53.赤いダイヤ
こんばんは。
キリのいい所にしたらちょっと長めです。
「食べてみたい物があったら買ってもいいぞ」
カイルは注文していた物を取りに来たと言って会計に向かって歩いて行くので、それに付いて歩きながらキョロキョロと店内を見回す。
カイルがここはラシャドル王国の中でも珍しい果物や野菜を置いてあるお店として有名なんだと教えてくれた。エディンリーフ店は大通りに面しているが、このお店は馬車がギリギリ通る中通り。
大通りの店は大きな店が多く、一本中に入る中通りは少し珍しい物や専門店など知る人ぞ知るお店があるらしい。ここはその知る人ぞ知るお店なんだそうだ。
更に奥に入ると路面店が増えて市場みたいで活気があるそうだ。
「市場? 面白そう! 行ってみたい! 」
「……迷子になりそうだな。くっくっ」
「ちゃんと付いていくよ! 」
「旦那様と奥様の許しがもらえたら連れて行ってやるよ」
「本当?約束だよ! やくそくね? 」
「分かりました。リマお嬢様?」
にやりと笑ったカイルは恭しく礼をした。
猫かぶりカイルはあんまり好きじゃないなぁと呟いたのが聞こえたのか、カイルはふっと笑いまた歩き始めたので私も続いて歩く。
……!
………!!
あれって……?
「カイル!あれってなんていう名前? 」
歩き始めていたカイルの洋服の裾をちょっと引っ張って尋ねる。
「ああ、あれはアズーキだ。赤い豆だったかな? 」
アズーキ!
あれって絶対に小豆だよね?
この世界の食べ物も美味しいけど、和風の食べ物ってないんだよね!
小豆があるなら和風の食べ物作れるよね?
「カイル!アズーキ買いたい!買ってもいい? 」
「いいぞ。エディンリーフ家の料理人ならアズーキが手に入ったら喜ぶだろ。どれくらい欲しいんだ? 」
小豆は色々な豆類と一緒で硝子瓶に入って並んで置いてある。升ではないが丸い計量カップが置いてあるので、好きな量を買う事が出来るシステムらしい。
丸い計量カップを手に持ち、1カップでどれくらいの小豆かな?と考え、6か7カップくらいあればいいかなぁ?と思っていると…
「……とりあえず10あればいいか? 」
「そんなには……」
「余っても腐らないだろ?足りない方が困るぞ? 」
カイルはそう言うと丸い計量カップで計量はせず、その横にある麻袋を一袋手に持ち会計に進んで行く。
あれ?計量は?と思っていたら
「一袋で10だぞ。お前、7とか言いそうだったからな」
にやりと振り向きながら言われる。
…エスパーカイル!!
「エディンリーフ家の者だが、注文の品は届いているか?」
「いらっしゃいませ。届いております。少々お待ち下さい」
立派な髭のおじさんが奥に戻り紙袋を1袋持って再び現れる。カイルから「カブとクワのアップフェルはここのだ」と聞いた! いつもお世話になってます……! アズーキ1袋とクワとカブの林檎をおじさんに渡す。
「ほほお。赤いダイヤとは…さすがエディンリーフ家の方は目の付け所が違いますな。」
「赤いダイヤ?」
「おや、可愛らしいお嬢さんも一緒でしたか?」
髭のおじさんがこちらを見た。背が小さくて視界に入ってなかったみたい……
「ああ、こいつはエディンリーフ家の娘だ。馬車に置いておくのも暇だろうし、珍しい物見るのも好きそうだから連れて来た」
カイル……それで合ってるけど、私の扱いが雑だね!
カイルは置いておいて、髭のおじさんに目をあわせて挨拶をする。
「リマニーナ・エディンリーフです。アズーキって赤いダイヤって言うんですか? 」
「お嬢さんが選んだのかい?アズーキは栄養価が高くてな、特に外の赤い皮に咳を鎮めたり、痰をとったりする作用があるんだよ。薬に使われるから赤いダイヤって呼ばれてるんだよ」
そうなんだ!
って…小豆って高いんじゃない?!
「じゃあお会計を頼む」
「はいよ。アップフェル4個とアズーキ1袋で大銀貨2枚と銀貨4枚だね」
カイルが袋から大銀貨と銀貨を出して支払う。
「まいどあり。お嬢さん、またいらっしゃい」
……
……
大銀貨2枚と銀貨4枚…思った以上に高価だったね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「それで何を作るんだ? 」
カイルがアズーキの袋を開けながら聞いてくる。
「できてからのお楽しみだよ!カイルもさっき言ったの作ってね?」
「ああいいぞ」
小豆と言ったらアレでしょ?
小豆を水で洗い、鍋にたっぷりの水と小豆の半量の砂糖を入れ、中火にかける。本当は茹でるのと煮るのは別にするけどね。うふふ、折角「美味しくなーれ魔法」が解禁されたのだ! 使わない手はないよね?
「おいしくなーれ。おいしくなーれ…!」
……ぱあぁぁ…私の両手が淡くミントグリーン色に光り、その光がゆっくり鍋を包み…
『金時』が出来ました!!
ぱくっとひと口食べると小豆の優しい甘さ…ああ、懐かしい味! 小春はおじいちゃんっ子だったからこういう渋い食べ物が好きなんだよね。あんこ最強だよ!
もう1つ作るよ!
ミルクと大体4分の1くらいの砂糖を鍋に入れ、火にかけて……
「おいしくなーれ。おいしくなーれ…!」
……ぱあぁぁ……私の両手が淡くミントグリーン色に光り、その光がゆっくり鍋を包み……
『コンデンスミルク』が出来ました!
「カイルカイル!さっき話してたの作って! 」
私は少し深さのある皿を2枚カイルに渡すと…
『 小 雪 』
カイルの手が、ぱあぁ…と淡く青く光り、お皿の上に小さな雪山が出来た!
「すごいカイル!!氷も作れるなんてすごいね!!」
カイルは水魔法が得意だと聞いていたので、氷も作れる?と聞いたら当然だと言っていたのでお願いしていたのだ。
「それでどうするんだ?」
「うん…、この雪山にこれをまずかけて……」
最初に 甘 水 晶 こと氷砂糖を溶かしたシロップをたっぷりかける。
「次に…アズーキとミルクを乗せるんだよ! 」
金時とコンデンスミルクを更にたっぷりと乗せて…
『ミルク金時のかき氷』の出来上がり!!
「カイル食べてみて!いただきまーす」
珍しく固まっているカイルにスプーンを渡して、自分は食べ始める。
「おいしーい!」
おお!これは美味しい!
カイルの雪山かき氷がふわっふわなんだよね。ガリガリした氷じゃなくて天然水を削ったみたいなふわふわ氷なのが、ミルク金時に合うね。
ようやく固まっていたカイルがひと口食べた。
「……なっ、なんだこれ⁈ 」
あれ?お口に合わなかったかな?と思っていたらカイルが無言で食べていたから美味しかったみたい。
美味しいもの食べると無言になるよね?わかる。
「おいしかったね?」
「これは…うまいな。お前、回復薬以外でもすごいな。あーよく考えたらミントもお前か…いや、すごいな。つるぺたなのにすごいな。」
いや、最後のつるぺたは余計だから!
褒めてくれてるんだろうけどね?
「明日、王宮にこれを持っていけ!決まりだ!」
…ええ⁈
『ミルク金時のかき氷』お土産に決まりました。
本日も読んで頂き、ありがとうございました!
この前、天然水のかき氷を食べました◎
ふわっふわでおいしくて驚きました。
今日もお疲れ様でした。
穏やかな夜が訪れますように。お休みなさい。