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55.兄上



「私とリマが会うのは3回目なんだけど、覚えてるかな?」


 ハルト様の呼び方がリマニーナ嬢からリマに変わっていた。



「……ハルト様とですか?」



 金髪碧眼のキラキラした王子様に会っていたら気付きそうなんだけど……全く記憶になくて、首を傾げる。



「リマが3歳になる前にラルクと3人で会った事があるんだよね」

「そうなんですか……」



 ハルト様は楽しそうだけど、そんな小さい頃の事は覚えているわけないよ!



「あの頃のラルクはね、まだ私の事を『にーたま』としか言えなくて……舌足らずでね。ふふ」



 ハルト様、にやにやしてちょっと気持ち悪い……金髪碧眼でキラキラしてる王子様だから余計に気持ち悪さが引き立つというか……?



「年齢的に私もラルクも丁度良いからね。両親同士が引き合わせたんだよね」



 何の話をしているのかしら……?



「ラルクがリマを見た時に固まってね……! ラルクが恋に落ちる瞬間をこの目で見たよ。ふふっ」



  ……いや、なんでハルト様が照れてるんですか? ここは、私が照れる所なんじゃないでしょうか? ハルト様が照れるから私が照れ損ねたよ!

 ……この人、変わってる……いや、残念……かな?

 ここにキラキラ残念王子様がいますよー!



「あれから弟の恋路の邪魔はしたくないから、リマには会いに行ってなかったんだ。私が行って、ラルクが悲しむことになったらだめだろう?」

「……ハルト様を選ぶことはないような……?」



 まあ確かに金髪碧眼でキラキラな王子様のハルト様はもてると思う。だけど、私は見てるだけでお腹いっぱいな顔だよ。顔がもの凄く好みだったら分からないけど……いや、例えそうだったとしても、ハルト様を好きになるかな? 考えてみたけど、やっぱりないかな?



「くくっ。リマ、もう一度、私を見てくれる?」



 ……え……やだ!

 でも第1王子に逆らえないから嫌々見てみる……



 ハルト様の目が少し揺れて……る?



「私のことをどう思う……?」



 金髪碧眼でキラキラだけど、残念な王子様だけど、弟想いな所もあって、王宮のお庭に詳しくて、丁寧に教えてくれるいい人!



「ぶはっ!……リマ、君は正直でいいね。これからもラルクと仲良くしてあげてね?」



 王子様、吹き出した?

 え? 思っただけでらまだ何も変なこと言ってないよね……? 心の声が漏れてたとか? 変な汗が背中を伝う……



「ハルト兄上!」

「ああ、ラルク、早かったね?」

「兄上、リマに変な魔法使ってないでしょうね?」

「うん? 変な魔法は使わないよ。弟の大切な子に変なことはしないよ。ねえリマ?」



 ハルト様の目が揺らいだ気はしたが、魔法はかけられてないと思い、頷くと、ラルクが安心した顔になった。ラルクが私とハルト様の間に割り込むように座る。



「兄上、もう大丈夫ですよ?」



 ラルクが私の右手にそっと自分の左手を乗せ、ほんの少し握る。ラルクの手が熱くて、その熱さにホッと安心する。



「ええっ? リマが持って来たお土産を私も一緒に食べてもいいだろう?」



 ハルト様がおどけて言うので、ラルクが「いいですよ……」と渋々了承すると、マタルさんがサッと現れて、私がお土産に持って来た瓶を並べてくれた。



「あのね、アズーキを煮た『金時』と『木苺シロップ』と『檸檬シロップ』があります。これを雪みたいな氷の上にかけて食べる『かき氷』という冷たい甘味を持ってきました」



 私は2人にかき氷の説明をする。

 カイルに『ミルク金時』をお土産にと言われた後、かき氷なら苺と檸檬も外せないよね? と思い、苺の代わりに木苺畑の木苺とラルクと私の檸檬の木のレモンを収穫して、《おいしくなーれ魔法》で作って来たのだ。



「ラルクはどれがいい?」

「私は金時にするよ!」



 ラルクに聞いたのに、ハルト様が答えたので、マタルさんにお願いすると『ミルク金時のかき氷』をサッと作ってくれた。



「おお!これは冷たくて美味しいな。アズーキがこんなに美味しいなんて……!」



 ハルト様はそこからは無言で食べていた。



「じゃあ僕は木苺シロップにするよ。」



 ラルクがハルト様を見ながら違うものを選び、マタルさんが『木苺ミルクのかき氷』を作ってくれた。見た目は苺シロップのかき氷だね。ラルクがスプーンで木苺シロップとミルクのかかっているふわふわ氷をすくい、ひと口食べる。



「うん!冷たくて美味しいね。リマ、ありがとう。」


 ラルクが優しく見つめてお礼を言うので、照れてしまう。


「リマはどれにするの?」

「ああ、そうだな? 私はラルクと同じ『木苺シロップ』でおかわりだ」



 ラルクに聞かれていないのにハルト様は次をおかわりしている。 かき氷が気に入ったみたいで良かったけどね。



「私は檸檬シロップにするね。マタルさん、お願いします」



  マタルさんは、手早くハルト様に『木苺ミルクのかき氷』を渡すと、私の『檸檬ミルクのかき氷』を作ってくれた。「冷たくて甘くて美味しいね」とラルクと頷き合い、食べ進める。


 その後もハルト様は『檸檬ミルクのかき氷』を食べ、最初の『ミルク金時のかき氷』が1番好きだと言っておかわりしていた。

 ハルト様、お腹壊さないか心配だよ……!

 ラルクは氷少なめで全種類食べた後、『木苺ミルクのかき氷』が1番好きだなと言っていた。



「さて、そろそろ戻るかな?」



 かき氷4杯も食べたハルト様は執事さんと王宮に戻って行こうとして、ラルクを呼び寄せた。ハルト様がラルクに耳打ちする様に話し出したのを、座ったまま見ていた。



「……ありがとうございます」



 ハルト様の話しは聞こえなかったけど、ラルクは困った顔でお礼を言っていたからキラキラな残念王子様に何か言われたのかな……?



「はぁ……やっと兄上が帰ったね……」



 いつもよりラルクが疲れて見える。大丈夫かな?



「リマ、少し庭を散歩しない?」

「うん!」

「はい、どうぞ」



 ラルクが優しく手を差し出してくれるので、手を置くとゆっくり歩き始める。「ラシャドルの樹の枝を切り落とすのはもう少しかかるから周りを歩こう」と言われ、樹を見上げ、周りの草花を眺める。

 日々草(ニチニチソウ)の桃色や濃いピンク、白の花が綺麗に咲き、ブッドレアが細い枝先に房状の花を咲かせ、ふんわり甘い香りを漂わせる。

 ラルクがハイビスカスの花を一輪手に取ると、私の耳にかけてくれる。

 時計草(トケイソウ)が目に留まり、今は何時なのかしら?と思うとラルクにくいっと手を引かれ、まだ時間はたっぷりあるよと言われ、2人で顔を見合わせ笑い、幸せな気持ちになる。



  ……?

 ……ぽつ……ぽつ……!



「雨……?」

「そうみたいだね。あちらで雨宿りしよう?」



  ……さあぁぁぁ…



 ぽつぽつだった雨が優しく降り注ぐような雨に変わり、私達は雨を避けるように走った……。

本日も読んで頂き、ありがとうございました!


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ありがとうございます!


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