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72.初雪



「リマの大事なもの、取られないようにね?」

耳元で囁き、口付けを落とすとラルクは魔法移転をして帰って行った。




その夜は、世界が音を忘れてしまった様に静かに静かに雪が降り積もった……




「わあ!積もってる!」

雪降らしの雷が鳴った翌日の朝、窓から庭を見ると銀世界になっていた。


小春(前世)は雪国出身ではない為、こんなに沢山の雪はスキー場に行った時しか見る事は出来ない……そう、私はとっても興奮している…!



雪だるまは絶対に作るでしょ!

雪うさぎも可愛いだろうし…!



はっ!こんなに雪があるなら憧れているアレ(・・)も作れるかも…!





「何を作るか決まった?」

くすくすと笑う声がする方を見るとラルクとハルトが笑いながら立っていた。


「ラルク!ハルト!」



「リマの百面相は飽きないな?」

ハルトがくしゃくしゃと私の頭を撫でるとラルクがパシッと手を弾く。

「兄上?」

「細かい男は嫌われるぞ?」

ハルトがくしゃくしゃとラルクの頭も撫でる。



「ふふっ。それでリマは何が作りたいんだ?」

楽しそうなハルトも雪遊びがしたいみたい!



「かまくら!」



「…かまくらってなんだ?」

ハルトもラルクも首を傾げている。

同じ仕草に兄弟なんだなと感じて、ふふふと笑ってしまう。かまくらはこの世界にはないみたいだ。


「かまくらはね、雪のお家なんだよ!その中で過ごして遊ぶの!」



「わざわざ作らなくても家で遊べばいいのでは…?」


ハルトが益々解らないと首を傾げるけど、それは違うよハルト!こんなに雪があるのに作らないなんて勿体ないよ!


「みんなで作るときっと楽しいよ!ねっ?お願い!」

両手をパチンと合わせて2人にお願いする。



「いいよ。リマ、一緒に作ろう?…兄上は帰ってもいいですよ?」

ラルクが私の頭をぽんぽん撫でて賛成してくれる。


「いや、折角だからかまくら(・・・・)とやらを作ってみよう。何事も経験だからな。」


「ラルク、ハルト、ありがとう!」


2人が一緒ならきっと出来ると思うんだ!



2人にかまくらがどういう物か説明をする。

(小春)も作った事も実物も見た事がないので、ほとんど想像なんだけど…ね。

私の読んだ本には雪の精霊を祀ってあって、ドーム形の雪の家になっている事。座って寛げて、遊んだり、食べたり出来ると身振り手振りを交えて説明をする……




「……わかった。とにかく中で快適に過ごせる様な雪の家を作ればいいんだろう?」



私のぐだくだな説明を聞いていたハルトがまとめた…ごめん、私、説明が下手だった…。



「ラルク!」


ハルトがラルクに話し掛けて、何やら相談を始める。

あれ?私は…?

混ぜて混ぜて!


ラルクの洋服の裾をくいっと引っ張ると、ラルクがハルトと話し合いを進めたまま、私の頭をいい子いい子するように撫でる。


…あれ?


ハルト?と洋服の裾をくいっと引っ張ると、ハルトがちらりと私を見て、頭をくしゃくしゃと撫で、ラルクがパシッと手を弾くが、そのままラルクと話しを進めている。


…あれあれ?

…私、混ぜてもらえてない…?




