジロジロと見られる事が増えた。
居心地が悪くて早足になると、ようやく4年生のクラスがある2階に着いた。
この頃になると少し冷静になって来て、所属紹介の直後に入会希望を出すのも珍しいかも…と気付いたけど、ププリュの為だからね。
「…あの、植物所属長はいらっしゃいますか?」
クラスの扉をそっと開け、近くにいた上級生に声を掛ける。
「……!…おーい、エド!お客さん!」
「…ああ。噂のお姫様か…」
先程、壇上で所属紹介をしていた長身で細身、黒髪に翡翠色の目を少し細めたエド様が頷くのが見えた。
エド様を呼んでくれた上級生にお礼を言うと、顔が赤くて風邪なのかなと心配になった。そういえば、ここに来るまでの上級生も顔の赤い人がいて、春なのに風邪が流行っているのかしら…?
「1年生のリマニーナ・エディンリーフです。所属したいのですが…」
「さっきの紹介の話しをきちんと聞いていた?」
「はい……試験があるんですよね?」
「ああ。まずは筆記試験からだけど、勉強しないでいきなり受けるつもり?」
「エド、リマは冬の間ずっと植物の本ばっかり読んでたから試験受けさせてやったら?」
「あれ?ハルト、どうしているの?」
「リマが上級生棟に来てるって噂になってたからエドの所だと思って来てみたよ。コーフボールには入らないの?」
「……ハルト、わざと聞いてるでしょ?」
「ふふっ。そんな事ないよ?運動音痴のリマでも入会するなら手取り足取り教えてあげるよ?」
「そんなに運動音痴じゃないよっ!ちょっと苦手なだけだもん!」
ハルトのばか!エド様の前で運動音痴とかいわなくて良いのに!ベー!と舌を出して怒っておく。
「……噂では高嶺の花だとか2人の王子を惑わす魔性の女とか聞いていたけど、だいぶ違うんだな……」
私がハルトとやり取りしている間のエド様のひとり言は聞こえなかった。
「…こほん。リマニーナ、試験受けてみるかい?」
「はい!エド様、ありがとうございます!」
「………じゃあ、ここに座って」
エド様も耳が赤いけど、Bクラス風邪が流行っているのかな…?
椅子に座った私は筆記用具を出し、エド様から試験用紙を受け取る。
「時間制限は特にないよ。出来たら渡してくれる?全体で8割解けていたら合格、不合格でも再挑戦出来るから落ち込む事はないよ」
「はい!エド様、私、一発で合格出来るように頑張ります」
「…がんばってね。じゃあ始めて」
ププリュを目指して頑張るぞ!
どんな問題かな?
さっと目を通して、どんな問題があるかどれくらいの量があるかを把握する。
元農業系大学生を舐めるんじゃないよ?
ふふふ。
軽快に問題を解いていく。
園芸の基礎問題が多いみたいだな。魔法学校の植物をお世話するから雑草と有益な草の違いや水のやり方や肥料について……初歩的な知っておくといい事の確認みたいな問題だね。
「エド、リマが合格しても1週間の朝の水やりは次の休み明けからにしてあげてくれない?」
「…理由を聞いても?」
「……詳しくは言えないけど、エディンリーフ家に陛下のお招きがある」
「…休み明けからにするよ」
「助かるよ」
「それを伝えにわざわざ戻って来たのかい?」
「それもあるんだけど、リマが1人で上級生棟にいると聞いてね」
「…確かにいつもぴったり横にいる王子がいないね」
「そういうこと」
エド様とハルトが話しているのも聞こえない程、集中していた私は最終問題に取り組んでいた。
「出来ました!」
エド様に試験用紙を渡すと、ハルトがお疲れさまと頭をくしゃくしゃと撫でられる。
ぐちゃぐちゃになった…むぅと恨めしげにハルトを見上げると、ふふっと笑われた。
ハルトの背が高くて、撫でる手を捕まえようとしてもスッと上に逃げられて、ぴょんぴょん飛び跳ねても捕まらなくて、息がぜぇぜぇ上がっただけだった。
「リマ、もう少し体力つけた方がいいよ」
「…はぁはぁ…そうかも…ね」
「植物所属を辞めて、コーフボールに来たらどうだい?」
「…はぁ…はぁ…」
首を横に振って、否定をしておく。
「リマニーナは試験合格したからうちの所属だよ」
「仮だろ?」
「仮でも植物所属だよ」
「エド様、本当ですか?」
「ああ…まさか満点だとは驚いたけどね。水やりは休み明けから1週間の予定だから体調整えておいて」
「はい!ありがとうございます」
「リマ良かったね」
ふふっとハルトが笑い、頭をくしゃくしゃと撫でようと手が降りて来たら、グイッと両肩を掴まれてエド様に引き寄せられた。
「ハルト様、うちの所属員ですから」
「…エド様、ありがとうございます。休み明けからお願いします」
「こほん……まだ仮だから、がんばって」
「はい!」
「リマ、エディンリーフ家の馬車が待っているんだろ?送っていく」
「そうだった!カイル待たせてるから急がなくちゃ」
エド様にさようならを言い、手を振ると、エド様も小さく手を振り返してくれて、所属員になった気持ちがして嬉しくなった。
ハルトがエディンリーフ家の馬車まで送ってくれた。
「リマ、試験合格おめでとう」
「ありがとうハルト。ハルトがエド様に試験受けさせてあげてって言ってくれたおかげだね。本当にありがとう」
「どういたしまして」
ハルトが頭をくしゃくしゃと撫でた。カイルが直してくれるからまあいいかな…?
仮だけど、植物所属になりました!
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
急に寒くなりましたね。
風邪をひかないよう気をつけなくちゃですね◎
今日も頑張りましょう(*^_^*)