65.桃色の告白
ラルクにエスコートされ小さな草原に戻った。
マタルさんがカームとフェアと待っていた。
再びマタルさんにフェアに乗せて貰い、2頭は走り出した。
草原をカームとフェアが横に並んで走るので、カームに乗るラルクを見る。
黒馬のカームに乗るラルクは格好良かった…!
白のシャツ、黒のジャケット、墨を薄めたようなやや薄い灰色の様な薄墨色のパンツ、青みを含んだ気品のある黒のブーツを合わせている。それがラルクに凄く合っている。
カームを操るラルクの手や前を見る真剣な眼差し…
夜空みたいな黒のジャケットにお月様みたいな優しい黄金色の瞳………
…
…!
「リマ、真っ赤だよ?」
くすっと笑われる。
ラルクに見惚れていたこと気付かれてる…よね?…そんなに赤い?と慌てて片手を頬に当てようとすると危ないですよとマタルさんに手を上から抑えられる。
ごめんなさいとマタルさんに謝ると大丈夫ですよと手を離される。
「マタル、リマを頼むよ。」
「かしこまりました。」
ラルクとカームが先に走り出す。
小さな草原はあっという間に抜けて、再び木立の間隔が広い王宮の森に入る。
森を進むと鳥の鳴き声が聞こえる。
綺麗な細い川を渡り、木漏れ日の中を進んだ。
少し疲れたなと思う頃…
「リマ、あそこを抜けたら着くよ!」
ラルクが振り向いて教えてくれたので、ありがとうと笑顔で応える。
ラルクとカームが森を抜けた場所で止まるのが見えた。
フェアが森を抜ける……
「…きれい……!」
さわやかな秋風に揺れる一面のコスモスの花畑だった。
可憐なピンク色のコスモスが揺れる様子は幻想的で、森を抜けた先にこんな素敵な場所があると思っていなかったので驚いて言葉にならない。
「リマ、気に入った?」
こくんと頷くので精一杯…。
感動すると言葉は出なくなるみたい…。
カームとフェアが並んで歩き、咲き誇るピンク色のコスモスを楽しむ。
フェアの上から見るとピンクの絨毯みたいで、見ているだけで心穏やかな気持ちになる。
「リマ、おいで。」
マタルさんに下ろして貰った私をラルクが案内してくれて、 居心地の良さそうな敷物に2人で並んで座る。コスモスの妖精になったみたい。
「ラルク、今日はありがとう!こんなにきれいなコスモス初めて見たよ…!」
ラルクに嬉しい感謝の気持ちを伝えたくて仕方ない。
「どういたしまして。」
ラルクがポンポンと頭を撫でて笑ってくれるのが嬉しくて顔が緩むのが分かる。
「リマはこれを飲んで?」
ラルクが『ピンク色ジンジャーエール回復薬』を渡してくれる。
ありがとうと受け取り、こくこくと飲み干すとすぅーと体が楽になった。思っていたより疲れていたみたい…?
「うん。顔色が良くなったね。」
黄金色の瞳に覗き込まれ、顔に熱が集まった様子を見てくすりと笑った。
「お昼にしようか?」
うん!お腹ぺこぺこ!
可憐なコスモスの花畑でピクニック出来るなんてすごく嬉しいなと思い、また顔が緩むのが分かる。
ラルクが用意してくれたサンドイッチや果物を2人で食べた。ランチをしながら沢山話しをした。
ラルクは乗馬を3歳から始めていて、カームは昔から乗っている愛馬な事やカームとスピードを出して風を切るように走ると凄く気持ちがいい事を教えてくれる。
ラルクは普段マタルさんや家庭教師の先生に師事して貰っていて、算術と地理が得意な事。
剣術も得意だから将来は騎士として兄上を支えるのもひとつの道として考えている事。
目玉焼きは半熟が好きな事、甘いものが好きだけど紅茶は砂糖なしのストレートが好みな事。
「今日のリマは質問ばっかりだね?」
くすりと笑うとピンク色のコスモスを耳の横に挿し、リマは花が似合うねと頭を撫でてくれる。
…
…
質問ばかりしていたのに気付き、少し気まずい…。
少しぬるくなってしまった蜂蜜たっぷりのミルクティーをこくんと飲む。
優しい甘さが喉を滑り降りる。
甘さが滑るように口から自然と言葉が漏れる。
「ラルクの好きなものをもっと知りたいの…また教えてくれる…?」
ラルクの事をもっと知りたいな?
ずっと一緒に居たのに知らない事が沢山なんだなって気付いたの…。
「おいで?」
返事の代わりにラルクがぽんぽんと優しく足の間をたたく。
こくんと頷き、ラルクの足の間に収まるとぎゅっと抱きしめられる。爽やかでほろ苦いレモンタイムの香りに包まれる。
「リマがあったかい。」
「…ラルクもあったかいよ…?」
「僕の好きなものは、リマだよ。」
「リマの好きなものも教えて?」
「…ラルク…」
「リマ、大好きだよ。」
——甘やかな桃色の可憐なコスモスに見守られて、私たちは口づけを交わした…。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
2人のピクニックを楽しめて頂けたら嬉しいです◎
今日は涼しいので過ごしやすそうですね。
今日も一日頑張って行きましょう!