「よし、ラルク始めるよう!」

「はい、兄上!」


私は置いてけぼりのまま、ラルクとハルトは雪の積もっている庭に広がった。


雪除けの魔道具を使った我が家(エディンリーフ)の庭は、お隣の庭から我が家の庭まで歩く道と回復薬(ポーション)で必要な『ラルクと私の檸檬の木』と『生姜』には雪が降らないようになっている。

雪除けの魔道具を避けるように横に雪山が出来上がっているのだ。



「ラルク準備はいいか?」

「いつでも大丈夫ですよ、兄上!」




集 合 (メンゲ)


ハルトの手がシトリンのような透明な黄色に光ると、我が家(エディンリーフ)の庭の雪が集まり大きな雪山のように移動を始めた。


風 穴 (ヴィント・ロッホ)


ラルクの手が透明な黄色に光ると、移動中の雪山に空気の大玉が入ったような穴が空き、更に雪山が大玉を覆うように移動していく。


圧 力 (ドルック)


ハルトの手が再び透明な黄色に光ると、ふわふわしていた雪山が押さえつけられたように縮んで行き、先程ラルクが創り出した空気の大玉の形に沿うように形を作って行く。


「ラルク、そのまま力を抜くな!」

「はい、兄上!」



建 築 (アルヒテクトゥーア)


ハルトの手が再び透明な黄色に光ると、雪山が削られ、縁取られ、ただの雪山がドーム形のお洒落な家の形に変わっていった。



「ラルク、もういいよ。」

「………はい。」



ハルトはまだ手を動かし、雪山を削ったり、細かな細工を続けている。




ラルクを見ると額に汗をかいていた…

汗を拭うラルクはカームの刺繍ハンカチを使っていた…!

……嬉しい…すごく嬉しい…!

胸がきゅうっとなるのが分かり、顔が緩む…。

ラルクの近くに駆け寄り、飛び付く様に腕をぎゅっと掴む。


「…リマ、これは兄上には内緒だよ…?」


ラルクがハンカチを持ったまま、耳元で囁くので、慌ててこくんと頷く。


「…また作ってくれる…?」


…顔に熱が集まるのが分かる。

…嬉しい…顔が緩んでいくのが分かる。


「リマ、かわいい。」


おでこに、ちゅっと口付けを落される……






「リマ、どうだ?」



ハルトが得意そうに指差す先に、雪の家が出来ていた…!



…かまくらのレベルを超えてる……




「……すごい…!」



……みんなで作ろうって言ったから少しだけ仲間外れだなと思ったのは内緒だよ…?




「ふふっ。まだ完成じゃないからリマに手伝って欲しいんだよ?」


「え!本当?」


ハルトがふふっと笑いながら、おいでおいでと手招きするのでハルトの側まで歩く。


「まだ扉がないだろう?どこに造る?」


ハルトに言われ、何処がいいかな?と氷の家をぐるぐる回って考える。


「ここがいいかな?」

「大きさは?」

「これくらい!」

腕を動かし、ハルトに説明をする。


「分かった。リマ、私の手首を掴んでもう一度やってごらん?」


「…?」



「兄上!それは私がやります!」


「でもラルクは疲れているだろう?」


「大丈夫です!代わって下さい!」


「ふふっ、いいよ?」


無理しないようにねとハルトがラルクの頭をくしゃくしゃと撫でる。



「リマ、一緒にやろう?」

「うん!」


ラルクが私の頬っぺたをするっと撫でる。



「| 疾 風 刃 《シュタイフ・ブリーゼ》」


ラルクの手が透明な黄色に光ると、風がひゅうっと風が乱暴に頬を走っていく…



「リマ、動かして!」


「うん!」


ラルクの手を使って扉を描いて行くと風の力でどんどん切れて行く。電動ノコギリみたい…!


「出来た!」


「うん。上手だったよ?」


ラルクが頭をぽんぽんと撫でてくれるので嬉しくなる。


「ちゃんとみんな(・・・)で作っただろう?」

ハルトがふふっと笑い、ラルクはくすくす笑った。






…2人共、エスパーなの?



「…ありがとう…!」



憧れのかまくらが出来ました——

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


ポイントが1000を超えました◎

評価やブックマークを付けてくれた皆様、本当に本当にありがとうございます(*^-^*)


雪遊びのかまくらが長くなりましたので、分けることにしました。



今日もお疲れ様でした。

穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。

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