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79.その後で



春風の祝いが終わった次の日、ラルクと魔法学校から帰ったハルトと私は、秘密の家の前に集まった。


「始めようか?」

「そうだね。」

「そうだな。」


雪の季節、秘密の家を作った時、3年前からお母さんに春風の祝いが終わったらもう遊ばない事を3人で約束していた。

今年も雪の家の片付けを3人でやる事にした。カイルやマリィが手伝ってくれると言ったけど、どうしても3人でやりたくて断っている。


「このブランケットで昼寝すると気持ち良かったな。」

「ハルトの焼いたピザ美味しかったよね?」

「リマは刺繍しながらウトウトし始めるから見ててハラハラした。」


3人で雪の家の思い出を話しながら持ち込んでいた物を次々に運び出した。

最初に持ち込んだローテーブルやふわふわブランケット以外の物がとても多くて驚いた。ハルトは沢山の本や愛用のカップ、ラルクはマタルさんの課題やお気に入りの茶葉、私は植物(プランツェ)の図鑑や刺繍セット…他にも寛ぐ為のクッションや羽織物、ティーセットに遊び物。

前もって運び出せば片付けは簡単だったけど、終わりが近づいているって思いたくなくて、どれも運び出せなかった。

全部の荷物を運び出した秘密の家は、がらんと広く感じた。


次にスノーマンの飾りを3人で取り外す。

スノーマンのシルクハットをハルトが背伸びをして外す。今年も2人が魔法で積み上げてくれたスノーマンは凄く背が高かったんだ。


「ふふっ。今年もリマの歌が面白かったな?」

「適当な様でいて、毎年同じ歌だよね?」

「きゃあ!ハルト!ラルク!もう忘れて!」


やだやだと慌てて首を横に振る。


「確か、〜ふふん、ゆきだるま〜大きな〜ゆきだるま〜!だったね?」

ラルクが楽しそうにハミングして行く。ハルトとラルクがにやにや楽しそう。


「きゃあ!ラルクなんで覚えているの?!」


ラルクの口を全力で塞ごうと両手を伸ばすのに、片手で握られ、頭をぽんぽんと撫でられる。恥ずかしい!恥ずかしい!


「リマの事はなんでも覚えてるよ?」


くすりと笑うラルクはずるいと思う。


「ああ、確かその続きは、ゆきをころがして〜ゆきだるまは雪玉2つ〜スノーマンは雪玉3つ〜だから3つ作るよ〜るるる〜!だったかな?」


「きゃあ!ハルトも何で覚えてるの?忘れて!お願い!恥ずかしくてやだよ!」


ハルトの口を塞ぎたくてもラルクに両手を掴まれているので、ハルトのハミングを全部聞いてしまった……恥ずかしくて穴に埋まりたい!


「私は記憶力がいいからな?学年トップだぞ。」


ふふっと笑うハルト。

ラルクは私の頭をぽんと撫でると、私の手を離して、スノーマンの真っ赤なマフラーを取り外す。

真っ赤なマフラーは遠くからでも目立っていて、いつでも私達を歓迎している様に見えたんだ。


私は、スノーマンの腕の枝を背伸びして掴む。緑の手袋を取り外す。もう片方も同じ様に緑の手袋を取り外した。秘密の家から帰る時、振り返るとスノーマンがまたねって手を振ってくれている様に見えたんだ。


「…最後…だね?」

「そうだね。」

「ああ…。」


3人で黒いまん丸の目を、人参の鼻を、小豆の口を、ひとつひとつ宝物の様に手のひらに握りしめて行った。最後のひとつぶを私がそっと手のひらに包んだ。

愛らしいスノーマンはみっつの大きな雪玉になった。



「……」



ぽんぽんと優しく頭を撫でる手。

くしゃくしゃと優しく頭を撫でる手。



「……っく…」


寂しい…

終わってしまった。

泣くつもりなんか無いのに、笑顔で終わるつもりだったのに。秘密の家が楽しくて、外は寒くてもこの中はいつも暖かくて、楽しかった思い出が次々に溢れて、涙が止まらない……3年目なのに全然慣れない……


「はい。」

「ほら?」


2人がそっと差し出してくれる。




私が作ったお揃いのスノーマンの刺繍ハンカチ。




うん。泣いてちゃだめだ。

だって、すごくすごく楽しかったんだから。

笑顔でさよならしたい。



「…私も持ってるよ?」


きっと目が赤いままだけど、私も笑ってスノーマンの刺繍ハンカチを出した。



「また来年もやろう?」

「いいよ。」

「もちろん。」



「2人とも、ありがとう。」


ぽんぽんと優しく頭を撫でる手。

くしゃくしゃと優しく頭を撫でる手。



「2人ともお願いします。」

「後ろ向いてもいいよ?」

「無理するな?」


最後まで見届けたいから大丈夫だと首をゆっくり降った。

2人が、くすりと、ふふっと笑うと、分かったと頷いてくれる。




「「 熱 風 (ヴェルメ・ヴィント)」」



ラルクとハルトの手が、オレンジサファイアの様な橙色に強く光り、その強い橙色の光が、雪の家やスノーマンのみっつの大きな雪玉を覆う様に移動した。


最初はゆっくり溶けていく雪…溶け始めるとあっという間に雪山が水に戻って行った…どんどん溶けて土が見えて来た…


いつものエディンリーフ家の庭に戻った……



「すごくすごく楽しかったね。」

「絶対に来年も作ろうな。」

「雪の家、本当に楽しかった!」






私達の楽しくて暖かな冬が終わりを告げた———

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


ありがとうございます(*^_^*)

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