82.魔法学校の入学式
ふぅ………
春の柔らかな風に乗って、ふわふわと空に舞う綿毛を見つめる。
お揃いのたんぽぽの指輪は、小さな瓶の中でふわふわのまん丸な綿毛になった。コルクの栓をした小瓶に愛らしい蒲公英色のリボンを巻いて飾ってある。私の宝物。
ふわふわ舞う綿毛を追いかけるスゥを見守り、綿毛がエディンリーフの庭に舞い降りたのを確認する。
「大きくなーれ。大きくなーれ。」
……ぱあぁぁ…私の両手が淡くミントグリーン色に光り、その光りはたんぽぽの綿毛の舞い降りた庭へ降り注ぐ……
…たんぽぽの花冠の綿毛が我が家でも咲くといいな………
『小さなたんぽぽの国』が2人の檸檬の木の横に出来ました。
「にゃん!」
—いいわね!
「うん。嬉しい」
たんぽぽの花は、キラキラと太陽のかけらの様に咲いている。うふふ。たんぽぽの国でまたラルクと会いたいな。
近くに来ていたスゥの頭や顎下を撫でると、ぐるぐると喉を鳴らす。
「リマー!もう行くわよ!」
「はぁい!今行くね」
お母さんに呼ばれたからもう行く時間みたい。
今日は深みのある美しい暗緑の織部色のチェックワンピースに丸襟のシャツを合わせた魔法学校の制服に袖を通した。マリィに少しだけ大人っぽく見えるハーフアップにして貰い、今日のお祝いにお父さんとお母さんから贈られたパールの髪留めを合わせている。
今日は魔法学校の入学式の日。
「行ってくるね」
「にゃん」
—いってらっしゃい
最後にスゥをひと撫でしてからエディンリーフ家の馬車に乗り込んだ。
お母さんとお父さんと一緒に魔法学校へ向かう。
「ドキドキして来た……」
「今日はクラスの発表と入学式だけよ?」
「……うん…」
入学式なんて小春の大学の入学式以来だから緊張するな。
それに…ちゃんと友達出来るかな?100人は無理でも仲良く出来る子が出来ますように。
…あとはやっぱりラルクと同じクラスがいいなぁ。
エディンリーフ家の馬車を魔法学校の正門に乗りつけ、正門から魔法学校まで歩いて行く。
ここからは王族であっても執事も侍女も入る事は出来ない平等な場所。
お父さんとお母さんとクラスが発表されている張り紙の前に並ぶ。ここでクラスを確認してから入学式が行われる講堂へ向かう。
……緊張するなぁ
「お父さん、お母さん、私がちゃんと見るから先に言わないでね?」
「「わかったわかった」」
やっぱり自分で確認したいからね?お父さんとお母さんに何度も念を押していたから笑いながら頷く。
……次は私の順番だ…
「…お!」
「お父さん!」
「ごめんごめん。言わないからゆっくり見なさい」
背が高いお父さんは先に私のクラスが分かったみたい!もう!お父さんは油断も隙もない…!
「リマ、見てごらんなさい?」
「うん…」
……ふぅっと深呼吸をして、張り紙を見る…
…
…
…
「同じクラスだ……!」
ラルクと同じAクラスだった…!やったやった!
るんるんとスキップしたい気分だけど、お母さんにゆっくり歩くのよ?と窘められました。
入学式の行われる講堂の受付で、入学通知書を見せ、2人と分かれてクラスの席へ向かう。
「リマ、こっち」
「ラルク…!」
「新入生代表の挨拶、がんばってね」
「ありがとう」
ラルクの隣に座る。
この前、見せ合いっこした魔法学校の制服を着たラルクにまたどきどきして、見惚れてしまう…。
深みのある織部色のチェックのパンツに白シャツ、濃紺のジャケットを着たラルクにおはようと挨拶すると、おはようと優しく言われて幸せな気持ちになる。
同じクラスだから毎日おはようが言えるよね…?
入学式が始まった——
◇ ◇ ◇ ◇
「また月曜日にね」
「またね」
入学式を終え、ラルクにバイバイと手を振って分かれ、帰りの馬車に乗る。2日間休んだ後、本格的な学校生活が始まる。
入学式は偉い人の挨拶やお祝いの言葉もあったけど、新入生代表のラルクと在校生代表のハルトが壇上に上がると、はぁ…と桃色のため息が漏れていた。
「新入生代表、ラルクフレート・ラシャドル」
「春の陽射しが気持ちの良い本日、入学式を開いて下さり、魔法学校長、来賓の方々、在校生代表からも温かな入学を祝うお言葉を頂き、新入生を代表して感謝申し上げます」
壇上に上がり、堂々と話すラルクが素敵でした。
——本日、魔法学校に入学しました
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
感想を頂きました(*^o^*)
すごく嬉しいです!
魔法学校がどんな場所か手探り状態なのですが、暖かく見守って頂けたら嬉しいです◎
今日もお疲れ様でした。
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。