62.秋の味
ぱちぱちと木が爆ぜる音を聞きながら焚き火を見る。今は風がほとんどないから煙もゆっくりと上へ立ち昇る。
さつまいも掘りの洋服の汚れはマリィが洗浄の魔法で綺麗にしてくれて、暑さを和らげる敷物の上に座って焚き火を眺めていると眠気がどこからか遊びにやって来る。
くいっ………
「リマ使って?」
くすりと笑われて、肩に頭が寄りかかった事に気付いた。
ありがとうと返事をしたかったけど、目を開けていられずそのまま目を閉じた。頭が安定すると寝やすいよね…?
くいっ………
「リマこちらを使って?」
くいっ………
「リマこっちを使って?」
……!?
「おきましたっ!!」
うとうとしてごめんなさい!
ラルクとハルト様を見ると2人とも顔に手を押さえて横を向いて笑っている…2人共笑い方がそっくり!
2人の肩を頭がボールみたいに行ったり来たりしていたらしい…恥ずかしい…。
「そろそろ出来たかな?」
気まずくてマリィに話しかけるともう出来てますよと困った顔で言われる。2人は私が起きなくて困っているマリィを見て起こしてくれたみたい。ごめんなさい。
「ん〜美味しい!」
アルミホイルをそっと外し、さつまいもを割るとふわぁと蒸気が立ち上る。熱々のさつまいもを少しふぅふぅしてぱくっと頬張ると、ねっとりしたさつまいもの甘さが口いっぱい広がって凄く美味しい。
「ラルクもハルト様もどうぞ?」
2人に1個ずつ渡すとラルクも同じように食べ始める。
「甘くて美味しいね。」
ラルクが私の頭をよしよしと言うように撫でてくれる。ハルト様をちらりと見るとまだアルミホイルのままなので、王太子様はこういう食べ方は苦手かな?と思い、ハルト様?と声を掛けてハルト様のさつまいもをむいてあげて差し出す。
「焼き芋って言うんです。美味しいですよ?」
「決めた!リマは私のことをハルトと呼び捨てで呼んで?」
ハルト様の片手が私の焼き芋を受け取り、もう片手で頭をくしゃりと撫でる。ラルクがパシッとハルト様の手を払う。
「ラルクは、私がリマの頭を撫でる時に睨まないようにしてね?」
ふふっとハルト様が笑うとまた私の頭をくしゃくしゃと撫でるけど、ラルクがパシッと手を払う。
「ラルク?」
「約束通り、睨んでませんよ?それに手を払わないとは言われていません。」
ふふってハルト様が笑い、確かに笑顔のままだったね?怖かったけど?と笑い、手にした焼き芋を優雅にひと口食べた。
焼き芋を食べるの姿に気品があるって凄いなぁと見ていたら、ついてるよ?と私の口元の焼き芋を取ってくれる。
「ふふっ。リマはハリネズミみたいで面白いね?」
トゲトゲしてるってこと?
あんまり褒められた気はしないけど…?
「ハルト様、焼き芋美味しいですか?」
「……リマ?」
「えっと……?」
「リマは未来の家族なのに余所余所しいのは悲しいな?」
「……?」
「あれ?リマは私たちの知らない人と恋に落ちるつもりなの?」
…?
……あれ?
「……ハルト!!…焼き芋は美味しい?」
「ふふっ。よく出来ました。うん。とても美味しいよ。」
ハルトは優雅に焼き芋をペロリと1個食べ終えた。
ラルクも食べ終わっていたので、焚き火に入れていたもうひとつもマリィに出して貰う。
「これはさっきと同じように割ってからバターを入れると美味しいよ!」
折角の焚き火だから 『じゃがバター』も作った。
アルミホイルをむいてじゃがいもを出し、少し割ってたっぷりのバターを入れる。
じゃがいもの熱でバターがじゅわりと溶け出し、バターとじゃがいもの良い香りが漂う。
フォークで刺してパクリと食べると熱々でバターがじゅわりと染みていて凄く美味しい。
焚き火で火を通したから香りも一段といい。
「ん〜しあわせ!」
2人にじゃがいもを渡したのに食べないから変だなと思い首を傾げる。美味しくなさそう…かな?
「リマが作って?」
ラルクが可愛い顔でおねだりする…こんな風に甘えてくるラルクは初めてで凄く驚く…!
こくんと頷き、ラルクのじゃがいもを受け取り、同じように作って渡してあげる。
ラルクがちょっと残念そうな顔をしたけど、同じにしたよ?と小首を傾げるとくすりと笑い、ありがとうと受け取ってくれた。
「美味しいね。」
ぱくりと食べるとラルクが笑ってくれたので安心した。
「リマ?私の分は?」
ハルトはやっぱりこういう事に慣れていないんだなぁと思って、同じようにじゃがバターを作ってハルトに差し出す。
…
…?
「リマ、こういう時はあーんだよ?」
ハルトが口を開けてあーんだよと言う……
「…自分でたべてくださいっ!」
押し付けるようにじゃがバターを渡すとリマは本当にハリネズミみたいだなぁと笑い、じゃがバターを優雅に食べる。
「ああ、こちらも美味しいね。ラルクはいつもこうやってリマと美味しい物を食べていたの?私も来ていれば良かったな。」
ハルト様の食いしん坊はブレないね!
2人共美味しそうに食べてくれて良かった。
マリィに最後の物をお願いして、焚き火から取り出してもらった。
最後の仕上げをするのでマリィに手伝って貰う。
最後はデザートです。
これは小春で食べて大好きだった味。
アルミホイルに包まれている芯をくり抜きシナモンを刺しておいたアップフェルを取り出して、今朝早くに作っておいたアイスクリームを乗せる。
アップフェルの柔らかくてジューシーな果肉の甘さと温かさにアイスクリームの冷たさが合わさって、とっても美味しいのだ!
アイスクリームが溶けてしまうので、マリィに手伝って貰い、3人分を一緒に作り終え、2人に渡す。
「ひと口食べて甘さが足りなければ、蜂蜜を足しても美味しいよ?」
そう2人に告げて、ぱくりと食べる。
「ん〜しあわせ!」
ラルクはそのまま食べ進めていて、ハルトは蜂蜜を足して食べていた。ハルトはアズーキも好きだったし甘党なのかもね?
「このアイスクリームは美味しいな?リマが作ったのか?」
「うん。美味しいよね?」
「……リマ、やっぱり私の嫁に来ないか?」
「兄上だめです!」
ラルクがハルトに被せるように答えてくれる。
「ふふっ。リマ、ご馳走さま。私は少しお祖父様に用事があるからこれで失礼させてもらうよ。また今度。」
ハルトがくしゃくしゃと私の頭を撫でるとラルクがその手をパシッと払い、兄上は早く行って下さいと言った。
優雅に歩いてハルトは我が家の庭から隣の庭へ帰って行った。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
今日は巨峰を食べました◎
果物の中で葡萄が好きです。
甘くて美味しい。
今日も頑張って行きましょう!















