67.青空マルシェ
カイルに案内されて路面店街に入ると青空マルシェの様にぎっしりと店が並んでいた。
路面店街こと青空マルシェは大まかに3つに分かれているらしい。
今私たちがいるのは、野菜や肉、チーズなどを販売する生鮮マルシェ。
次に石鹸や布、籠などを販売する日用品マルシェ。
最後が総菜やワインなどその場で食べたり持ち帰りが出来るフードマルシェ。
秋晴れの休日の今日は、特に賑わっていた様で青空マルシェは人通りも多く活気に溢れている。
「ニーナ、手をつなごっか?」
「うん!」
フレッドのラルクと顔を見合わせ手を繋いだ。ラルクと生鮮マルシェを歩くだけでわくわくする。
新鮮な野菜が木箱に入り値札がさしてあるお店や麻の袋に様々な穀物を置くお店、チーズが所狭しと並ぶお店やソーセージを吊り下げるお店もある。
生鮮マルシェは通り過ぎる予定だったけど、
「よおカイル!」
「カイルさん!」
「カイル、寄ってけよ。」
「カイルさん、これ食べてって。」
カイルの顔が広すぎて少し歩くと誰かに呼び止められ、味見させて貰うのを繰り返している。
「魔法学校の頃から通ってるからな。同級生やその親が商売していたり、エディンリーフ店の付き合いもあるから知り合いが増えた。」
…カイルの学生時代かぁ。
その頃からエスパーだったのかな?
「くっくっ。どうだろうな?」
…きっとエスパーだったね…!
生鮮マルシェをようやく抜け、日用品マルシェに入る。
「見たい物があったら見ていいからな。」
「うん!」
ここでもカイルは声を掛けられ、石鹸の香りを嗅いだり布や糸の違いを教えてくれたりした。
「カイルさん!このお店見てもいいですか?」
気になる籠バックのお店を見つけた。
「いいぞ。こんにちは。少し見せてもらうよ。」
「おやカイルさん、珍しいね。どうぞどうぞ!」
カイルが挨拶すると籠屋のおばさんが手招きしてくれる。
実用的な籠バックが並ぶ中、奥に刺繍されている小さなコロンとした籠バックが目に留まったのだ。
「これか?」
「そうです!」
エスパーカイルは指も指さないのに奥の籠バックを取って見せてくれた。
小さなデイジーのお花の刺繍を散らした籠、ブーケになっている花を刺繍した籠、真ん中に刺繍のお花を飾り蓋が出来るようになっている籠。
遠目にも可愛かったけど、手に取ると刺繍がとても丁寧にされていてお花が咲いているみたいで凄く可愛い。
「かわいい……!」
「確かに珍しいな。どうしたんだい?」
「これはね、娘が作ったんだよ。刺繍する分、値段が高くて全然売れないんだけどね。」
「ニーナどうする?」
試すようにカイルがにやにや聞いて来た。
今回、お母さんが軍資金として渡してくれたお金は銀貨2枚。子供が沢山お金持っていると目立つからね。
刺繍籠バックは銀貨1枚。
普通の籠バックは銅貨3枚くらいだから3倍くらい高いのか…。
うーん、いきなり軍資金の半分も使って良いのか?だけどとっても可愛いしなぁ…。
「何を悩んでいるんだ?気に入ったなら全部買えばいいだろう?」
…お金に苦労した事がないハルト王子様め!
…無駄遣いはだめだよ!めっ!
「ミンツェ村の子供は、豪快だね!」
あははっとおばさんが豪快に笑った。
「ニーナはどれが欲しいの?」
ラルクがニーナに似合うのはどれかな?と一緒に見てくれるのが嬉しくて顔が緩む。どれも可愛いけど、僕はデイジーが似合うと思うよと言葉を添えてくれる。
「おばさん、これ買います!」
カイルに軍資金の入ったお財布を貰い、銀貨1枚をおばさんに渡しデイジーの籠バックを受け取った。
「ニーナかわいいの買えてよかったね?」
「うん!」
ラルクがぽんぽんと頭を撫でてくれるがマルシェみたいな場所だと恥ずかしい…!
またラルクと手を繋ぎ、ラルクと選んだデイジーの籠バックをるんるんと揺らしフードマルシェに入る。
「食べたい物があれば言うんだぞ。」
ランチをフードマルシェで食べた後、専門店街へ移動する予定なのだ。
香ばしい匂いが漂って来たり、ふんわり甘い香りも漂って来て、お腹が空いて来た!
ハルトは食べたい物を見つけてはどんどん購入し、ラルクも気になる物をカイルに頼んで買って行く。
私は焼き鳥みたいな串焼きや色々な果物の砂糖がけ、パンにチーズとソーセージを挟んだ物を買った。
奥の広場にテーブルや椅子があり、自由に食べる事が出来るらしく買った物を持って移動するが、秋晴れの休日は混雑していて座る所が無さそうだった。
「カイルさん、こっちどうぞ。」
「すまない。助かるよ。」
カイルが親子連れにお礼を言い、私達は相席をさせて貰った。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
マルシェの買い物が長くて話しが進まなかったです。
次は進むつもりです◎
今日もお疲れ様でした。
安らぎの夜が訪れますように。お休みなさい。