86.魔道具師の卵
チェダの視点です◎
「どちらを選べばいいと思う?」
「どっちでもいいと思う」
「はぁ……冷たいな」
「早く帰ってくれ」
「やだよ。チェダの部屋、狭くて居心地良いんだよ」
「これ普通だからな?王子様の部屋はどんだけ広いんだよ」
「部屋じゃなくて自分の家があるんだよ」
「もう帰れ」
「…やだよ」
「はぁ……」
何でかラルクは俺の部屋が気に入ったらしく遊びに来てゴロゴロして、リマの話しをして帰って行く。
初めてラルクとリマに会った日は、カイルさんに父さんが頼まれていたのが分かった。
あんな混雑した市場にいつもより少しだけ綺麗な服を着せられたら嫌でも警戒する。
それにあの優秀なカイルさんが自分の仕えるお嬢様と王太子2人を連れて席を取り損ねるなんて有り得ないからな。
だけどああいう形で会わせたのは無理やり友達にするつもりがないって事だ。俺達が気に入れば友達だけど、気が合わなければ関わらないで過ごせばいい。
結論から言うと、エイミはリマが一目で気に入っていた!まあ俺もだけど。
エイミは昔から可愛い物が好きなんだよな。
リマを初めて見た時は、俺も衝撃を受けた…!
こんなに可愛い子が実在するのかと思った。目が溢れる様に大きくて、色白で、赤い唇に柔らかそうな頬…天使みたいなのに、話したら気さくでエディンリーフ家の子供なのに偉そうにしていない。これで気に入らない奴なんて居ないと思う。
ラルクは俺と同じで学友にと引き合わされたのを理解して一歩引いていた。
と言うより、リマしか見てなかった。今もだけど。
だからラルクが何で俺の部屋にこんなに来るのか不思議で聞いたら、リマの話しを聞いてほしいからだってハッキリ言ってた。なんだよそれ。そこは嘘でも俺と話したいとか言ってくれ。
「リマが刺繍の練習始めた」
「へぇ」
「下手でも良いのに、練習して上手になるまで僕に作ってくれないんだよね。はぁ……かわいい」
「なんでラルクの練習ってわかるの?」
「遊びに行ったらすごい慌てて隠してた」
「春風の儀式、今年は僕がやるから」
「陛下じゃないの?」
「リマが王宮に入って儀式を見るのは、今年が最後だろう?父上を説得して僕がやることになった。今、それの練習で本当くたくた」
「家で休めばいいのに」
「チェダの部屋が落ち着く」
「……どうも。格好つけるのも大変だな」
「好きな子に格好付けなくて、いつするの?」
「国民のため、とか?」
「民の為に頑張るのは、王族の義務だから当然」
「あ、そういうのはちゃんとしてるんだ」
「ラルク、収穫の魔道具についてニーナに詳しく聞きたいんだけど」
「庭の事なら全部分かるから何でも聞いて」
「何でそんな詳しいんだよ」
「毎日リマに会いに行ってるからね」
「…へぇ」
「収穫の魔道具が出来たら僕が収穫魔法使えないな」
「えっ!あんな上級魔法、使えるのか?」
「リマが喜んでくれると思って必死で覚えた」
「……格好つけるのも大変だな」
ラルクがリマへの秘密の努力をベッドでゴロゴロとしながら話す様子に悪い気がしない俺もラルクが何だかんだ気に入ってると思う。何だか憎めない。
魔法学校のリマはむちゃくちゃ目立っている。
初日から上級生が見に来ていたくらい。
女の子に嫌われたりするのかと思ったら女の子にも人気なんだよな、リマ。
まあハルト様がいるのも大きいよな。ハルト様は金髪碧眼で女子の憧れる王子様そのものなんだよな!リマはハルト様じゃなくて、ラルクが好きだからもリマが嫌われない理由な気がする。もしハルト様を好きでも美男美女、家柄、文句の付けようもないけどな。
あとはリマの反応だな。完全なる天然。でもうざくない。恋愛の反応だけ、ちょっと変なんだ。守ってあげたくなるって言うか、男じゃなくても、あれは庇護欲を擽られる。
そこが女子達のツボみたいで、リマを応援する会みたいなのがあるってエイミが言っていた。なんだそれ。
リマはラルクに話しかけられると顔を赤くして話していて、たまにラルクが頭に触ると沸騰する様に真っ赤になって、今にも泣き出しそうな顔になるからラルクを止める。そういう時のラルクは俺の部屋でゴロゴロしてるラルクじゃなくて、砂糖菓子みたいな甘ったるいラルクで見ているのがキツイって言うのもある。
女子は甘ったるいラルクを見ると、声にならない悲鳴を上げてるから、ああいうのが好きなんだろうな。
でもリマ、ラルクと手を繋いだら倒れるんじゃないかな?
「なあなあチェダ、植物と剣術のどっちに入ればいいと思う?」
ああ…そうだった、この相談でラルクが俺のベッドでゴロゴロしているんだった。
「はぁ…ラルクさ、さっきリマが植物に入会希望出す前に剣術のマネージャーに誘えば良かったじゃん?」
「……」
「植物は忙しいから両方入るのは無理だろうな。剣術をすればリマが格好いいって応援すると思うよ」
「植物のリマ目当てに男子学生沢山入ると思う?」
「うーん…あの入会試験、そこそこ厳しいからそんなに入れないんじゃない?」
「じゃあ剣術かなぁ…」
「剣術はリマがマネージャーするかもって噂になってたからリマ目当ての学生が沢山入ると思うよ」
「ああ……声に出しちゃってたもんね」
「リマ入らないけどな」
「……」
「ラルク入ったら応援に行くと思うぞ?」
「チェダありがとう。剣術に入会して惚れさせる事に決めた」
「十分惚れてると思うけど」
「…植物に勝てる気がしない」
「ああ…それは強力なライバルだな」
それ、他の男には負けるつもりはないって宣言だな。まあ確かにラルクに勝てる相手がいるとしたらハルトフレート様くらいだろうしな。
やれやれと俺は頭を振った。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
チェダ視点、なんかぐるぐるしてしまいました。
ちょっと書き直すかもですが、他人から見たリマを少し書いておきたかったので書きました(*^_^*)
今日も頑張りましょう◎