66.お忍びデート
「リマお嬢様、ご説明頂けますよね?」
次の朝、カイルの第一声がこれだった…。
絶対零度の視線を受けて目をすぅーと逸らすもリマお嬢様?と言われ、説明を始める……
◇ ◇ ◇
コスモスの花畑から王宮の厩舎に戻って来るとキラキラ王子様を転職したハルト魔王様が仁王立ちで待っていた。
「私を置いて行くとは2人共酷いな?」
いや、元々約束していないんだけど…?と思ったけど、ハルト魔王には勿論通じず次に出掛ける時は必ず一緒に行く事を私とラルクは約束させられたのだ。
それとは別に私はアズーキのお菓子も王宮に遊びに来る時にお土産で持って来る様に約束させられた…。
……ハルト、アズーキが気に入ったんだね。
「と言う事がありまして…今日はハルトも一緒となりました……?」
「何でよりによって今日なんだよ?俺が第一王太子と第二王子を連れて案内ってどんな嫌がらせだよ……。」
カイルが心底嫌そうにため息をつくので、ごめんね…と謝った。
「まあそっちは影も沢山付くだろうし大丈夫だろ?気にしなくていいぞ。……それより俺が聞いているのはお前の顔だ!」
「えっと………。」
カイルの言う顔はきっと寝不足な顔色の事だよね…?
コスモスの花畑から戻りベッドに潜るとコスモスの花畑の事を思い出して眠れなかった…
目を瞑るとラルクの近づく顔や頬に添えられた手の温度、自分の煩い心臓の音に瞼を閉じる前に見たラルクの熱のある眼差し………それに…ラルクの唇の感触………。
自分の指でふにっと唇を触ってもラルクの唇と違うと残念に思う自分に真っ赤になった。
一瞬の事だったのに永遠に続くと思う程に感じた口付け……
…初めての口付けだったんだもん。
…小春もした事ないままだったから本当に初めてだったんだよね。
…あんな素敵な場所で…だよ。
…相手はラルク……
…心臓がきゅうぅと締め付けられる様に苦しいのにもっともっと締め付けられたいと思う自分も居て、私自身どうしたらいいのか分からない。
ふわふわの手触りのブランケットを抱き枕みたいに抱きしめ、ベッドを左右にごろごろごろんと3回落ちてしまった…最後は顔面から落ちて痛くて転げ回ることになったけど。
「…理由は分かったからもういい。とりあえずこれを飲んどけ。」
えっ分かるの?!
いやいや、分からなくていいよ!
エスパー過ぎるよ!
くっくっと笑うカイルにププリュサイダー回復薬を手渡されこくこくと飲み干すと寝不足の気だるさや顔面の痛みがすぅーと取れた。
「よし。じゃあ着替えるぞ。」
こくんと頷く間も無く、カイルがミンツェ村の子供の洋服に着替えさせてくれる。
茶色の膝丈のスカートにクリーム色のぽってりした長袖を着る。三つ編みのおさげの髪型は素朴で可愛い。
「ラルクもハルトもミンツェ村の子供の洋服なの?」
「ああ。ハルト様は来年魔法学校に入る予定だし、お前達2人は魔法学校入学が決まっているから、ミンツェ村の子供に王都を案内しているってことにするからな」
今日はラルクとお忍びお買い物デートなのだ!
ラルクに髪留めを贈ると宣言されたけど、何でもないのに貰うのはどうしても気が引けて…一緒に買い物に行けば、金額もさり気なく分かりお返しもしやすいなと考えたのだ。
お母さんに相談したらカイルが一緒なら路面店や専門店も勉強になるからいいわよと軍資金とお許しも貰えた。うふふ、お母さんありがとう。
ラルクもハルトも、国王陛下にラシャドル王国は治安が良いのだから問題ないと言われたらしい。治安大事だね!
私達の普段の服装だと目立つので、今回は溶け込むように変装する事になったのだ。 ふりふりの洋服は市場には向いていないもんね。
「リマ、おまたせ!」
変装をしたラルクがやって来た。
こげ茶のズボンにカーキ色の長袖を着ている。
変装をしているけど、ラルクの品の良さや格好良さは滲み出ているよね!
「リマ、見過ぎ!」
くすりと笑うとポンポンと頭を撫でられる。
あれ?ハルトは…?
隣の人もミンツェ村の洋服を着ているが……?
「ハルト…だよね?」
「ふふっ。金色の髪と蒼い目は目立つからな。王宮魔導師に少々変えて貰ったんだ。」
ハルトはお父さんみたいなガーネットの赤色の髪、瞳はダークチョコレート色に変装していた。
変装が完璧だ…ハルト、慣れてる……?
「ハルトフレート様、ラルクフレート様、今回案内致しますカイル・ミンツェでございます。」
カイルが2人に挨拶を終えると呼び名の確認を始めた。
『ラルクはフレッド』『ハルトはジャン』 『私はニーナ』に決まった。
「カイルさん、今日は案内お願いします。」
フレッドがミンツェ村のカイルさんに言うと
「任せとけ!」
カイルさんがにやりと笑った。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
今日もお疲れ様でした◎
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。















