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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
13歳のはじまり

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81.太陽のかけら



ぽかぽかと気持ちのいい小春日和。

ラルクに誘われて王宮に遊びに来ている。王宮に着くと手を繋いでラシャドルの樹のある庭へ歩いて行く。ラシャドルの樹を見るのは、春風の祝いの時以来だ…


「黄色の絨毯みたいだね!」

「そうだね。」

「花冠作ってもいい?」

「いいよ。一緒に作ろうか?」

「うん!」


ラシャドルの樹の周りは、たんぽぽが咲き誇っていた……!

毎年、春風の儀式の後に野花が咲くみたい。去年はれんげ草で今年はたんぽぽ。

2人でたんぽぽを摘むと、ふわっとたんぽぽの優しい香りがして、うふふと思わず笑ってしまう。


「リマかわいい。」

ラルクに頭をよしよしと撫でられる。


「どうやって作るの?」

「まずね、軸になるお花を2本選んで、手前に巻きつけるお花を交差させるの。」


摘んだたんぽぽを使って、くるっと交差させて見せるとラルクも真似してくれる。


「そのまま茎を軸になってるお花に巻きつけて、巻き付けた茎はそのまま軸のお花の茎といっしょに揃えるの。これを何度も何度も繰り返して好きな大きさにするの。」


「こうかな?」

「うん。ラルク上手だね!」


2人で夢中になってたんぽぽを摘み、花冠を作って行く。ラルクにたんぽぽの花冠は、最後に綿毛の冠になるよと伝えると部屋に飾っておくよと言われて嬉しくなる。花冠がどんどん長くなり、輪っかが大きくなると、ラルクは私の頭、私はラルクの頭に乗せて大きさを考えて作って行く。


「最後は茎の柔らかいたんぽぽを選んで結んで出来上がりだよ!」

「出来た!」


最後は一緒にたんぽぽをきゅっと結んで完成。私達の手には同じたんぽぽの花冠。

一緒に同じ物を作るのってすごく楽しい。ラルクは初めてなのに、すごく上手に作っていて驚いた。


「リマかわいい。」

ラルクがそっと花冠を頭に乗せてくれる。

私も少し屈んでくれたラルクの頭に花冠を静かに乗せる。黄色のたんぽぽがラルクの頭に乗ると本物の王冠みたいに見えた。


「ラルク、王様みたいだね?」

「たんぽぽの国の王様かな?」


ラルクがくすりと笑うと、手を差し出してくれる。


「じゃあリマはたんぽぽの国のお姫様だね?」


……!

お姫様と言われ、顔に熱が集まるのが分かる。少し俯いたままラルクの手に自分の手をそっと合わせると、ラシャドルの樹の近くにお茶の準備が出来ていた。


「たんぽぽの国のお姫様?」

「……はい…」

「今日はたんぽぽの蜂蜜を用意しました。」

「……!」

「リマ、かわいい。」


髪を多めに残したハーフアップの髪をするすると梳きながらラルクがくすくす笑う。


「前に行きたがっていた蜂蜜専門店のだよ。」

「そうなの?…嬉しい…ありがとう。」

「どういたしまして。味見してみる?」

「うん。」


ラルクの手が私の髪から離れ、たんぽぽの絵が描かれている蜂蜜の瓶を見せてくれる。鮮やかな蒲公英色より少し落ち着いた蜂蜜色が春の陽射しでキラキラ輝いている。

ラルクが蓋を開けると、ふわっと甘い蜂蜜の香りがして、幸せな香りだなと感じる。


スプーンでぱくりと味見をすると、甘い蜂蜜にふんわりたんぽぽの香りがして、最後にほんの少し苦みを感じる蜂蜜だった。


「美味しい…!」


頬に手を当てて味わっていたらくすりと笑われる。

たんぽぽの蜂蜜をたっぷり入れた紅茶を、たんぽぽの花達を見ながら、ゆっくりゆっくりこくんと飲むと、ここが本当にたんぽぽの国みたいに思えた。

たんぽぽの国のお姫様だから指輪もあったらいいかも…!


「リマ、何してるの?」

「綺麗なたんぽぽがあったら指輪作りたいなと思って…?ラルクも作る?」

「そういえば、前も指輪見ていたよね?」

「うん!指輪はやっぱり憧れちゃう…かな?」

「…どうして?」


…ラシャドル王国で指輪は大人が装飾品としてするが、結婚指輪みたいに同じデザインの物を一緒にする事はない。でもやっぱり小春(前世)の世界を思い出すと結婚指輪は特別だなと思うので、憧れはある。


「結婚すると同じ指輪を左手の薬指にするお話しを読んで、いいなと思ったの。」


綺麗なたんぽぽを2本見つけた!

そっと摘んで、下をくるくる巻き付けて輪っかに数回通せば、あっという間に完成。

指に嵌めようとすると、ラルクに止められた。


…?


「リマ、僕がはめてもいい?」

「……うん。」

ラルクが真剣な様子に驚いて、こくんと頷く。



ラルクの黄金色の瞳が蜂蜜の様に甘やかになる。

膝をついて、私の左手を優しく包み込む様に持つ……







「リマ、大きくなったら僕のお嫁さんになってくれる?」



「……はい。ラルクのお嫁さんにして下さい。」




ラルクの甘やかな黄金色の瞳を見つめながら答えると、ラルクがたんぽぽの指輪を左手の薬指にゆっくりはめてくれる。



私もたんぽぽの指輪をラルクの左手の薬指にそっとはめた。私達の薬指にお揃いのたんぽぽの指輪。




「約束だよ?」

「うん…」







3度目の口付けは、たんぽぽ蜂蜜の甘い味がした。







たんぽぽが綿毛に変わる頃、私達は魔法学校に入学する——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


これで魔法学校入学まで終わりになります。

まだ続きますが、第1章を完結出来た事にほっとしています。

ブックマークや評価、感想を頂いて、何とか書く事が出来ました。いつも読んで頂きありがとうございます。


本当に本当にありがとうございました(*^_^*)

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ヘッダ
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ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[一言] 今回の飯テロは、栗汁粉でしたか。 ハルトさま、小豆大好きですね。ヘルシーですし、滋養もありますので、もっと単価が下がって王国で手軽に購入できるようになると良いですね。頑張って小豆栽培に取り組…
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