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小春の小庭〜転生先でも樹木医を目指します〜  作者: 楠結衣
5歳は異世界生活のはじまり
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8.ププリュの木とは?

ププリュの本を読むだけなんだけど…



 ラルクが、ププリュの木を読むのが嫌ではない事が分かった途端、胸の奥から、ふわん……と暖かい気持ちになった。


 少し落ち着いたところで、ふと思う……私の気持ちの浮き沈みが激しいのは、子供の身体になったからかも……? 小春は、ここまで気持ちが浮き沈みする事は無かったし、周りの状況や相手の気持ちも考えることが、多分出来たと思う。リマ(子供)の体に小春(大人)が引っ張られている感じがするな……少し自分の中で納得が出来た事で、気持ちがすっきりした。


 よし! じゃあ次は、次こそは、ププリュだね!



「ラルク! ププリュのこと分かるの楽しみだね?」

「そうだね。リマの楽しそうな顔を見るのが楽しみだよ?」



 ……っ!



 ……っラルク?



 それはププリュと関係ないよ……!



 ラルクの言葉に真っ赤になったり……真っ赤になったり……振り回されないように頑張るよ、私!

 このままだとププリュの本、開けないままだ……!



 マリィから受け取ったププリュの本に視線を落とす。

 赤みのくすんだ茶色の煉瓦色(れんがいろ)の表紙、金色の線で葉っぱの縁取りがしてあり、5センチ程の厚みのある本だった。

 葉っぱの縁取りの中に文字が書いてある……?



 これは文字……だよね? 多分、文字だと思う……いや、雰囲気がどう見ても、文字でしょう?

 小春の意識で読もうと思ったら、リマは文字がまだ読めなかったみたい……!



「なんてかいてあるの…?」



 呟くように声を落とした……だって読めないなんて思ってなかったもん。

 あ! もしかして、ラルクも読めない……とか?



植 物 (プランツェ) 図  鑑 (ボタニーク)と書いてあるよ」



 ラルクは文字が読めるんだね……

 小春は、もしかして勉強が出来ない子なのかな?

 やだやだ、恥ずかしいな……ラルクが読めないかもと思ったのも、何だかごめんなさい!

 私が頭の中であれこれ忙しくしていると、ラルクがくすっと笑い、頭をよしよしと撫でてくれていた。



「リマ、かわいい。これは今のリマには少し難しいから、僕が読んであげるよ。ププリュのページはどこかな?」

「……ありがとう」



 ラルクはいつから文字が読めるのかな? 何歳くらいから読めるのが普通なのかな? ププリュの本を読んだ後でマリィに聞いてみよう。


 ラルクが真剣な顔になって植物図鑑の頁をめくる。真剣な黄金色の瞳も素敵だな……と見惚れていたら、ラルクとパチリと目が合って、頭をぽんぽんと撫でられた。



「リーマ! 見すぎ!」

「………!」



 ……集中しなくちゃ! と気合いを入れ直し、植物図鑑に視線を移す。

 ふむふむ……子供向けの植物図鑑だね。写真じゃなくて、絵が描かれているけど、植物の名前や特徴が書かれているみたい。



「あ! ププリュだ!」



 ラルクがめくる頁を見ていたので、ププリュが出て来た事が嬉しくて弾んだ声が出てしまう!



「リマ、よく分かったね」

「……ありがとう」



 ラルクにまた頭をよしよしと撫でられ、ラルクの甘やかさに心臓がどきどき苦しくなり、「ふぅ……」と隣のラルクに気付かれないように、そっと息を吐いた。



 ププリュよ、ププリュ、ププリュさん、あなたは一体何なのかしら……?



「……ラルク、読んでくれる?」

「うん、いいよ」



 ラルクが「じゃあ読むね……」と前置きをして、読み始めた。



「『ププリュ』とは、魔木〈魔力を含む木のこと〉である。ププリュの木は、太陽の光と水を好む。魔力も吸収することがあるが珍しい。花の色は白が多いが、赤など他の色もある。ププリュの木に花は咲くが、実をつけるものは珍しい。ププリュの実は回復薬(ポーション)としての効果は高いが、味の酸味が強く、現在はあまり使われていない……だよ」



 付け足すようにラルクが「ププリュの実を魔法測定後、魔力回復で食べたけど、すっぱくて全部は食べれなかったな……」と苦笑いして、教えてくれた。「そうなんだね……ありがとう」と、ラルクにお礼を言いながら考える。



 これは梅の木に間違いない。

 ちょっと情報が少ないけど……確信した。

 梅の花は梅の種類によって色が違うし、実の効果も魔力がない世界だって効能が沢山あるし、間違いないと思う。


 ただ、ププリュの実があまり成らないというのが不思議……! 梅の実なんて梅雨時期にスーパーに沢山売っていたから違和感があるよね?

 魔木に魔力があるから、小春の世界の梅の木と違うところなのかな……?



 それでも……! リマとしての目標が出来ました!



「ププリュの実を見てみたい!」



 両手をぐっと握りしめ、気合いを入れて言葉にして見ると、やる気が俄然湧くのが分かった! 優しい感触を頭に感じ、視線を移すと、「リマかわいい。僕も手伝ってあげる」と黄金色の瞳が、私を愛おしそうに見つめていて……優しい手が頭をぽんぽんと撫でていた。もう……心臓がどきどき苦しくて、辛いくらいだよ……?



「……ありがとう」



 熱が集まった顔で、小さな声で呟くと、くすりと笑う声がした……



 さあ、ププリュの実をつける為に、何から始めようかな?

なんで甘やかになっちゃう?

ラルクマジック?!

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