6.ドキドキの味
ラルクの甘々攻撃
ラルクに何度も「本当に寝なくて大丈夫なの?」と確認されたけど、顔が赤いのはラルクのせいなの……! 少しでも体調が悪くなったら言うことを約束した。
マリィがふかふかのソファがある応接室に、お茶の準備をしてくれる。ラルクが紅茶を一口飲み、ティーカップを綺麗な仕草で置くと、微笑みながら尋ねてくる。
「リマは庭でなにをしていたの?」
「……えっと、ププリュの木を見ていたの」
ラルクの甘い黄金色の瞳に見つめられ、また体温が上がるのが分かった……! ラルクの優しい黄金色の瞳と視線が合うのが嬉しいのに、真っ直ぐ見つめ合うことは出来ず、ちらりとラルクを見た後、ティーカップの蜂蜜たっぷりのミルクティーを見つめて答えた。
「それでププリュの木を見ていたんだね」
ミルクティーに頷くと、桃色の可憐な花と葉っぱの絵で縁取られたティーカップに、手を添えたままの私の手をそっとラルクが引き離し、私の手の上にラルクの手を重ねた!
「……っ!」
「やっとこっちを向いたね?」
「……え?」
ラルクの言葉の意味が分からなくて、首を傾げると、「リマ、かわいい」とくすりとラルクが笑う。
「ずっとリマと目が合わないから、驚かせたら僕を見るかなと思ってね?」
イタズラに成功した嬉しそうな顔は、私を覗き込む上目遣いと相まって、私の心臓を跳ねさせるのに充分過ぎた……! リマちゃんは、ラルクのこんな甘やかな態度や言葉を平気で見つめ合って、受け取っていたの? 心臓がドキドキ煩くて、リマの記憶もよく分からなくて、困ってしまう……。
甘やかな距離感なのは、子供だから……? この世界はこれが普通だったら……どうしよう、私、ついていける自信がないよ!
今もラルクと目が合っている事が、恥ずかしくて、目を逸らしたいし……顔は熱を持っていて、絶対に真っ赤だと思う。ラルクに言われた言葉に、なんて返事をしたらいいのか、頭が真っ白で、目も涙目だと思う……。
私の困った顔を見て、ラルクがくすりと笑う。重ねていない手を、私の頭にぽんと置き、「ごめんね?」とよしよしと撫でられた。重ねていた手をぎゅっと握られて、
「リマ、ププリュの続きをおしえて?」
ラルクの黄金色の瞳とまた目が合ってドキッとしたが……ププリュのことを思い出した! ププリュのことをラルクに伝えたくて、目を見つめる。
「マリィにね、ププリュがどんな木なのか聞いていたの! ププリュは、魔木なんだって! エディンリーフのププリュの木は、花も実が出来たことがないみたいなんだ……? あとでマリィが本を見せてくれるから、とっても楽しみなの」
そうだった、そうだった!
ラルクにドキドキし過ぎて忘れていたけど……梅の木ことププリュが、どんな木なのか気になっていたの! マリィに早く本を見せてもらいたいな……!
勢いよく一気に言ったら、ラルクに頭を撫でられて「リマかわいい」と言われてしまう。
「ププリュの本が楽しみなんだね。昼食を食べ終えたら、一緒にププリュの本を見ようか?」
「うん!」
ラルクのかわいいは口癖だと思う! きっと、そうに違いない。そう思わないと心臓がもたないよ……!
言われて気付いたけど、もうお昼過ぎの時間だった。急にお腹も空いて来たな……! でも、早くププリュの本も見たいから、急いで食べなくちゃ……と思っていると、ラルクに「リマ、よく噛んで、ゆっくり食べてね?」とくすくすと笑われた……!
マリィが2人分のお昼ご飯を用意してくれたので、一緒に食べ始める。
ラルクが私の食べる様子をにこにこと見るのが、落ち着かない……!
「リマ、ついてるよ?」
くすりと笑ったラルクが、私の頬についたパン屑を取ってくれたので、「……ありがとう」と恥ずかしくて小さな声でお礼を言うと、そのパン屑をぱくりと自分の口に入れて、食べてしまった!
「っ……!」
「ごちそうさま」
私は、真っ赤な顔で俯くしか出来なかった……
ラルクってこんなに甘い人だったのか!